一般的にはあまり知られていませんが、生活保護に関する裁判は毎年全国各地で多数起こされています。福祉事務所のミスにより多く支給されていた生活保護費の返還を求められ、裁判に訴えていたシングルマザーの全面勝訴判決は、一部メディアにも取りあげられました。

生活保護の返還金額の決定処分が取り消される

内容としては、行政が命じた生活保護法63条に基づく返還金額の決定処分を取り消すものでした。費用返還義務を定めたこの法律の条文は、全額の返還を一律に義務付けるものではない、ということを判決において明確にしました。その背景には、生活に困窮する国民の最低限度の生活を保障するという生活保護法の目的があることも示唆されました。

被保護者について、その資産や収入の状況、生活実態等の諸事情を総合的に考慮して、返還金を返還させないとすることも可能でしました。特に今回の事例においては、役所の処分は社会通念に照らして著しく妥当性を欠く、と判示されました。

当事務所における事例

ひとみ綜合法務事務所には、毎日全国から生活保護申請に関するご相談・ご依頼のお電話が絶えず寄せられています。私共が申請のお手伝いをさせていただいたお客様のアフターフォローは無料ですが、中には身寄りもなく、生活保護費の管理や毎月の医療券の申請受取も難しい方がいらっしゃいます。その場合には行政書士が家庭裁判所の許可を受けて成年後見人となり、財産管理をさせていただくこともあります。私が後見を担当しているお客様の中に、収入申告をしなかったために生活保護が廃止となった過去がある方がいます。その後、私共がサポートをして生活保護は再開しましたが、毎月万単位で返還を生活保護費から捻出している状況でした。

あくまでも憲法で保障された最低限度の生活を守るための生活保護費から、月一万円以上の高額返還をすることについては、後見人としても複雑な思いがありました。なぜなら、これが行政からの返還請求ではなく、民間の金融機関等からの負債であった場合には生活保護費は差押えの対象としては認められないからです。

今回の地裁判決に鑑み、上記見解を該当の福祉事務所に伝え、今後の返還支払については一考しますと伝えました。返還支払をしないからといって、即座に生活保護の支給停止とはならないとの言質を取りました。行政側も、地裁レベルとはいえ、今回の司法判断については対応を吟味しているのかもしれません。