この一週間も毎日、実に多くの生活保護相談がありました。特に今週は、20~64歳までの方、いわゆる稼働年齢層とされる方からの相談が目立ちました。一見若く健康に映る若い人が役所に生活保護の相談に行くと門前払いされるという、ネット上の情報に不安になったり、実際に門前払いされて私共の行政書士事務所を訪れる方が最近とても多いです。

健康で働けそうであっても生活保護の受給はできます

健康で働ける年齢の方であっても、現に生活に困窮していれば生活保護を受けることができます。ところが驚くべきことに、先日の大手新聞記事には、生活保護に関する世の偏見を一層助長させるであろう専門家による誤った見解記事が掲載されていました。

(生活保護制度に関し)「誤解が多い制度なので付け加えると、資産があったり、働けるのに働いていなかったりすると、保護には至らない。生活保護を受給するには、資産は役所から調査され、健康問題などで働けないことを証明しなくてはならないからである。」
【平成29年8月23日毎日新聞朝刊『生活保護基準と格差』(首都大学東京教授 阿部彩)】

この記事内容は明白な誤りで、日本国憲法と法規に基づく現行の我が国の生活保護制度では、「働けないことの証明」などなくても、資産と収入が乏しく他者から経済的扶養を受けることができなければ、生活保護を受けることはできます。
厳格な校正チェック機能が整備されているであろう大手新聞さえ、このような明らかに誤った記事を掲載してしまうのですから、生活保護制度がいかに社会に間違って捉えられているかがわかります。

一見健康で働けそうに見えても、私共の事務所を訪れる方はそれぞれに困難な事情を抱えています。でも、役所や世間の無理解ゆえに苦しむ方々を、これまで沢山沢山、見てきました。

様々な事情を抱えた生活保護申請者たち

中学生の頃に家を出され、生きるために不当に安い賃金労働や裏の水商売に身を置かざるをえなくなり、同棲していたDV男性宅から逃げたくて私共の事務所に電話をしてきた若い女性。行政書士費用も用意できなかったため、私の助言に基づいて生活保護の役所窓口を訪れて三時間自力で交渉しました。しかし、行政は全く相手にしてくれず、最後には役所の通報で呼ばれた警察官が来て、警察署へ連れていかれた挙句、何の解決もしないまま男性宅に帰らされたのです。翌日、私が役所へ同行して生活保護申請をし、銀行口座さえ持っていなかった彼女の資産調査はすぐに終わり、わずか5日で生活保護が決定しました。当時彼女は、所持金が数百円しかありませんでした。審査期間中の生活費の貸付か、食料援助をしてほしいとの要望をしたところ、役所側が放った言葉は「行政書士さんが貸してあげて」。

同様の生い立ちの40代の男性は若いころに行政に救済を求めても助けてもらえなかったため、やむなく身体を売る仕事をしました。HIV感染してエイズを発症しましたが、それでも尚、役所には働けると言われ門前払いをされて当事務所を訪れました。

精神疾患をかかえた20代の男性は、役所の無理解に絶望し、自ら命を絶ちました。私たちが生活保護申請をして2日後のことで、私たちが役所の担当者と交渉をしている最中のことで、誠に残念でならない出来事でした。役所側は、若くて健康なのだから本人が窓口に来ないと審査を進めないと主張していました。実際には、本人が役所の窓口に出向けない場合には臨機応変に対応して審査を進めることが可能です。お金がないがために長年病院に行けなかった、本人の精神状態を私共が再三伝えたにも関わらず配慮しなかった役所の対応は、非難に値するものでした。本人亡き後に生活保護決定がなされ、火葬費を出す親族もいなかったため、私共が行政に費用を負担してもらう手続きを行いました。

収入と資産が最低生活費を下回っていれば生活保護を受けることは可能

働けるか働けないかは、本人にしかわからないのです。働けるという可能性ではなく、実際に働いて最低生活費を超えたら受けられないのが、生活保護です。現実に収入と資産が最低生活費を下回っている限り、無差別平等に生活保護を受けることができます。

日本の法律の最上位にある憲法では、すべて国民は健康で文化的な最低限度の暮らしを営む権利があるとされています。仮に、怠惰、なまけ心から無職無収入であったとしても、それを理由に生活保護を受けさせないとすれば、それは憲法違反なのです。

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