生活保護の申請をこれから考えている方からの相談の中で、「借金がありますが大丈夫ですか?」「消費者金融からお金を借りているのですが(生活保護の)審査に通りますか?」という質問がよくあります。

このタイプの質問が多い理由の一つとして、どうもネット上のサイトの中には「借金があると生活保護が受けられない」と記載しているものが多く存在するようです。

こういったサイトで堂々と書かれてますね。
生活保護が認められない事例まとめ。所有していいもの、ダメなもの | キャッシングのまとめ

無料で入手できるネット情報の中にはこのような誤った情報が無数に存在します。また役所に相談に行った際にも、担当者が水際作戦の一つとしてわざと誤認するような言い回しをして保護の申請を諦めさせることもあります。それを真に受けた相談者が後で体験談として掲示板等に書き込み、それがまるで事実であるかのように広まってしまっているものもあるでしょう。

借金があっても生活保護は受けられる

先に結論を言ってしまえば、借金があっても生活保護の申請は可能です。問題ありません。むしろ借り入れがあるほうが本当に生活に困っていることがわかるので、困窮状況を証明しているとも考えられます。

生活保護法においても当然「借金がある場合は生活保護申請を却下する」などということは記載されておらず、福祉事務所における内部規定ともいえる生活保護手帳にもそのような決まりはありません。

当事務所にご相談され、保護開始が決定した依頼者の中で借金のある人は非常にたくさんいました。借り入れの内容も消費者金融、カード会社、銀行からのローン、知人や親戚からなど多岐にわたります。しかしそれを理由としてm

生活保護受給中の新たな借り入れは問題あり

上述したように生活保護の申請をする段階で、これまでの借り入れが大きな問題とされることはありません。

しかし、ひとつ注意すべき点は生活保護の受給が開始した後に新たに借金をする場合です。

そもそも、生活保護受給中に借金をしていいのかどうかという話ですが、これは構いません。生活保護法にも保護受給中の借金を禁止するような条文は存在しません。役所が使用している生活保護手帳にもそのような記載は載っていないです。

では一体何が問題なのでしょうか?
それは生活保護受給中にした借り入れは収入と見なされてしまうことです。

保護の受給期間中に収入があった時は、被保護者は福祉事務所等の保護実施機関にその状況について報告しなければなりません。

(届出の義務)
第六一条 被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

生活保護法 第61条

これは働いた場合の給与でも、生命保険等の受取であっても、相続財産が転がり込んできた場合でも、そして借り入れによるものであっても同じです。キャッシングなどで入金があればそれは収入と見なされます。

そして収入と認定されればそこから一定の控除がされた後、生活保護の支給額からその金額が差し引かれます。簡単に言えば、借金をすればその分貰える保護費が減るのです。結局のところ借金をしてもあまり意味がありません。

もちろん全ての借り入れが保護費から差し引かれるという訳ではなく、一定の基準と一定の手続きを経た上で収入と認定されない貸付金は存在します。それはまた別の記事で。

ただ一般的な消費者金融からのキャッシングなどはするだけ無駄という話です。生活費を借りた結果、その分保護費が減額されたのであれば意味がありません。

生活保護受給中の借金の返済は許されるのか

借金をする事そのものを禁止する法律や規定はない、というのはこれまで述べてきた通りですが、では返済に関してはどうなのかという話。
こちらも借り入れと同じく、生活保護費から借金の返済をすることを禁止する決まりはありません。

支給された保護費はどう使おうと自由です。ギャンブルや遊興費にあてることも問題ありません。従って保護費を借金の返済に回すことも自由なのです。

ただ生活保護費というのは最低限度の生活を保障するためのもの。保護費を借り入れに対する弁済金に充ててしまうと、生活費が足りなくなってしまいます。

また、同じく最低限度の生活を保障するためのものであるという理由により、裁判を起こされても生活保護費は差し押さえられることが出来ません。これは生活保護法58条に明記されています。

(差押禁止)
第五八条 被保護者は、既に給与を受けた保護金品又はこれを受ける権利を差し押えられることがない。

生活保護法 第58条

ということは仮に借金を返さなくて裁判を起こされたとしても、失うものは特にないということになります。もちろん金融機関の事故情報(いわゆるブラックリスト)には載ることにはなりますが。

ケースワーカーさんによっては少し勘違いして「保護受給中に借金の返済はしてはいけません」という案内をされる人もいるかもしれませんが、そういった決まりはありません。
生活保護受給中に自身の借金を保護費の中から返済するもしないも自由です。
もし生活保護受給中に借金の返済をしていることを理由として、保護を停止するというようなことを言われた場合、それは役所の不当な指導となります。その際は是非当事務所までご相談ください。

役所が借金の総額を知りたがる理由

生活保護の開始申請書の中には、どのような様式であれ借入金について記入する項目があります。
では何故役所は借金について知りたがるのでしょうか。

生活保護制度というのは、経済的に困窮する国民に対して、国や自治体が健康で文化的な最低限度の生活を保障する公的扶助制度です。

借金があればほとんどの場合、利息が付きますので、放置すればするほどその金額は膨れ上がっていきます。福祉事務所としては、要保護者の生活を立て直していくためにもその状況をしっかり把握し、対処していかなければいけないのです。その為に申請者の借り入れ状況の確認が必要というわけなのです。ですから、生活保護開始申請書の中に借金についての記入項目があるのです。

自己破産の手続きを無料で代行してもらう方法

生活保護開始申請者に借金があることが判明した場合、福祉事務所からは債務整理や自己破産を勧められることが多いです。これまで述べた理由により、返済を勧められることはほとんどないでしょう。

そのため主に自己破産を検討することになります。しかしそうは言っても自分で調べて自己破産の手続きをするのはかなり大変です。

自己破産手続きを本人のかわりに代行できる国家資格は弁護士と司法書士です。自分自身で手続きをするのが難しければ、どちらかの士業に依頼して書類作成や裁判所での手続きをしてもらわなければなりません。

当然、普通に依頼すれば手数料がかかります。
弁護士に比べると司法書士に依頼するほうが安くすみますが、それでも20万円弱~場合によっては50万円以上必要になることもあります。

しかし、生活保護の受給中の人の場合、この費用が不要になる方法があります。それは法テラスを利用する方法です。
法テラス|法律を知る 相談窓口を知る 道しるべ

法テラスを利用した自己破産の注意点

利用に際してよくあるご質問 法テラス|法律を知る 相談窓口を知る 道しるべ

法テラスには弁護士や司法書士費用を立て替えてくれる制度があります。ただし通常であればこれはあくまで「立て替え」です。つまり後で法テラスに費用を返済しなければなりません。

しかし、生活保護受給者が法テラスの立て替え制度を利用し、その後も生活保護の受給を続けるのであれば費用の返金が免除となります。

間違えるといけないのが、生活保護の受給が開始する前に自己破産手続きを弁護士や司法書士に依頼すると、代行手数料・費用を支払わなければいけないという点。
当事務所にご相談にこられたお客さまでも、生活保護の申請より先に弁護士事務所などに自己破産手続きを依頼し、40万円以上の分割支払い契約をすでに結んでしまっている方が何人もおられました。

これは非常にもったいない話です。
法テラスを利用して無料で手続きを行う場合、順序としては、「まず生活保護の受給開始決定」→「自己破産手続き」、という順番になります。この順序が逆になると立て替え制度を利用することができません。
ご注意ください。

当事務所に生活保護申請のサポートをご依頼いただいたお客さまには、法テラスを利用することにより、相談から手続きまで無料で自己破産手続きを行ってもらえる司法書士・弁護士の先生を紹介することが可能です。
※ただし、現在のところ紹介可能なのは大阪で生活保護を受給される方限定です。

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