行政書士法人ひとみ綜合法務事務所で生活保護相談を担当している、行政書士の三木です。

生活保護費が下がることについて、皆さんはどう思いますか?政府が、生活保護を受けておらず、アルバイトなど生活保護費を下回る収入で生活している人達、いわゆる所得最下位層の人たちの消費水準にあわせる形で、生活保護費の引き下げを決めたことについて、公・民両方から誤解を受けやすい生活保護制度という観点から私の意見を書きたいと思います。

生活保護費:67%の世帯が減額 18年10月から – 毎日新聞

生活保護費はあくまで最低ラインの生活費

まず、今回の政府の出した結論がいかに重要か?
生活保護基準というものは、ほかの社会保障制度の基準に応用されることも多いので、まずその影響力が大きいです。先日の私の書いたブログにも、学校に通うお子さんのいる世帯の負担増を取り上げました。
2018年秋の生活保護費見直しと子どもの貧困

ちょうど昨日、某県で生活保護を受けているお母様から相談の連絡がありました。そのお母様は、以前ご自分で生活保護申請をして門前払いされ、当行政書士法人にご依頼いただき、申請サポートをさせていただいたM様です。

このご時世にお子さんが6人いらっしゃって少子化の日本に貢献されているM様は、ご病気で入退院を繰り返すご主人の介護をしながら、子育てをするだけで精一杯の日々。

ところが窃盗の被害に遭い、保護費が一ヵ月分なくなってしまい、やむなく社会福祉協議会から借り入れをしたために、毎月生活保護費から一定額が減額されることになりました。

そのため月末にはお金が足りなくなり、ご夫婦は食事を一食にしてお子さんたちのおかずを用意するために暖房機器を売却すべきかというのが、ご相談内容でした。

ご本人たちの最低生活を確保するため、昨日私が役所にかけあってすぐに食料援助を行ってもらうことにしましたが、こうした相談は後を絶ちません。

平日であれば行政に救済措置を求めますが、土日や連休にこうした相談があると、人道的配慮から当行政書士法人がレトルトカレーなどを事務所で用意することもあります。ただでさえギリギリの生活をされている生活保護受給世帯の方は、空き巣被害や窃盗といった不可抗力の事態への対処や、冠婚葬祭費の捻出ができないのです。こうしたことは、世間ではあまり知られておらず、メディアでもほとんど取り上げられません。

ギリギリで生活保護を受けられない人たち

では、生活保護を受けていない低所得層の方々は、どのような生活なのでしょうか。

政府が生活保護費減額の政策に踏み切った背景には、
「生活保護受給者の方が、がんばって自力で生活している人よりも贅沢な生活をしている」
という批判の声があります。

たしかに、生活保護を受けている人達よりも厳しい生活を強いられている人たちがいることは事実です。なぜなら、生活保護を受けていれば免除される国民健康保険料、介護保険料、国民年金保険料、医療費などを払わなければいけないから。

当事務所でも最近よく、生活保護支給額を若干上回る微妙な金額の年金をもらって生活されている方々からの相談をお受けします。貰っている年金がその地域の生活保護支給額を上回っている場合、申請してもまず生活保護の審査は通りません。

そのため持家の雨漏修理もできず、病院に行く交通費も出せず、日々食べていくだけで精一杯だという方からのやりきれないSOSが当事務所に日々届くのです。彼らは、最後のセーフティネットである生活保護制度を利用できないため、国の社会保障制度で守られず、苦しい生活を余儀なくされています。

生活保護費の引き下げが日本のためになるのか

Rainbow
Rainbow / Rodrigo_Soldon

そうした望まない極貧生活を送らざるをえない方のレベルに合わせる形で、生活保護費を引き下げる政策が果たして日本国民のためになるのでしょうか。国民はますます疲弊し、国力の衰退を招くだけだと私は考えます。

おそらく日本で最も多くの生活保護申請書を作成代筆しているであろう当行政書士法人で働く私からすれば、生活保護は明日は我が身です。

  • これまで一生懸命仕事をしてきたのに会社の都合により職を失い、100件以上の面接に行っても就職先が見つからない40代の男性。

  • 夫のDVにより離婚せざるを得なくなり、3人のお子さんを抱えてパートをかけもちしてがんばってきたのに、交通事故の被害者となり職を失い病院に行く交通費もなく、成長期のお子さんがお母さんを見かねて
    「僕、ごはん食べなくても大丈夫だよ」と気を遣うほど切羽詰まったご家庭。

  • 無年金のお父様と同居して介護職をしながら生活の面倒をみてきた30代の男性で、腰を痛めたために仕事ができなくなり、お父様と心中寸前だったという方。

いずれも、祝日をのぞく今週3日間で当事務所にご相談された方々の実情です。どの人も、決して怠惰により貧困に陥ったわけではありません。

一生懸命働き、誠実に生きてきたにもかかわらず、ある日突然、誰にでも起こりうる不遇の出来事により生活保護が必要になったのです。彼らを、「自業自得」と切り捨てるような日本社会であってはいけません。

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