2025/7/7週刊現代に特定行政書士三木ひとみのコメントが掲載されました。
週刊現代の安藤記者よりご献本頂きました。


週刊現代の記者さんから取材がありましたので、行政手続きや法制度の実務に携わる立場から、以下のようにお答えさせていただきました。
■「なぜ日本はこんなに“穴だらけ”なのか」
まず前提として、日本の法制度は「制度の公正性」「手続きの平等性」「個別事情の配慮」の三原則のバランスを取りながら設計されており、決して外国人に対して過度に甘いという意図で作られているわけではありません。
しかしながら、「本来想定していなかった使われ方」や「制度間の連携不足」により、結果的に“制度の抜け穴”と見える事象が生じることがあります。特に以下の点が制度上の盲点となっています。
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縦割り行政の弊害:法務省、厚労省、国税庁など関係機関が個別に制度運用しており、横断的な情報共有が乏しい。
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法改正スピードの遅さ:制度が濫用されていることが判明しても、実態調査や国会審議を経た法改正には時間がかかる。
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制度趣旨と実務運用の乖離:例えば生活保護制度は「困窮する全ての人に開かれている」ことを建前としつつ、実務上は外国籍による申請に都道府県レベルで温度差がある。
このように、“穴”というより「制度趣旨と現実の使われ方にギャップがある」と言うのが実態に近いと感じています。
■他の先進国と比べて、日本の制度は“ゆるい”のか?
確かに、諸外国と比べて、日本の制度運用には「性善説」に依る部分が多く見受けられます。
例えば:
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生活保護の外国人への準用:日本では生活保護法は原則「国民」を対象としていますが、1954年の厚生省通知により外国籍の人にも“準用”として適用されています。これは人道的配慮に基づくものであり、法的には義務ではなく「行政裁量」として行われています。他国ではこの種の福祉は居住要件や国籍要件が厳格な場合も多いです。
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短期譲渡益課税の監視の甘さ:不動産売却に伴う課税は申告制に依存しています。国外転出後に課税できないことを見越して「売って帰国」が行われた場合、実効的な追跡が困難です。これは米国のように「市民権者には国外所得にも課税する」といった制度とは対照的です。
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帰化審査の透明性:近年は帰化審査も厳格化の傾向がありますが、地方法務局の裁量も大きく、審査基準の明文化が進んでいない点では、先進諸国に比べて“ゆるさ”が制度上残されています。
ただし、これは「緩い」のではなく、日本の法制度が「人道主義」と「法の下の平等」に重きを置くがゆえに、現場での運用裁量を残しているという背景があります。
■今後、ビザや永住権取得は厳格化していくのか?
この点については、すでに実務上も法改正や運用強化が進みつつあります。
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永住許可における納税・年金義務の厳格化:2019年の運用改定以降、永住申請時の納税状況、年金加入義務の履行が重視されています。「納税していても滞納歴があると不許可」とされる例も出ています。
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技能実習制度の廃止と新制度への移行:悪用が問題視されてきた技能実習制度は2024年に事実上廃止され、「育成就労制度」に移行予定であり、受入企業の管理体制や労働環境への監視が強化されます。
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在留カードやマイナンバー制度による把握強化:複数の行政機関で情報が連携される仕組みがようやく整い始め、所得・納税・福祉利用歴などが把握されやすくなってきています。
このように、制度全体としては「厳格化」というより「整備・近代化」が進行しているといえます。
■最後に:問題の本質は「出身国」ではなく「制度設計の精緻さ」
中国人という国籍属性に限らず、制度を賢く(あるいはズルく)使う人は、どの国籍にも一定数存在します。その背景には、法律と実務の乖離、国際間の連携不足、想定されていなかった制度設計の甘さがあります。
制度の「抜け穴」を批判することも重要ですが、それを放置せず、次の改正に活かす法制度のアップデートが求められているのだと思います。
三木ひとみ(行政書士)



