「弁護士JP生活保護連載」 第14回記事 令和7年5月3日

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生活保護「持ち家を売らないと受けられない」はウソ 役所やネット上の言葉をうのみにする前に…知っておきたい“実際の法制度”

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生活保護「持ち家を売らないと受けられない」はウソ 役所やネット上の言葉をうのみにする前に…知っておきたい“実際の法制度”(弁護士JPニュース)

マイホームがあっても、住宅ローンの支払や家の老朽化の費用捻出など、生活の不安と隣り合わせという悩みを抱えている人は少なくありません。

「まずは自宅を売却して、その資産を生活費に充ててください」

勇気を出して訪れた役所で、このように言われたという方からの相談もあります。大抵の場合、これは不親切で不適切な行政対応です。

「事業が上手くいっているときに建てたマイホームはある。でも、長年自営業、国民年金で老後が不安。今は何とかなっていても、将来的に生活保護は受けられますか?」

仕事をしている現役世代から、こうした先々の不安の胸の内を明かす相談もあります。ネット上には、「持ち家は原則売却しなければいけない」「マイホームが生活保護の障壁になる」など誤った情報が散見されます。

この記事では、持ち家のローン支払に悩んでいる人や、ローン完済の持ち家でも将来的な不安がある人から行政書士がよく受ける、所有不動産と生活保護の疑問に答えます。

間違って解釈されることの多い「資産活用」の本当の意味

生活保護制度は、国の最後のセーフティネット。生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、自立を助長することを目的としています。
「資産活用の原則」とは、生活に困窮した人が、その有する資産(現金、預貯金、有価証券、自動車、生命保険、そして不動産である持ち家など)を最大限に活用するべきというものです。資産を活用してもなお、日本国憲法第25条に保障された国民の生存権を具現化するため地域、世帯構成などにより定められた「最低生活費」に足りない分を生活保護で補うというものです。これは、国民の税金で運営される生活保護制度の公平性を保ち、本当に他に頼る手段がない方を優先的に保護するための根幹となる原則です。
持ち家は、すぐに現金化できるわけではないものの、売却することでまとまった資金を得られる可能性のある「資産」とみなされます。しかしながら、持ち家は単なる住居というだけでなく、長年の生活の基盤、家族の思い出が詰まった、目に見えない価値ある資産という意味でも、現金資産とは異なります。

そのため、「生活保護を申請する際は持ち家を売却しければいけない」というネット上にあふれている情報を鵜呑みにしなくていいのです。たしかに、役所に自分で相談に行ったとき、「持ち家があったら生活保護は受けられない」とか「まず家を売るように言われた」という相談を行政書士が受けることもよくあります。ただ、これは本来あってはいけない水際作戦の一種です。

そのような役所の対応がなぜ不適切で、そして、間違った案内を実際に役所でされたら、どう対応すれば良いのか、解説します。

持ち家がある場合の原則的な取り扱いと住宅扶助

まずは、生活保護制度の原則的なお話から。生活保護の申請が受理されると、福祉事務所は申請者の収入(経済援助含む)資産の調査を行います。持ち家の有無、種類(一戸建て、マンションなど)、築年数、所在地、市場価値、住宅ローンの残高などが細かく調べられます。しかしながら、こうした資産調査は、あくまでも生活保護を受ける本人のものだけであって、別居の家族の資産などは調査されません。そして、申請と同時に勝手に資産調査されるわけでもなく、あくまでも、生活保護申請後に、金融資産の調査に同意する書面の説明を受けて、納得のうえ署名して、初めて個人情報である収入資産の調査が可能となります。

そして、ここからがネット上でよくみられる誤り、あるいは役所の誤った対応です。
「原則として、持ち家があると判断された場合、福祉事務所は申請者に対して持ち家の売却指導を行う。」

住み慣れた家をまず売れと言われたら、誰だって困惑するでしょう。生活保護申請を躊躇わせるような対応は、不適切であり、最近ではこのような心無い対応をする役所は減りました。でも、こうした誤解が広がるのも無理はないのかもしれません。正しい情報を、公的機関による確かな発信情報で確認しようと、「持ち家 生活保護 厚労省」でネット検索すると、平成16年5月18日付けの社会保障審議会の文書が出てきます。
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/05/s0518-4b6.html

「不動産については、売却することが原則」
「不動産の保有の考え方」という参考資料の中で、冒頭に大きな文字でこう書かれています。
誰でもネット検索すれば見ることができる、厚労省の資料として出てきます。しかしながら、同時にこうも記載されています。
「被保護世帯の居住の用に供される家屋及びそれに付属する土地については、保有を容認し、保護を適用」
現に住んでいる家のみが所有不動産であれば、生活保護を受けられると読み取れますが、次に出てくる文章で、また不安になりそうです。
「ただし、処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められる場合は、売却等による資産の活用をした上で、保護の要否を判断」。

一般の人には大変わかりづらい表現だと思いますが、少なくとも行政書士がこれまでに申請書を作成して対応したケースで、ローンの残っていない持ち家に住んでいる方が生活保護申請をするにあたり、また保護決定後も、売却を「指示」されたケースはありません。
また、たとえ居住している持ち家でなくとも、状況に応じて不動産を所有したまま保護を受給している方もいます。あくまでも、「活用できる資産は活用すべき」というのが法制度の趣旨です。売却価値のない不動産や、単独所有ではなく共有名義で、生活困窮した人の意思一つで売却、現金化できるわけではない場合など「活用できない資産」については、必ずしも売却しなければ生活保護を受けられないわけではありません。

持ち家に住みながら生活保護を受給する場合は、家賃なしで住む場所が確保されているため、家賃補助としての住宅扶助費は原則として支給されません。その代わりに、毎年発生する固定資産税の自己負担分は還付されるなど、個々の状況に応じてその人の最低生活が守られるよう配慮されているのです。持ち家に住みながら生活保護を受給している人が年をとり、介護が必要となって自宅生活が困難となれば、介護施設への転居費用も支給されます。介護施設であれば持ち家とちがって家賃が発生するので、その場合は住宅扶助として家賃も支給されます。

持ち家があるからと、一生そこに縛られるわけではありません。たとえば、持ち家の老朽化で住めなくなり、役所に引越費用を支給してもらって賃貸住宅へ転居して生活保護受給を継続しているケースもあります。

持ち家に住みながら生活保護を受けることは可能

生活保護法令は、杓子定規な運用ではなく、申請者一人ひとりの置かれた状況にきめ細かく配慮する側面を持ち合わせています。特に、住まいという憲法第13条で保障される幸福追求権や憲法第22条の居住・移転の自由に関わる持ち家の判断においては、様々な例外規定が存在します。持ち家があっても生活保護が認められた、具体的なケースを2つ紹介します。

1.住み慣れた環境を維持する必要があったケース

関西圏にお住いの30代女性Yさんは、両親の相次ぐ死による精神的落ち込みから仕事で失敗が続き、ついに限界が来て引きこもり生活を送るようになっていました。親が残してくれたローンのない持ち家がある状態で、役所に行くも、「まだ若いのだから仕事を探してください」「家を売って生活費に充てたらどうか」と、あえなく門前払いされました。
大切な親の残してくれた形見の家を売るなどできないと生活保護をあきらめ、食べるものも食べられずやせ細ってしまった様子を見かねた同性の友人から、行政書士事務所に相談があったのです。すぐに行政書士が事実をありのまま記載した申請書を役所に提出したところ、すんなり保護申請は通りました。
資産は持ち家以外になく、収入はゼロ。親族は亡き両親のほか、連絡を取り合っている人はいませんでした。その後、固定資産税支払の時期が来ましたが、通常の生活保護費だけでは物価高の昨今、余剰金を貯めることもできなかったので、固定資産税の自己負担なく公費で支給されました。
加齢に伴う身体機能の低下や、重度の障害だけでなく、最近は若い方でもストレスフル社会でうつ病など精神疾患を患い、転居そのものが物理的、精神的に大きな負担となる方もいます。
住み慣れた環境を維持することは、生活の安定に不可欠です。長年生活してきた地域社会との繋がりや、かかりつけ医との連携なども考慮されます。バリアフリー化された長年住み慣れた自宅で暮らしながら、生活保護を受給している高齢の方も多くいます。
住み慣れた住居で一時的に生活保護に頼り、徐々に元気を取り戻したYさんは、今では生活保護を卒業して、IT関係の仕事を在宅でされています。

2.持ち家の老朽化が激しく転居を希望したケース

九州にお住まいのSさん夫婦は、築年数が古く、建物の劣化が激しい持ち家で低年金の苦しい生活をしていました。交通の便も悪く、また災害リスクもある地域で、市場価値がほとんどない、あるいは売却できてもわずかな金額にしかならないような持ち家でした。売却にかかる仲介手数料や登記費用などを考慮すると、売却益がほとんど残らない、あるいはマイナスになる可能性のある持ち家は地方ほど多く存在します。このような場合、売却しても生活再建に繋がらないと判断され、持ち家での生活保護が認められるわけですが、Sさん夫婦は「階段も急で危なく、とてもこの家では暮らせない」と、引越を希望されました。
そして、持ち家での生活保護申請、保護決定後、Sさん高齢のご夫婦自らの希望により、役所に引越費用を支給してもらい、1階の民間賃貸住宅に引越しをされました。
屋根の雨漏りの修理代に要した、100万円の負債も抱えていました。自己破産手続きを法テラスを利用して行えば、弁護士費用の自己負担もなく、借金から解放されるという選択肢を取ることもできました。ただ、借金は身近な友人からしたもので、法的に支払を免除されても、信頼関係ゆえに貸してくれたお金は返したいと希望され、あえて破産手続きなどはせず、保護費から借金を返済する道を選ばれました。生活保護費をやりくりして、どのような使い道に充てるかは、基本的に本人の自由です。
現在も生活保護を受給されながら、夫婦寄り添って慎ましく穏やかな暮らしをされています。

住宅ローンの残債があるから無理だとあきらめないでください

生活保護費から住宅ローンを返済することは、原則として認められません。でも、例えば、あと数ヶ月で住宅ローンが完済となるような状況で、売却してしまうとかえって経済的な損失が大きい場合もあります。ローンの残債が少ない場合は、例外的に生活保護費でローン返済をしながら、持ち家での生活保護が認められることもあります。
「うちはローンがまだ多額に残っているし、子どもの学校の関係もある。引越ができる状況にもないから、やはり生活保護は受けられないのか?」
このような場合も、生活保護をあきらめないでください。
特にお子さんの転校は、学業面に支障をきたしたり、大切な友人関係を失うことは、精神的な安定にも著しい悪影響を及ぼすことがあります。ローンが多額に残っている住宅では、基本的に生活保護費から資産形成となるようなローン返済は認められないものの、子供の福祉を最優先に考えれば、住宅ローンがあるという理由だけで現に生活に窮している人の保護申請を却下することには人道上の問題があります。特に、受験を控えている場合や、特別な支援が必要なお子さんがいる場合は、より慎重な判断が求められます。
例外規定の適用においては、申請者の年齢、健康状態、家族構成、持ち家の具体的な状況(築年数、維持状況、市場価値、担保権の有無など)その後の生活への影響など、多岐にわたる要素を総合的に考慮されます。一方的に役所が決めるのではなく、当事者の意思が尊重され、話合いによって進められるのです。
一時的に生活保護を受けて、ローン残債が多額にある家に住みながら役所と話し合いをしている間に、仕事が決まった人もいます。短期間、真に困窮している時期だけ、生活保護を受給することも可能です。

困ったときは、まずはお近くの役所を頼ってください。相談は、無料です。


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生春巻き。新鮮なお野菜は南大阪の趣味が自家菜園のお客様からいただいたもの。


行政書士法人ひとみ綜合法務事務所で何度かご紹介している、超簡単美味レシピ♪


白いご飯をよそって


鰹節をのせる


しらすをかける


しょうゆをまわして


ねぎをちらす


生卵をのせる。おいしいから試してみて♪