「弁護士JP生活保護連載」 第30回記事 令和7年8月25日
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→“年金”で生活できず「生活保護」に頼った高齢者たちの“後悔”…日本の“老後生活”は「情報戦サバイバル」に?

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→“年金”で生活できず「生活保護」に頼った高齢者たちの“後悔”…日本の“老後生活”は「情報戦サバイバル」に?(弁護士JPニュース)

今回も、ヤフーニュース記事よりボリュームの多い行政書士の元原稿を下記に公開します。
年金制度に取り残され、最後に頼ったのは生活保護だった
「男は外で働き、女は家事、育児、介護。その果てにどちらも生活困窮」
そんな人生の落とし穴に、誰が、どの瞬間に落ちてもおかしくないのです。
「専業主婦として家族を支え、気づけば年金はほとんどもらえない。そんな女性たちが沢山います。」
阪神・淡路大震災以前から、女性の問題に取り組んできた「ウィメンズネット・こうべ」のメンバーは語ります。DVという言葉が知られていなかった頃から30年以上にわたり、困難を抱える女性たちと向き合ってきました。
「彼女たちは、働かずに年金を払ってこなかったのではありません。家庭という名の「無報酬労働」に従事してきたのです。」
1995年の阪神・淡路大震災では、亡くなった犠牲者の6割が女性でした。中でも70代女性が最も多く、続く60代、80代、50代も、上位はすべて女性でした。これは単にじょせいが男性よりも長生きだという年齢構造の問題ではありません。被災地には一人暮らしの高齢女性が多く、戦前・終戦直後に建てられた老朽家屋に住まざるを得ない人の割合が高かったのです。住環境の脆弱さと、社会構造の問題があぶり出された結果でした。
そして今も、日本社会は根本的に変わっていません。厚生労働省「被保護者調査」によれば、生活保護を受けている世帯の約55%が65歳以上の高齢者世帯であり、その中でも特に単身女性の割合が高くなっています。75歳を超えると、その傾向はさらに顕著になり、「老後にひとり取り残された女性たち」が次々と生活保護の窓口に訪れている現実があります。
それは自己責任といえるのでしょうか。
無知が老後の貧困を招く?
「年金の分割?そんな話、聞いたこともありませんでした」
65歳を過ぎ、満額に近い老齢基礎年金を受け取りながらも生活保護を併用するようになった一人暮らしのミサさんが、こう振り返ります。一男一女を育て、義両親の看取りもすべて引き受け、人生の大半を、『家庭という職場』に捧げてきたミサさん。育児と介護に明け暮れ、職歴はパート勤務程度。晩年、夫との関係が破綻し、離婚。ようやく訪れた「自分の人生」を待っていたのは、想像以上に苦しい現実でした。
老後の生活を案じて役所の窓口を訪ねたとき、ミサさんは初めて「年金分割制度」という言葉を耳にしたといいます。
「離婚するとき、元夫に『年金の手続きは俺がやっておくから』って言われたんですけど・・・たぶん、何もしていなかったんでしょうね。」
冗談めかして笑ってみせたその口元には、やるせなさとあきらめがにじんでいました。専業主婦だった友人が多いミサさんのまわりでも、「離婚時の慰謝料や養育費の話はしても、年金の話なんて誰もしなかった」と言います。
「泣き寝入りというより、損をしていることにすら気づいていない人が圧倒的に多い感じです」
これは、もはや一個人の問題ではありません。
年金分割制度を知っているかどうかが老後を左右することも
年金分割という重要な制度をご存知でしょうか。これは、婚姻期間中に夫が公務員や会社員として厚生年金等に加入していた場合、その一部を離婚時に妻が自分の将来の年金として受け取れる制度です。
日本では、平成19年(2007年)に合意分割制度が導入されました。これにより、婚姻期間中に夫が納めた厚生年金(報酬比例部分)を妻に分割できるようになりました。翌年には、夫の同意がなくても自動的に2分の1に固定分割できる3号分割制度も導入され、より使いやすくなったはずでした。
ところが、この制度には、原則離婚から2年以内という時効があります。制度そのものを知らなかった、あるいは制度の存在を後から知っても、時効を過ぎていればどうにもならない。
実際、行政書士のもとにも「そんな制度があるなら教えてほしかった」「制度があると知ったときには、もう10年以上が経っていた」「私の人生の最大の失敗は男選びです」
悔し涙をこぼす相談が後を絶ちません。そして、老後に生活保護を申請せざるを得なくなる人も珍しくないのです。
こうした年金のもらい損ねは、決して女性の自業自得でも、無計画なのでもありません。年金分割の請求には、離婚から原則2年という時効が設けられており、知っていたかどうかの差が、そのまま老後の貧富に直結する現実があります。
こうした「年金のもらい損ね」を理由に、生活保護の受給を余儀なくされる高齢女性が増え続けています。とりわけ、単身高齢女性に多く見られ、厚労省の調査でも、65歳以上の生活保護単身受給者の多くが女性であることが明らかになっています。これは女性の方が長生きだからということではありません。背景にあるのは、「男は外で働き、女は家を守る」という、戦後長く続いた家族モデルです。女性たちは、家事や育児、介護といった「見えない労働」を無報酬で担い続けた結果、年金加入期間が短くなり、年金額もわずかで、老後の生活が成立しなくなってしまった。これは社会構造の歪みが生んだ必然とも言えます。
「知らぬ間に半分」——年金分割がもたらした老後の転落
老後の貧困、それは、なにも女性だけに限った話ではありません。結婚・離婚という人生の節目において選択を誤ることは、男性にとっても将来の年金額に関わる深刻な問題となり得ます。つまり、「無知が貧困を招く」というリスクは、男女を問わず、誰にでも等しく存在しているのです。
「離婚してから何年も経って、ようやくもらえると思っていた年金が、想像よりずっと少なかったんです。正直、目の前が真っ暗になりました」
そう語るのは、元営業職だったタツヤさん(仮名)。長年勤めた会社を、持病の悪化によりやむなく早期退職し、年金とわずかな貯金を頼りに慎ましく暮らしていました。
ところが届いた年金通知を見た瞬間、タツヤさんは言葉を失います。老齢基礎年金が月約6万6,000円、老齢厚生年金は2万3,000円弱。自営業だった期間や失業していた時期もあるとはいえ、一度も生活保護に頼ることもなく、長年会社員として厚生年金にも加入していた感覚からは、思っていたよりも「明らかに少ない」と感じたのです。
不審に思って調べると、離婚時に交わした合意書に、「按分割合50%で年金分割を行う」と明記されていたことが判明しました。詳しい制度の説明は一切なく、「早く終わらせたい」と言われるがままに署名していたといいます。
「年金も財産分与のひとつだと友人には言われました。まあ半分になるんだろうな、とは思ってましたけど、自分の年金額がどう減るのかなんて、その場で試算してくれる人なんていませんでしたから」
さらに追い打ちをかけたのは、分割の対象となった期間でした。タツヤさんが病気を発症する前、標準報酬月額が最も高かった時期の記録が、すっぽりと婚姻期間に含まれていたのです。つまり、「年金分割」の影響で、もっとも多く納めていた時期の厚生年金が、制度のルールに則って按分されてしまっていたのです。
元妻は離婚後すぐに「3号分割」の手続きも行っていました。
「3号分割なんて言葉、聞いたこともありませんでした。しかも相手の合意がなくても分割できる制度だそうで。」
タツヤさんは、淡々と語りながらも、やり場のない悔しさをにじませて続けます。
「妻は気分屋で、結婚当初から当たり散らされることが多かったです。仕事から帰っても『寝るまでマッサージしろ』と命じられ、疲れて寝落ちすると、大声で怒鳴られ叩き起こされて。給与口座も管理され、小遣いすら与えられず、安月給だと罵倒されて。ついには仕事に行けなくなりました。離婚を切り出したのも、結局向こうからです」
こうして、タツヤさんの年金は、制度上合法的に、しかし彼自身にとっては予想もしなかったほど圧縮されていたのです。
働くこともままならない体で、貯金は底をつき、医療費すら捻出できなくなった末に、結局、最後に頼ったのは生活保護でした。
「悔しいというより、ただただ、自分が情けない。制度って、本当に、知らない人に冷たいんだなと痛感しました」
改良を重ね複雑極まりない年金の罠
年金制度には、「繰り上げ受給」や「併給制限」など落とし穴ともいえる様々な制度が数多くあります。
本来は失業手当(雇用保険)をもらえる状況で年金の繰り上げ受給など不要なのに、ハローワークの窓口で「失業手当と年金の併給はできません」としか言われなかったために年金の請求をしてしまったという人もいました。「年金の繰り上げ受給をすると、将来にわたり減額された年金額が支給される」といった重大な事実に気付かぬままに。
明日の食費にも困る不安のなか、確実にもらえる年金を先に申請してしまい、結果として大きな不利益を被った──そんな相談も、実際に少なくありません。
年金の繰り上げ受給をしてしまったがために、62歳で脳梗塞を患っても非課税の障害年金の請求ができなかった人もいます。知識があっても如何ともしがたかった、のではありません。障害年金は基本的に、20歳から老齢年金がもらえる65歳までに病気やケガで障害の状態になった方を対象にしています。しかし、原則65歳からの老齢年金を繰上げ請求で60~64歳に前倒しして受給してしまうと、65歳に達した者と同じ扱いになり障害年金を請求できなくなるケースが多いのです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)による節税も、繰り上げ受給さえしなければ60歳以降も恩恵を受けられたのに、思い描いていたライフプランが崩れたという人も。
在職老齢年金(働きながら年金をもらう制度)を活用して将来の年金額を少しでも増やそうと国民年金の未納分を納めたところ、わずかに収入が増えたせいで住民税が課税され、逆に手元に残る金額が大幅に減ってしまった人もいます。
年金制度は法改正を重ねてきたこともあり、複雑な仕組みになっています。公的機関における説明不足、そして追い詰められた生活状況による誤った判断の連鎖によって悲劇が生まれるのです。
年金はもはや情報戦サバイバル
年金分割制度は、本来、専業主婦など家庭内で無償労働を担ってきた側に公平な年金を保障するために導入された制度です。
育児や介護、家事に人生を費やした人々が、老後に経済的自立を保てるようにと設計された画期的な救済の仕組みでした。しかしどういう法律や制度ができても、適切に運用、活用されなくては意味を成しません。年金事務所に行けばいろいろと教えてくれますが、予約をして、平日仕事を休んで行く必要があります。そもそも電話さえ繋がりにくい年金事務所が多いのです。
ミサさんやタツヤさんのように、年金分割制度の内容や時効に気づかないまま老後を迎え、想定よりもはるかに少ない年金での生活を強いられたケースは珍しくありません。
制度の背後にある「情報の非対称性」は、個人の判断力だけでは埋めようのない深い格差を生み出しています。こうした人々の多くは、「制度の知識があれば違っていたかもしれない」と悔やみながら、年金だけでは立ち行かなくなった生活を補う手段として、生活保護という選択肢にたどり着きます。
生活保護は、年金制度だけでは支えきれない老後の暮らしを保障するために用意された、誰もが利用できる大切な社会保障です。政治家であれ、大企業の会社員であれ、将来何が起こるかわからないこの時代において、すべての人に開かれた「安心の砦」として存在しています。
生活保護制度は、病気や障害、事故、家族の事情、そして制度の狭間からこぼれ落ちた人々を含め、すべての国民が尊厳をもって生きるために用意されたセーフティネットです。
それなのに、憲法で保障された最低生活を営めないほどの困窮状態にありながらも生活保護の申請にたどり着けずにいる人のほうが、日本では圧倒的に多いと言われています。
申請の場で「まだ若いから働けるでしょ?」と軽く言われた、しかし自分はもう70歳。また、仕事を続けるための手段であっても「車を持っているなら無理」と門前払いされたという話も残念ながらよく聞きます。これは生活保護の現場における誤解や対応の画一化によって、本来受けられるはずの支援から人を遠ざけてしまっている悪しき例です。
制度があるのに、必要な人が使えていない。それこそが、本当の日本の社会的損失です。
制度を使うことは生き抜く力です
近年、SNSではこんな声が話題になりました。
「59歳になったら、毎日年金事務所に通って制度を教えてもらうわ」
冗談のようでいて、切実な本音です。それほどまでに、私たちの社会保障制度は「知っていないと損をする」構造になっているのです。
生活保護に限らず、年金、医療、介護、子育て支援などの社会保障制度は、「誰かのため」ではなく、「すべての人の安心のため」に存在しています。にもかかわらず、制度の複雑さや情報格差のせいで、本来なら救われるはずの人が、支援の網からすり抜けてしまう現実があるのです。
年金制度は、すべての人の老後を支える柱であるはずです。けれど、その仕組みの複雑さから、「知っていたか、知らなかったか」が人生を左右してしまう現実があります。
また、制度を知ろうとしても、そこには新たな壁が立ちはだかります。それが、デジタル格差です。スマホが使えない、マイナンバーカードの暗証番号がわからない、「ねんきんネット」のアクセスキーが期限切れ。
高齢になるほど、情報にたどり着くのが難しくなり、せっかく届いた「ねんきん定期便」のハガキも「何をどう確認したらいいかわからない」と困惑する人は少なくありません。
「困ったときは役所へ」という取り組みも一部の自治体で進みつつあります。
大阪市では、郵便局に「何でも相談してや」というポスターを掲出し、Wi-fi付個室、無料食事付きの住居提供をセットにした生活保護対応も始まりました。
また、死亡届の提出時に「おくやみコーナー」で手続きを一括案内をする自治体も増えてきています。この流れを、離婚や年金にも広げることができるはずです。離婚届を交付する際に「検討すべきことリスト」として、財産分与や年金分割、相談窓口を案内すれば、多くの「知らずに損した人」「お金がなく専門家に頼めず泣き寝入りする人」が減少し、ひいては生活保護費の削減に繋がることにもなります。
法律、制度というものは、ただ「作る」だけでは不十分です。どう伝え、どう使ってもらうかまで含めて初めて、社会保障としての機能を果たします。それは、行政の責任であり、政治家の仕事です。その政治家を選ぶのは国民だということを忘れてはなりません。
誰も見捨てない国、日本
そして、もし自分がもらえる年金が少なければ、頼れる制度がこの国にはあります。それが、無差別平等に万人の生活を支える生活保護です。
生活保護は、誰もが人生の途中で予期せぬ困難に見舞われたとき、安心して頼れるセーフティネットです。「自立の途中で、少し立ち止まるための制度」としても、もっと当たり前になることを願います。制度を正しく理解し、必要なときにためらわず活用することは、これからの時代をしなやかに生き抜く知恵であり、力です。
助けを求めることは、弱さではなく、生きる力の証です。生活保護は、その声に応えてくれる制度です。そして、人生の終盤に生活保護制度を利用することは恥ではなく、荒波を生き抜いてきた誇りです。生活保護制度がある限り、この国には、まだ希望があります。だれも見捨てない国、日本。

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そうめんと唐揚げとすいか

夏の定番はまだ続きそうな残暑というか、まだ猛暑

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