「弁護士JP生活保護連載」第13回記事 令和7年4月27日

弁護士JPニュース
「生活保護を受けたら不利益がありますか?」AIの回答は“間違いだらけ”だった…実務家が語る“現実”とは

ヤフーニュース
「生活保護を受けたら不利益がありますか?」AIの回答は“間違いだらけ”だった…実務家が語る“現実”とは

■ 生活保護制度は「権利」― それでも躊躇する現実

ほかに手段がなく生活に行き詰まったとき、生活保護制度を利用することは日本の法律に基いた国民の権利です。でも、そうだとわかっていても、漠然とした生活保護受給に対する不安から申請を躊躇う方も少なくありません。
かつて行政書士になる前の私も同様に、扶養照会や子供の学資保険の解約などを役所で示唆されたこともあり、無資産・無収入・無職・借金ありの母子家庭という窮地においても生活保護を選択肢から外してしまい、その後、申請さえすれば正当に利用できた制度に頼ることなく綱渡り状態の危うい時期が数年続きました。
母子家庭の生活困窮ゆえの悲惨な事件が報道されるたび、あれは私だったかもしれないと背筋が寒くなります。

■ よくある質問:「生活保護を受けたら不利益がありますか?」

先日、生活保護制度について知りたいことを顔見知りの士業にアンケート形式で尋ねたところ、多かった回答の一つが『生活保護を受給したらなにか社会的に不利益を受けることはないのか?』というものでした。

これは、実際に行政書士が多く受けてきた質問の一つ。そこで、流行りの生成AIにこの質問を投げてみました。

すると、驚くような『間違った』回答がまことしやかに瞬時に返ってきました。ネットで情報収集する人が多いこの時代、生活保護への誤解、偏見の元を断ち切るべく、生成AIの回答では何が間違いなのか?『正しい』回答を行政書士が解説します。

【誤解1】生活保護を受けると「転居・外出」が制限される?
→ いいえ、自由にできます

生成AIで出てきた回答がなぜ間違っているのか、解説します。実際にこうした誤解が多いのも事実です。

◆ 引越しに「許可」は必要なの?

→憲法第22条において、居住移転の自由は保障されています。たとえば、生活保護受給中に就職活動をして、リモートで面接を行い(あるいは事前にケースワーカーに相談して、面接交通費を出してもらい遠方への面接も可)内定が出た他県の就職先近くへ引越しをする場合は、自分で引越費用を捻出できず、誰からも援助を受けられないことを担当ケースワーカーに伝え、引越費用の支給申請ができます。

就職に限った話ではありません。一人暮らしで体調不良のとき誰も駆けつけてくれる身内が近くにいないため、住み慣れた故郷に帰り、経済的な支援は受けられなくても精神的な支えとなってくれる親族の近くで暮らしたい。この場合も、以前の記事に書いたように、引越費用の支給申請ができます。

公的なお金を役所が支給するためには、相応の理由が必要なことはたしかです。生活保護を受けていて、引っ越したくなったらどこへ引っ越すのでもお金を出してもらえるわけではありません。

『病気で仕事はできない身だけれど、一度でいいから、憧れの北国、北海道で自然に囲まれた生活がしてみたい』などの理由であれば(実際そのような夢を持つ方もいます)役所のケースワーカーから、『その引越し理由なら費用は出せないが、自分で生活保護費を節約して貯金して、自分で引っ越すのは自由です。』おそらく、こう言われるでしょう。生活保護費をやりくりして、引越費用に充てるのもまた、個人の自由です。最近は、いわゆるゼロゼロ物件という、初期費用なく引越しできる物件もありますから、生活保護を受けているからといって、許可制とか、引越が制限されるということはないのです。

ただ、住んでいる場所で生活保護を受けるのが基本で、家賃がいくらかによって生活保護費の計算額が変わるので、生活保護のルールに則った報告や手続きは必要です。

◆ 外出や旅行に制限や報告が求められる?
→いいえ、こちらもありません。

外出に制限など、憲法第13条で保障された国民の幸福追求権を制約するような規定は当然ありません。テレビも携帯電話も持たないミニマム生活で生活保護費を節約して、毎年旅行に行かれているご夫婦も知っています。もともと奥様の身体が弱く、ご主人も身体に不自由があり、国民年金でぎりぎり働いて生活。70代に入り奥様が要介護となったことからご主人が介護をしながら夫婦で生活保護を受給されています。
障害によって労働に制約がある中、それでも何とか働いていた頃と同じくらいの生活保護費を、年を取って働くことができなくなった今も国から頂けていることに心から感謝していますと、手書きのお手紙を数カ月ごとに行政書士事務所に送って下さるのです。

時折、親族が家に泊まりに来る、親族宅に泊まりに行くなども当然ながら、個人の自由です。

プライバシーの確保、プライベートの自由は生活保護受給中でも当然あります。外出や旅行の報告を、都度しなければいけない、などとという決まりはありません。とはいえ、自分で節約して貯めたお金で旅行に行くのは個人の自由であり権利でも、生活保護受給しながら、他人にお金を出してもらって旅行する場合は、経済援助という扱いになります。人と旅行に行くにしても、自分の旅費は生活保護費から自分で出すという場合は、経済援助を受けるわけではないので収入扱いにもならず、これは個人の自由で制約もありません。

実態的に友人宅や親族宅に入り浸ってしまっているようなケース(長期間自分の家に帰らないなど)では、そもそも居住実態が問われることになります。イベントごとなど、たまに親族宅や知人の家に泊まり、自分の食事代や光熱費などの宿泊実費を自己負担する限り経済援助にならず、保護費を減額されることもありません。

【誤解2】生活保護を受けていると「結婚・交際」ができない?

そんなものありませんと即答したいところですが、生活保護受給中に結婚するとなれば、誠実に交際するパートナーに生活保護受給していることを言わないわけにはいかないでしょう。
とはいえ、生活保護受給という個人情報は、自分が話さない限りは他者に知られることはありません。

『生活保護を受けていると同棲や結婚はできませんか?』
私が以前、ラジオ番組の生放送で生活保護の質疑応答を担当していたとき、リスナーから受けた質問です。明確に『大丈夫です』と回答しました。既に同居しているとのことだったので、一刻も早くケースワーカーに事実を伝えるよう助言しました。

生活保護を受けていても、結婚、同棲したり、出産することは個人の自由であり、権利です。就労支援施設で出会った、同じ病気や障害を持つ人同士が恋におち、寄り添い助け合いながら暮らしているケースもあります。

一人で生活保護受給していた人が異性と同棲する場合は、ケースワーカーに伝えて手続きが必要です。同居する人も無資産無収入とか、生活保護受給者であれば、同一世帯として一つ屋根の下で暮らしながら一緒に生活保護を受けることも可能です。同居することになった相手に資産収入が一定以上あれば、その人の扶養の傘に入ることになるので、生活保護は卒業です。

結婚する相手に生活保護を受給していたことを知られたくない場合に、先にケースワーカーに相談して、保護を廃止にしてもらってから、結婚、同居した例もあります。

【誤解3】生活保護を受けたら「就職に不利になる」「家族の仕事に影響する」?
→ 影響は一切ありません

生活保護を受給する本人の就職にも、親族の就職にも、影響は及びません。繰り返しになりますが、生活保護申請や受給は究極の個人情報なのです。本人が、自分の口から生活保護を受けていたことを言わない限りは、就職先や転職先、前職などに知られることはありません。生活保護を受けている福祉事務所から、就職先や前職に勝手に連絡されることも当然ありません。

ただし、生活保護を受給しながら就職した場合は、毎月の収入申告が必要です。この収入申告をせずに給与をもらいながら生活保護費を満額受給すれば、不正受給となります。本人が生活保護のルールを守り、収入申告という手続きをしている限りは問題ありませんが、収入申告を意図的にしない場合は、これは不正受給という観点から調査が入ることになります。

生活保護を受給した過去があるからといって、本人あるいは家族の就職や結婚の不利益になることはありません。親兄弟が自衛官など国家公務員だったり、役所、警察勤務の地方公務員だから生活保護申請を親族がするとバレるのではないかという相談も過去多数受けてきましたが、心配ありません。国家公務員の親族でも経済支援を受けられなければ生活保護を受給できますし、そもそも親族が公務員であることや親族の個人情報の開示は任意です。生活保護申請において、勝手に家族の仕事を調べられるようなことはありません。

【誤解4】「役所の調査」で家族に連絡されたくない
→ 調査は本人の同意が必要。家族への照会も任意です

たしかに生活保護を申請すると、本当にその人が生活困窮しているかを確認するための資産収入の調査はあります。ただ、家計簿の提出を強制されたり、親族の身辺調査を秘密裏にされるようなことはありません。あくまでも生活保護申請にあたり、調査が必要なのは、保護を受ける本人の資産収入に関することです。それも、申請をしたからといって勝手に資産や年金を調査できるわけではありません。生活保護申請後、あるいは申請時に、年金額や金融資産の調査に同意する旨の同意書に署名しない限り、役所が勝手に個人の銀行の預貯金などを調べることはできません。

親族への調査である扶養照会は任意であって、強制ではありません。生活保護を受けるわけではない家族の資産や収入を聞かれても、それは生活保護を受ける本人の個人情報ではありませんから、『別居で経済援助がない親族の個人情報は答えられない』と回答することができます。

また、実際に扶養照会の書面が親族宅に届いても、これまで経済援助をしてこなかったような親族は、役所からの文書そのものを破棄されるなど、回答に協力を得られないこともよくあることです。扶養照会の回収率の低さから、無駄な手続ではないのか、単に生活保護申請の心理的ハードルを上げるだけではないのかと国会において、質問追及がされたこともありました。

現在の法制度では、10年以内に連絡を取り合った親、兄弟、子には基本的に扶養照会をすることになっています。ただ、これも、扶養照会をしないでくださいと明確に申請時に意思表示をすることができます。『扶養照会を苦に申請を躊躇うことのないよう』個々の状況に応じた適切な対応をして、生活保護申請の実質的水際作戦となるようなことをしないよう、国から自治体に通達も出ています。大事なことは、『この親族には、こういう理由で生活保護のことを知られたくない』意思表示を明確にすることです。家族関係が悪く、扶養照会により親族関係がこじれる心配がある場合は、親族への調査は回避してもらうよう要望すればいいのです。

『生活保護を受けていることを知られることがストレス』という声もよく聞きますが、自分から言わない限り、この究極の個人情報が他人に知れることはありません。扶養照会を苦に申請を躊躇うのではなく、扶養照会を拒否すればいいのです。

【誤解5】生活保護世帯の子どもは「大学に行けない」?
→ むしろ、手厚い支援があります!

生活保護受給しながら大学に通うことはできないという情報はネットに溢れていますが、これには誤解があります。
生活保護受給世帯の子が通常の昼間の大学に進学する場合、たしかにその大学生の分の生活保護費は支給されなくなりますが、その代わりに手厚い返済不要の給付型奨学金で学費も生活費も支援を受けることができるのです。

日本学生支援機構(JASSO)の住民税非課税世帯向け給付型奨学金は、生活保護世帯も対象です。2025年の月額支給は、生活費として自宅通学で3万8千円、自宅外通学で最大7万5千円。これに加えて、国公立大学であれば入学金と授業料は全額免除、私立大学も入学金減免が約25万円、授業料の減免も年間約70万円と手厚いです。これに加えて、生活保護受給していないためアルバイトをしても、家族の生活保護費が減らされることはありません。

この、同居し生計を共にしながら、家族の一人だけが生活保護の適用が外れるというのは大学生の特権といえます。通常の生活保護世帯では、一人でも収入資産が多い人がいれば、その世帯すべてが生活保護適用とならなかったり、一人の収入によって世帯全体の保護費が減額されるのです。でも、大学生の特別な世帯分離の扱いにより、生活保護を受けている家族と同居しながら、学費と生活費を給付型返済不要の奨学金で賄い、さらにアルバイトをしても世帯の生活保護費を減らされることなく、大学生が自分のために使うことができるのです。生活保護世帯の子どもの教育機会は制限どころか、とても手厚い支援制度が用意されているのです。

■ 最後に:見えない不安に、振り回されないために

「生活保護は一度受けたら不利益が一生残る」といった誤解、偏見が、制度の利用を妨げている現実があります。

生活保護を申請、受給しても、そのような不利益はないのです。目に見えない不安に振り回されないことです。正しい知識で不安を解消して、必要なときに、堂々と制度を利用してください。

生活保護について、インターネットやSNSには間違った情報がたくさんあります。正しい知識を持つことで、何も心配することはなく、手厚いセーフティネットが日本には用意されているという安心感に繋がります。生活に困ったら、一人で悩んだり、返す当てのないお金を借りて自分を追い詰めることなく、安心無料の公的機関、役所に相談です。


サバとフランスパンの鍋、簡単で美味しくてヘルシー栄養満点のダイエットレシピ


フランスパンは、無印良品のものを冷凍しています。


サバ缶+ミニトマト+オリーブオイル+パセリをお鍋に入れるだけ、簡単おいしい!