「わたし生活保護を受けられますか」第7回記事 令和7年1月5日

→弁護士JPニュース
「フィリピンに帰ればいい」生活保護を求める日本育ちの女性が受けた “違法な” 対応…背景にある「制度の誤解」とは【行政書士解説】 | 弁護士JPニュース

→Yahooニュース
「フィリピンに帰ればいい」生活保護を求める日本育ちの女性が受けた “違法な”対応…背景にある「制度の誤解」とは【行政書士解説】(弁護士JPニュース) – Yahoo!ニュース

フィリピン国籍の女性パウさん(仮名・40代)が、お子さんを連れて行政書士事務所へ相談に来られ日のことは、昨日のことのように覚えています。最初の電話でも日本人だと思い、お会いするまで外国人だということも、わかりませんでした。そして、こんな外国人差別があるのかと唖然としたのです。

「生活に困っているなら、フィリピンに帰ればいい」

そう役所で言われたのは、正当な在留資格があり、日本で人生のほとんどを過ごし、日本で結婚をし、日本人の間に子どもも生まれ、働いて納税もしてきた女性。

ほかの行政書士や弁護士に相談をしても、「元配偶者の家に居候しているなら、生活保護申請しても却下される。引っ越してから申請しないと、生活保護は受けられない」
そう言われて行きついたのが私の事務所でした。

上記の行政書士や弁護士らの回答は明らかな誤りです。実際には、他人宅に住んでいても、真に困窮して経済援助も受けられない状態であれば、生活保護は受けられます。

適法に日本に滞在し、活動に制限を受けない永住者、定住者等の在留資格を有している外国人は、生活保護制度の運用上、「生活保護法に準じた取扱い」を受けられます。

外国人保護の実施責任は、在留カードまたは入管特例法に基づく特別永住者証明書に記載された住居地の管轄福祉事務所にあります。(日本人は住民票がどこにあろうと、原則、実際に寝泊まりしている場所の管轄福祉事務所です)

例外的に、外国人であるDV 被害者が住居地の変更届出を行うことができない状態にある場合は、日本人と同様に実際の居住地で生活保護を受給できるケースもあります。
生活保護の相談に行ったパウさんに、窓口の人が放った言葉は「生活に困っているなら、フィリピンに帰ればいい」。

人生のほとんどを日本で過ごし、日本人と同じように働き、税金や社会保険料も納めてきたパウさんに、何と心ない言葉でしょうか。

日本政府は、定住外国人に対し、通達により、生活保護法に準じた保護を与える運用を行ってきています。

通達は行政内部の法解釈・運用を統一するための基準なので、これに則った運用が行われなかった場合には、裁量の逸脱・濫用として違法の問題が生じ得ます。

在留資格を持つ外国人の方には、社会保障制度の運用上、保護を受けるべき権利があります。それなのに「生活に困っているなら自国に帰れ」とは、明らかに、行政の裁量逸脱行為と言わざるを得ません。

このような違法な外国人差別は、残念ながら生活保護行政以外でも見られます。

土曜日に事務所に相談に来られたパウさんの生活保護申請は、2日後の月曜日に、早速、※特定行政書士が申請書を作成して、福祉事務所に代理提出、受理されました。

※官公庁に提出した書類に係る許認可等に関する不服申立ての手続について代理権を持つ行政書士

病気なのに、国民健康保険料が払えずに通院ができなかったパウさんは、福祉事務所で生活保護申請中であることを証明する書面を発行してもらい、無事に、自己負担なく病院にもかかることができ、ほっとしたとのことでした。

申請後、パウさん本人が、直接福祉事務所の担当者に相談したときは、「調査期間中は医療費は無料にならない」と、いったんは対応を拒まれてしまいました。

そこで、当事務所の行政書士が再度担当者に電話連絡をして事情を説明し、対応してもらったものです。

本来、生活保護法や、厚生労働省の「生活保護実施要領等」や通達等にしたがって、弱者の立場に配慮し血の通った行政運営が徹底されていれば、行政書士がパウさんと福祉事務所の間に入る必要もなかったはずです。

これは「外国人だから」で済まされる問題ではありません。日本人に対しても、あの手この手で生活保護の申請を諦めさせようとする「水際作戦」などの対応がとられることがあります。

ともあれ、逆境でも明るいパウさん。

小学生のお嬢さんが持っていたビーズをあしらったハンドバッグを「とてもかわいいね」と話す私に、「私はセンスがいいから安いものを買ってもほめられるの!」と笑顔で返してくれたパウさん。

無事に病院に行き、必要な薬をもらうことができて、ほっと、胸をなでおろしたのでした。

今後、パウさんのような定住外国人だけでなく、日本で働く外国人労働者の生活支援・社会保障をどうするかということが、重要な課題になっていくと想定されます。

外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法が、2019年4月1日に施行されました。新しい在留資格として、一定の専門的・技術的な業務を担当できる「特定技能」(1号、2号)が設けられたのです。「技能実習」の資格から「特定技能」への資格に移行することも認められるようになりました。

これは、深刻化する人手不足への対応として行われたものです。ひとえに「日本社会の都合」によるものといわざるを得ません。

在留資格を持って働く外国人労働者は、日本人と同様に税金を支払い、社会保険の加入義務を負います。そのような人々に対する社会保障も含めた生活支援の制度をどのように設計すべきかという問題は、今後、避けて通れないものになっていくと考えられます。

なお、国会では、外国人増加による治安悪化を懸念する意見も出ましたが、『令和5(2023)年版犯罪白書』によれば、実際には、来日外国人犯罪の検挙件数は2005(平成17)年を、検挙人員についても2004(平成16)年をピークに減少傾向が続いています。

また、犯罪に至ったケースの多くは、日本での貧困や差別、教育の問題が背景にあると言われています。

治安維持のためにも、外国籍の方の日本での生活支援について、日本の伝統的な美徳である「思いやり」を持って、外国籍の方、そのお子さんについても考えてもらいたいと思っています。

生活保護決定後に手紙とお花を送って下さったパウさん。

しやくしょの ひとわ せいかつにこまっているひとをたすけるしごとなのに たすけてくれない おかねもないから どうしたらいいか まいにち こどもたちのごはんもふあんで まいにち おいのりして ないているときに ひとみさんに あえました