「弁護士JP生活保護連載」第6回記事 令和7年3月9日
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中国人48名“来日直後”に「生活保護」申請…行政が「保護開始決定」せざるを得なかった“法制度の欠陥”とは【行政書士解説】 | 弁護士JPニュース
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中国人48名“来日直後”に「生活保護」申請…行政が「保護開始決定」せざるを得なかった“法制度の欠陥”とは【行政書士解説】(弁護士JPニュース) – Yahoo!ニュース
生活保護だけでなく、入管、国際業務を取り扱う行政書士の視点から、かつて猛批判を浴びた大阪の中国人48名が来日直後に「生活保護申請」をしたというケースを解説しました。
これは、生活保護行政の問題というよりは、入管でのずさんな入国審査が要因だったといえます。
外国人の在留資格申請において、外国人が日本で生活していくにあたり、経済基盤をどうするかというのは重要な審査事項です。資産、収入の確保といった証明はとても重要で、ほぼほぼ、それに尽きるといっても過言ではありません。
しかしながら、大阪入管は当時、収入欄に生活保護と書かれた無職の申請複数があったことを認めています。
入管法(出入国管理及び難民認定法)の第5条3項では上陸を拒否すべき外国人として下記のように定められています。
(上陸の拒否)
第五条 次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。三 貧困者、放浪者等で生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者
ほとんどの在留資格認定申請においては、申請者本人が働いて収入を得るのであればその予定の証明、誰かの扶養を受けるのであれば扶養者の収入の証明等が必要となります。
そこを踏まえて、本人の収入・勤務先の予定や扶養者の職業欄が「生活保護」、扶養者欄が「区役所」となっているような申請書で許可が下りたのは普段入管業務を取り扱っている行政書士からすると、相当不可解な経緯です。
結局のところ、何が問題だったのか?現在は生活保護目的での入国を防ぐ体制が確立されていることなど、解説しました。
世界からあらゆる差別と人種主義の撤廃をめざす、国際人権NGOが、The International Movement Against All Forms of Discrimination and Racism 反差別国際運動 IMADR
通信連載「本の紹介」にて、「わたし生活保護を受けられますか」特定行政書士三木ひとみの著書の紹介記事を掲載頂きました。
IMADRは、1993年に日本に基盤を持つ人権NGOとして初めて国連協議資格を取得。以降は、ジュネーブに事務所を置き、国連人権理事会を含む人権諸機関による協議の場で提言活動をされています。
被差別マイノリティに対する差別の撤廃や、権利の確立に関する具体的な課題に関し、国連による決定や勧告を導き出し、国内における問題解決や改善につながるよう、またマイノリティが国連の人権制度を活用するための情報発信の取組に関する素晴らしい活動をされています。
日本に差別など存在しないという声も聞かれますが、私はそうは思いません。
IMADR通信No.212特集ヘイトスクラムに対抗するの号で、関西大学人権問題研究室の宮前千賀子さんの記事を読んで、心が震えました。以下、抜粋してご紹介します。
学校での体験
関東の製糸工場で努めていた高橋みす江は、小学校時代の体験を次のように語る。
・・・ある日、「このうちにエタの子がおるなら手をあげなさい」「エタの子には本を読むことを許しません」と嘲笑しながら言いました。・・・無論私は手を上げることはできませんでした。それは私はエタという言葉も知らず、どういうものか知らなかった時代でした・・・ところが、お隣の級友が「みす江さんはチョウリだとみんなが言いますから」と言いました。先生は、「チョウリもエタも同じだから、本を読むことを許しません」と私の手から読本を引ったくって持っていきました。私は小さな胸がいっぱいになって泣きました。皆の級友は、大きな声で笑いました。私は泣き泣き教室を出ました。・・・「もう学校へは参りません。」
日本は、国連人権諸条約を批准していますが、それら条約の実施に必要な国内法や制度は、整備されないままです。具体的には、被害者に対する相談、調査、救済を提供する国内人権機関の不存在です。自由権規約や人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約などに備えられている個人通報制度は、国内の裁判手続きを経て救済されない人権侵害の申立てを、個人が国連に通報できる制度ですが、これも日本では導入されていません。
多くの日本人女性が、国内で差別に直面し、司法においても男性中心社会であるがために女性蔑視が存在し、正当に救済を求めても救済されない現実を私も見てきました。
弱き立場の方々の声をつなげ、政府や国連に働きかけ、社会全体の課題として世の中に認識されるよう積極的な発信を長きにわたり継続されている国連人権NGOであるIMADRの通信に記事を掲載頂けたことは、大変貴重で光栄な機会で心より感謝申し上げます。
(行政書士法人ひとみ綜合法務事務所 原優美)