「弁護士JP生活保護連載」第8回記事 令和7年3月23日

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法が禁じる“偽装請負”で搾取、40代女性が「生活保護」に行きつく…公的機関はなぜ機能しなかったか【行政書士解説】 | 弁護士JPニュース

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法が禁じる“偽装請負”で搾取、40代女性が「生活保護」に行きつく…公的機関はなぜ機能しなかったか【行政書士解説】(弁護士JPニュース) – Yahoo!ニュース

『何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。』
労働基準法第6条において、中間搾取の排除が規定されています。これは、第三者が労働者と使用者との直接的労働関係の開始やその継続に介入して、手数料などの名目で金銭を得ることを禁止するものです。労働者の人格を無視した、賃金のいわゆるピンハネを排除して、労働関係の開始・存続を労働者と使用者の直接関係によって決定することを目的としています。

『第6条の規定に違反した者は、これを1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。』
同法118条1項には、重い罰則も規定されています。これは、労働基準法で2番目に重い罰則です。

『法律に基いて許される場合』とは、職業安定法および船員職業安定法の規定に基づいて、厚生労働大臣または国土交通大臣の許可を得て行う有料職業紹介業、委託募集、労働者供給事業のことをいいます。ただ、これらの場合であっても、法で認められた手数料、報酬等のほかに利益を受けるときは、本条に違反します。

【誰でも知っている大手企業(仲介業者)に22%計200万円の給料をピンハネ。最低賃金をはるかに下回る時給で何年もシフト制で働き、挙句8カ月の給与未払いと36協定も残業代も深夜残業代も有給休暇も何もない状態で過重労働させられたことから生活困窮、心身の健康も脅かされ、法テラスも役所も何度も出向いても助けてもらえなかった。】

今年はじめ、北海道から行政書士法人ひとみ綜合法務事務所に悲痛の相談がありました。保護決定してから、頂いたお手紙が、こちらです。

この案件は法テラスで受けれる人いません。とも言われました。(弁護士の利益が少ないので。)

労働者派遣契約は、他人の労働関係に介入するものではなく、労働者派遣自体は本来中間搾取には当たりません。ただ、労働者派遣における許可を受けない場合は、労働者派遣法上の違法となります。

労働基準法上の問題となる中間搾取とは、労働者に対して雇用関係も指揮命令関係もない紹介者が、紹介手数料だけをもらって関係から離脱してしまう形態のことです。

職業安定法第44条は労働者供給事業の禁止をうたっていますが、労働組合等が労働大臣の許可を受けて無料で行う労働者供給は、認められています。

近年、多くの産業、業種で、労働者を他人に使用させ、料金を得る派遣が広がり、派遣労働者の労働実態が問題となりました。もともと派遣的労働は、職安法第44条で禁止される労働者供給にあたることは疑う余地がないところでした。そこで、政府は派遣的労働を追認、合法化するため、1985年に労働者派遣法を制定、翌年7月に施行しました。こうして、労働者派遣については、労働者と派遣元は雇用関係にあり、労働者供給の例外的措置として認められました。さらに、1999年12月には、改正派遣法が施行され、専門的知識や経験が必要な業種以外の派遣も可能となりました。

ちなみに、行政書士の古巣でもあるリクルート、のリクルート事件は1988年(昭和63年)戦後日本最大の企業犯罪ともいわれ、公職選挙法改正のきっかけとなりました。

警察官だった父親は、リクルートに就職が決まったと意気揚々としていた私に対して、失望した、派遣が日本をダメにしたんだ、と言ったものです。リクルートに入社後、そのエピソードをリクルートの女性上司に話したところ、「じゃあ、なぜうちの会社に入社したの?」「私はリクルートは日本を元気にしていると思う!」と険悪な雰囲気に・・・。

労働者の派遣先が労働者の派遣元である派遣会社へ支払う料金から、派遣会社のマージンが引かれることは紛れもない事実ですが、このマージンには福利厚生費や教育訓練費が含まれています。また、派遣会社のマージン率や教育訓練に関する取組状況はインターネットなどから確認できるようになっているため、より自分にあった派遣会社を自己選択できるようになっています。労働者派遣については、希望により有期雇用から期間の定めのない雇用への転換も進められています。

雇用期間が通算1年以上の有期雇用の派遣労働者については、希望に応じて、
1.期間の定めのない雇用(無期雇用)に転換する機会の提供
2.紹介予定派遣の対象とすることで、派遣先での直接雇用を推進
3.無期雇用の労働者への転換を推進するための教育訓練などの実施
これらいずれかの措置をとることが、派遣会社の努力義務になっています。

派遣でも、労働基準法、男女雇用機会均等法などの、労働関係法令が適用され、社会保険・労働保険の加入手続きも派遣元事業主が行います。年次有給休暇の付与の責務も、派遣元事業主にあります。

こうした労働者派遣法上の規制を逃れるため、偽装請負ほか、様々な巧妙な手口による労働力の不当搾取がこの日本社会に蔓延り、働く意欲ある健康な人の心身を蝕み生活保護に至っている実態が知られることで、この問題の解決に繋がることを願っています。

会社名は出していませんが、記事の二社共、立派なHPを出している大手企業。特に22%ピンハネの会社は、日本中知る人がいないのではないかという超有名企業ですから、被害者は沢山いるでしょう。

法律が存在するのに、不法行為が野放しで被害者がたらい回しになり、涙をのむ社会で、誰が得をするのでしょうか。労働基準監督署による調査、政府も動くべき問題です。

来週は、団塊の世代が75歳以上となる令和7年、超高齢化社会日本が抱える問題、成年後見制度と生活保護について。行政書士も、身寄りのない、あるいは親族がいても支援を得られない生活保護受給者の方々の後見人を担ってきました(現在、新たな後見業務はお引き受けしていませんが、この辺りの事情も)。
理想と現実、この制度の課題を、率直にわかりやすく解説します。