「弁護士JP生活保護連載」第11回記事 令和7年4月13日
「弁護士JP生活保護連載」第11回記事4月13日(日)
弁護士JPニュース
→「生活保護受給者は裁判する暇があるなら働け」が“的外れ”な指摘である理由 提訴から10年超なお未解決「いのちのとりで裁判」が問いかけるもの【行政書士解説】
Yahooニュース
→「生活保護受給者は裁判する暇があるなら働け」が“的外れ”な指摘である理由…提訴から10年超なお未解決「いのちのとりで裁判」が問いかけるもの【行政書士解説】
世間一般に訴訟や裁判というと、ものすごくお金と時間がかかるものというイメージだと思います。 経済的に困窮していたり、また生活保護受給中であったりすると、とてもじゃないけれど弁護士の先生に頼む余裕などなく、揉め事や紛争に巻き込まれてしまっても戦う手段がなく泣き寝入り。 それ以外にも、紛争ではなく自己破産の手続きなども頼めないのでは?と考えてしまう人もいます。 しかし、実際のところはそうではありません。 生活保護受給中であっても、むしろ生活保護受給中であったほうが利用できる支援制度もあります。 自分の身に起こる理不尽な事に関して費用がないからと諦める必要はなく、戦う方法はあるのです。 泣き寝入りせずに戦えば、嬉しい結果もやってきます。
最近あった話ですが、私の身近な女性行政書士吉永藍さんが提起した裁判で、歴史に残るかもしれない、大きな意義のある判決が出ました。
【強制加入団体の会長選挙無効の判決】
行政書士は国家資格ですが、国家試験に合格しただけで行政書士になれるわけではありません。各都道府県の行政書士会に、入会金約30万円程度を支払い、毎月の会費を納める必要があるのです。日本弁護士会連合会など他の国家資格においても、同業者間の自主的規律による職業倫理の維持や、各会からの要求などにより、強制加入制がとられている職能団体は多くあります。一方で、建築士、不動産鑑定士などのように、強制加入制がとられていない国家資格もあります。 2年前、吉永藍さんはこの行政書士会で最も会員数の多い東京都行政書士会会長に立候補しようとしました。でも、その届を不受理にされてしまい、立候補することができませんでした。当時、不受理にされるには個人に相当の理由があったはずだ、など、憶測による誹謗中傷もあったといいます。納得ができない吉永藍さんは、司法判断を煽ぐことにしました。 そして、さる3月12日、吉永藍さんが提起した裁判の判決が東京地方裁判所でありました。2年前に行われた会長選挙が無効であるとして所属する行政書士会を訴えた事案は、原告の全面勝訴。強制加入団体である士業の会では選挙結果の効力に関して司法審査の権限が及ぶという点、そして強制加入団体であり公共性を有することを踏まえれば公職選挙法の規定を援用できる、と判断して当選が無効であると判示した画期的な判決でした。士業界において、女性はまだ少数派。吉永藍さんの勝訴は、私を含め多くの同業者を勇気付けたことでしょう。 しかし、吉永藍さんは幸運にも勝訴しましたが、ここに至るまで多大な苦悩がありました。
【いのちのとりで裁判】
通称「いのちのとりで裁判」2014年に始まった生活保護基準の改定の是非を巡る全国的な訴訟です。この裁判は、経済的に最も脆弱な立場にある生活保護利用者の方々が、国を相手に、文字通り「いのちのとりで」を守るために立ち上がった、長く困難な闘いです。
裁判に係るリソース①時間がかかる 裁判とは、裁判所が法律に基づいて紛争や犯罪を解決する手続きのことです。日本国憲法第32条では「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」として、誰でも公平・平等な裁判を受ける権利が保障されています。 しかし、裁判にはいくつかの問題もあります。その中で、裁判に係るリソース、特に「訴訟期間」と「訴訟費用」の問題を説明しましょう。 まず、訴訟期間の問題です。
冒頭に挙げた吉永藍さんの事案は、令和5年5月に提起した訴訟です。そして東京地方裁判所で判決が出たのが本年3月です。つまり、判決を得るまでに2年近くの時間がかかっています。しかも日本は三審制なので、場合により控訴(東京高等裁判所)あるいは上訴(最高裁判所)に進む可能性があります。そうすると、最終的な司法判断が下るまでにはまだ早くて半年、1年単位くらいの期間がかかると考えられます。 これは、吉永藍さんの事案にかぎったことではありません。
「いのちのとりで裁判」は2014年にスタートし、2025年4月現在、11年が経過しています。長期化で原告の高齢化が進み、病気などで死亡する原告も目立ってきました。原告は多いときは全国で千人を超えていましたが、現在は900人未満になっています。ただ、原告側、行政側とも、現在の事情を前提で考えると、裁判を早期に終結させるのは難しかったと言わざるを得ません。
【原告側の事情】 原告が生活保護利用者なので、代理人弁護士は報酬が十分に得られるわけではなく、各地の弁護士の多くは「持ち出し状態」で取り組まざるを得ませんでした。多額の報酬を得ている弁護団に比べると、強力な態勢は組みにくかったといえます。資金力が十分な状態であれば、主張内容を精緻にしていくまでの時間は大幅に短縮できたのかもしれません。
厚労省が策定した2013年生活扶助基準改定案は「物価偽装」「2分の1処理」という統計不正の産物でした。常識では想定し難い、とんでもない内容の統計数字操作であることを、原告側がきっちり説明できるようになるのに年月を要しました。2019年の通常国会で統計不正の問題が初めて大きくクローズアップされました。それまでは、統計不正という概念すら広まっていなかったので、原告側関係者も、統計の論点を徹底的に考える人材を確保しにくかったのです。
行政書士も親交のある、元中日新聞記者でフリージャーナリストの白井康彦氏や数人の弁護士が、物価指数計算の仕組みから念入りに研究したといいます。それに長い時間を費やし、物価指数に詳しい学者を味方につけるのにも長い時間を要しました。白井氏自身は、2013年夏の段階で「物価偽装はとんでもない統計不正だ」と確信を深めていました。ただ、2014年初め頃でも「完璧にカラクリを解明するのには相当に長い年月が必要」と感じていたそうです。「裁判になれば、この問題の研究に長時間打ち込むことがしやすいのでありがたい面がある」とも考えていたと言います。
2分の1処理については、それを実行していたことすら行政側が秘匿していました。実行していたことが明るみに出たのが2016年だったので、全国弁護団も2分の1処理についての研究はそこから始めざるを得ず、物価偽装問題に比べると、取り組み遅れが目立ちました。2分の1処理については、裁判の過程でも、行政側が計算経過が明確に分かる計算表などの具体的資料を開示せず、原告側の取り組みが遅れる要因になりました。「実行したことすら秘匿した」という事実は、2分の1処理の「異常性」を暗示しています。しかし、それが未だ大きく報道されることなく、クローズアップされていない状況に、白井氏は今も「もどかしさ」を感じているといいます。
生存権の範囲を具体的に決める行政処分の取り消しを求める重要な裁判なので、この他でも、行政裁量論、生活保護利用者らの生活実態論、現代の貧困論、憲法論、行政の手続き論などを精緻にしていくことは必須であり、研究者の意見書を集めたり、準備書面を弁護団が執筆することなどに長い時間が必要になったのです。
行政側は、敗訴判決が増えるにつれて、根幹的な主張内容を大きく変更しました。これについて、きっちり反論していくのにも長い時間が必要でした。
【行政側の事情】 2013年生活扶助基準改定行政処分の内容案づくりで厚労省が重大な統計不正に踏み出してしまったのは、自民党の圧力が背景にあったと言われています。裁判で最終的に行政処分取り消しが確定すれば、後処理が極めて困難である上、厚労省や自民党の責任問題が浮上することも必至です。それを避けたいので、2024年からは行政側が「最高裁判決が出るまで何とか粘る」状況になったといいます。生活扶助相当CPIの計算が異常であることがかなり明確になっても、「計算値が正しくなくても裁量権の範囲内」であるかのような「見苦しい主張」を展開してきたことには、白井氏も唖然としたそうです。
行政側が恵まれたのは、「いのちのとりで裁判」についてのマスコミ報道が盛り上がっていなかったことであると言えます。生活保護はバッシングが起こりやすいテーマである上、この裁判では統計の論点の主張の応酬が活発で、不勉強な記者はがっちり取り組むことに消極的になりやすかったのです。
次に、裁判に係るリソースのもう一つの側面、「訴訟費用」について説明します。 裁判を起こすには、印紙代、切手代、弁護士費用など、様々な費用がかかります。特に弁護士費用は、事件の内容や期間によって大きく変動するため、経済的に余裕のない方にとっては大きな負担となります。
しかし、憲法第32条で保障している「裁判を受ける権利」を確保するため、経済的に困窮している方や生活保護を受給している方でも、裁判を受けるための支援制度は存在します。
(1)日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助制度 法テラスは、国が設立した法的トラブル解決のための総合案内所です。経済的に余裕のない方が法的支援を受けられるよう、無料法律相談や弁護士費用の立て替えなどを行う民事法律扶助制度を設けています。
生活保護受給者の方であれば、原則として無料で法テラスの法律相談を受けることができます。また、「いのちのとりで裁判」のように、裁判や自己破産などの手続きを弁護士に依頼する場合、弁護士費用の立て替えを受けることが可能です。この立て替え金は、原則は立て替えなので利用者は返済しなければなりません。ただ、生活保護受給者の方については、自己破産など慰謝料などが入らないケースでは、基本的に立て替え分の返済も免除となります。(※ただし、これは法テラスの個別判断になりますので、詳しくは法テラスに確認してください。依頼時に生活保護を受給していても、自己破産手続き完了時には仕事をして自立をしている方などもいますから、返済可能な人は返済をしなければいけません。) 返済の免除がされない場合も、分割払いが可能ですので、一度に多額の費用を必要としません。
行政書士の私自身も、約20年前、また法テラスが法律扶助協会という名称だった頃に利用したことがあります。当時はストーカー被害に遭い、シェルターに母子で避難していたときに手書きで事実経緯をまとめた書面を家庭裁判所に持参し、接近禁止命令までは自力でやったものの、その後の慰謝料請求などは弁護士さんに依頼しました。
これらのサービスを利用するためには
①収入等が一定額以下であること
②勝訴の見込みがないとはいえないこと
③民事法律扶助の趣旨に適すること という条件があり、無料法律相談を受けるためには①と③を、立て替え制度を利用するためには①、②、③のすべての条件を満たす必要があります。 これらについて詳しく知りたい場合は、法テラスのサイトをご覧になるか、電話やメールでお問い合わせして下さい。生活保護受給者の方は、担当ケースワーカーに聞いてみてもよいでしょう。お近くの法テラスの相談窓口を案内してくれるはずです。
(2)裁判所の制度 裁判に係る費用は本人負担が原則ですが、訴訟費用を支払うことが難しい経済的困窮者が「訴訟上の救済」として裁判所に訴訟救助を申し立てることで、裁判費用の免除や猶予を受けることが出来ます。これは民事訴訟法第82条で定められており、同条第1項では「訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者に対しては、裁判所は、申立てにより、訴訟上の救助の決定をすることができる。ただし、勝訴の見込みがないとはいえないときに限る。」と規定しています。 条文にあるように「勝訴の見込みがないとはいえないとき」と条件があり、すべての申し立てが認められるとは言えませんが、訴訟費用の経済的負担の軽減となります。また、救済の対象となる費用は、裁判所に納める費用(訴状に貼る印紙など)で、弁護士費用は対象ではありません。 つまり、弁護士費用は法テラスによる援助、裁判所に係る費用は訴訟救助というように分かれており、両者で経済的に余裕がない方への訴訟費用の支援を行うという仕組みになっています。 訴訟上の救済制度についても、詳しくは法テラスで相談すると良いでしょう。
(3)その他の支援 紹介した支援制度の他に、市町村などの地方自治体が無料で法律相談センターを開催している場合があります。また、各地の弁護士会で独自に支援を行っている場合もあります。例えば弁護士会の法律相談では「クレジット・サラ金相談」についての相談料金を無料としています。
憲法第32条で保障している「裁判を受ける権利」を確保するため、経済的側面ではこのような支援制度があります。もしトラブルや困ったことに直面しても、生活保護を受けて経済的余裕がない、弁護士に相談したくても経済的に困窮している、などの理由で専門家への相談を諦めて自分ひとりで抱え込まないで下さい。法テラスをはじめとして、困っている人へのサポートを頼って下さい。
そして、必要であれば、勇気をもって理不尽な状況に声を上げ、一人で大組織相手に孤独に闘った女性行政書士の吉永藍先生や、「いのちのとりで裁判」の原告の方々のように、 正義を求め公正な司法の場で闘い判断を仰ぐ道もあるということ。経済的理由から、司法に判断を求めるという憲法でも保障された人としての権利を、決して諦めないでほしいと心から願っています。
ひとみキッチン♪Hitomi’s Kitchen
海鮮丼のつくりかた。How to make Sea-food rice bowl
①茶わんに白いご飯をよそって
Put white rice in the rice bowl.
②新鮮な刺身をのせて
Place fresh sashimi on top of the rice.
③みつばをのせて
Placing the Mitsuba (Japanese wild parsley)
④わざびをのせて、しょうゆを回したら出来上がり♪
Once you put on the wasabi and pour the soy sauce, it’s ready!
シェフは食材を切って並べるだけ。お好きにどうぞ。
The chef just cuts and arranges the ingredients. Please feel free to do as you like.
昼食の定番ナポリタン
寄せ鍋はそろそろお別れの春
切ってお鍋に入れるだけ。皆で調理しながら楽しい日本の食卓。
寒くなったら、またお鍋の出番