前回→町内会のおじさん

2.どんぶりPTA会計(1)

町内会のおじさんから私が頼まれてしまった重荷(PTA会計の裏事情の調査)のことを鈴木さんに相談すると、いとも快く引き受けてくれた。

関東よりはるかに高い大阪市のPTA会費については、私も疑問に思っていたから調べるよ、お母さんたちが子供のためにと捻出したお金がどう使われているか気になるもんね、と優しく言ってくれた。

いつも正義感に燃えている鈴木さんは、自分のことだけでなく常に他の人のことも考えていて、尊敬してしまう。

「アンケートの紙代ですら、ああ、あとプリンターのインク代と電気代もね!あはは。あれだって、役員の一存では支出できないって言ってたんだし、お金のことはさすがにちゃんとやっているとは思うけどね。

でも、その町内会の人が言ってた、行事のたびに学校に持っていくお祝い金って何だろうね。議員が学校にお金もっていくの?いいの、それ?で、そのお金がPTAの収入になるっていうのも、なんだか不思議。とにかく明日学校に行ってPTA会計を見せてもらえないか、教頭先生に聞いてくるよ。」

私は、まだ1歳の長男を連れて長時間学校へ行くことが億劫でもあり、鈴木さんの優しさに甘えて、任せることにした。

そして、その日の午後、約束通り夕方4時過ぎに娘の美香ちゃんと一緒にうちに来てくれた鈴木さんは、開口一番、

「聞いて、もう、ちょっと、びっくりなんだから!」

と、堰を切ったように話し始めた。

「教頭先生に、『PTAの会計記録を見せてもらえませんか?』って聞いたら、すごーく嫌そうな顔されちゃった。『なぜ、見たいと思うのですか?』って理由をしつこく聞いてくるんだよね。

でも、勝手に小川さんや町内会の方のことを話すのも悪いと思ったから、『私はPTA会費を支払っているので、どういうお金の使い方をされているか単純に知りたいんです』って答えたの。」

私の出したお茶を一口すすって、鈴木さんは話を続けた。

「そうしたら、教頭が校長に確認しに行ってくれて。で、PTA規約を確認してもらったのね。PTA会員なら、会計帳簿は、誰でも自由に閲覧することができるんだって。まあ、当たり前だけどね。

でも、コピーは取ったらいけないらしくて、何でだろうねぇ。で、小学校の会議室でなら、PTAの会計記録帳簿を確認してもいいですよってことになったの。

これまで、PTA会員で会計記録を閲覧した例はなかったみたい。みんな、無関心なのね。

まあ、見ようとも思わないのが普通なんだろうけど、毎月PTA会費払ってるのにね。やっぱ無関心は良くないわーって今回すごく思ったよ。」

そうだ、月700円のPTA会費は、火車状態のうちの家計にとっては、決して小さなことではなかった。

毎日10円でも安く食料品を買うために、数軒のスーパーをベビーカーに息子を乗せてはしごしていた。

この前入った近くの喫茶店で、ケーキが単品で700円もして、驚いたっけ・・・。飲み物がセット料金じゃなかったから、一番安いコーヒーでも1000円超えちゃう。

仕方なく、水とケーキだけ注文して、恥ずかしいしそそくさと食べてお店出たっけ・・・。

学校側が驚くのも、無理はなかったかもしれない。

何しろ、大阪市相手にエアコン設置を求める訴訟を起こした、鈴木さんである。

その鈴木さんが、PTAの会計記録を見たいと言い出したのだから。校長先生も教頭先生も、内心、びくびくしていたのかもしれない、と思うと私は不謹慎にも、ちょっと笑い出しそうになってしまった。

続き→どんぶりPTA会計(2)

※この連載は実話を元にしたフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。