「弁護士JP生活保護連載」 第63回記事 令和8年9月13日

私が、「いのちのとりで裁判」を縁の下の力持ちとして理論面から支え続けたフリージャーナリストの白井康彦氏と、大阪で初めてお会いしたのは、3年前の2023年春のことでした。

当時はまだ、原告側の連敗からようやく風向きが変わり始めたものの、勝訴と敗訴が入り混じる一進一退の厳しい局面でした。原告も支援者も心をすり減らし、世間はこの裁判の裏にある「国の不正」という真相を、まだほとんど知らなかった時期です。

そこから紆余曲折を経て、ついに2025年6月の最高裁での歴史的勝訴へと至ります。しかし白井氏は、その勝利に酔いしれることはありませんでした。 国に損害賠償を命じる画期的な判決を書いた元裁判官(竹内浩史氏)への取材を試みるなど、新聞社時代の退職金を投じてまで全国を飛び回り、今もなお真相を追及し続けています。

その執念の姿は、ジャーナリストとしての職業的使命感すら超えていました。「人としてどう生きるべきか」という深い感銘と、この社会に対する希望を与えてくれたのです。

弁護士JPニュース
不正な“生活保護費カット”、最高裁で「違法」認定→国が補填のため「1055億円」追加給付も…136万世帯が「1円も受け取れない」懸念

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不正な“生活保護費カット”、最高裁で「違法」認定→国が補填のため「1055億円」追加給付も…136万世帯が「1円も受け取れない」懸念

下記は、この弁護士JP/ヤフーニュース記事の元原稿です。厚労省に電話をした際の詳細も綴っています。

違法に削られた生活保護「1055億円」補正予算計上と、生活保護を卒業した人136万人超の真実

「裁判をする元気があるなら働け」生活保護をめぐるニュースが報じられるたび、インターネット上にはこうした冷ややかな批判がデフォルトのように並びます。

国を相手に戦い抜いた「いのちのとりで裁判」原告の多くは、障害や病気を抱え、高齢となり、既に「働きたくても働けない」状態に置かれた人々でした。11年という長すぎる法廷闘争の道半ばで、無念のうちに命を落とした原告も少なくありません。国による違法行為の真実を明らかにするため、残された力を振り絞って声を上げ続けた彼らのおかげで、歴史的な判決が確定したのです。

弱者の代表ともいえる生活保護受給者が、強者の代表ともいえる国相手に起こした裁判に勝ったのです。元来、お上寄りの裁判所でも看過できないほどの違法性があったからにほかなりません。

一昔前なら、大々的に連日報じられたような大事件なのに、この歴史的快挙をメディアがあまり大きく報じない中、国の根幹を揺るがす「異常事態」が現在進行形で起きています。しかし、後期高齢者も多い原告らは既に疲弊しており、自ら声を大にして世論を喚起する力は残されていないのが実情です。

生活保護費減額取消訴訟において、国が裁判で歴史的な大敗を喫しました。その結果、過去の生活保護利用者たちに対して、膨大なお金が追加支給、あるいは返還される事態になっています。国の予算として、今年度の補正予算に1055億円が組み込まれ、総額はおおよそ2000億円に上ると見込まれています。

政府側が自らの過ちを真摯に振り返り、国民に向けて検証プロセスを公開し、謝罪と説明を行うのが筋ですが、「敗訴したから金を払って終わらせよう」という事務的な態度が見え隠れします。

憂慮すべきは、この1055億円の追加給付の対象となる人の中に、「現在は生活保護を利用していない、過去の利用者(生活保護を卒業した方々)」が136万人規模で含まれているという事実です。彼らは、自ら行動しない限り、自分が対象者であることすら知らず、本来受け取るべきだった追加給付を逃してしまいます。

もはや高齢で声を上げることが困難となっている、戦い抜いた原告たちに代わり、この国に生きる私たち一人ひとりがバトンを受け取り、隠された事実を拡散して救済の輪を広げるための、「国民の自助努力」が今こそ不可欠なのです。

本稿では、この前代未聞の事態の裏にある「最悪の統計不正」の真相と、違法に削られた生活保護費の被害回復に向けた必須知識を、分かりやすく解説します。

厚労省へ問い合わせても阻まれるようになった経緯

国民がこの生活保護費の不当減額をめぐる2000億円規模の予算措置の真相を知るため、自力で情報を得るためには、想像以上に高いハードルがありました。

最高裁判決を踏まえた保護費の追加給付相談センターに、筆者が当初「一国民」として「今回の裁判結果を踏まえて、国がいくら支出するのか、また、保護を現在受けていないけれども支給対象になる人数を知りたい」と、8月5日問い合わせたところ、しばらく保留にされたのち「厚労省の代表電話番号を伝えるよう言われている」と案内されました。直通の番号を教えてほしいと伝えても、代表電話番号を伝えるように言われているとのこと。

教示された厚労省の代表電話番号(03-5253-1111)にかけると、案の定「内線番号を入力してください」との電子アナウンス。「苦情・ご意見の方は2を押してください」というアナウンスに従い2を押すと、「お繋ぎします。しばらくお待ちください」と流れたきり、延々と保留の音楽が鳴り続けました。一度目の電話は、ほかの用事もあり、時間的にここで断念せざるを得ませんでした。

長期戦を覚悟して挑んだ2度目の電話でも、「電話が大変混みあっているようです。このままお待ちになるか、しばらく経ってからおかけなおしください」というアナウンスが幾度となく繰り返されました。スピーカーにしたまま仕事をしていると、15分が経過した時点で、事務所のスタッフが「これ、保留中も電話代がかかってるんですかね?」と懸念を口にしました。

ようやく電話がつながったのは、20分に入ってからのことです。13年前の8月以降の保護費の基準引き下げに関わる国の出費の総額や、対象世帯数について確認したいと要件を伝えると、再び保留になりました。

「申し訳ありませんが、そうした質問には厚労省はお答えしていないとのことです。それでは失礼します。」

と、ようやくつながった厚労省の代表電話に応対した女性が切ろうとしたため、

「待ってください。国民として知る権利はないのですか?厚労省の担当部署の方と直接お話したいのですが」

と伝えても、「無理です。総額や世帯数のことは公表していないそうです。お繋ぎできません」の一点張り。

「私は生活保護の連載記事をヤフーニュースで書いているので、お話を聞きたかったのですが」と伝えると一転。

「確認しますので、もう少々お待ちください」

再度の保留音はそう長くなく、特別に厚労省の部署に繋いでもらえることになったのです。その後、対応してくれた社会・援護局保護課の担当者(中川さん・男性)からは、現在の予算と対象者の実態について明確な回答を得ることができました。

令和7年度の補正予算において、1475億円が「最高裁判決を踏まえた予算」として計上されており、その内訳として保護費の追加支給に「1055億円」が計上されているとのことでした。

追加給付の対象者については、おおよそ300万世帯とのこと。なお、国がHPに公表している被保護者調査によれば、現在保護を受けている世帯は164万1803世帯です。これも、職員の中川さんが調べながら教えてくれました。

「亡くなられた方は対象外とのことですが、この300万世帯のなかには既に亡くなられた過去の受給者は含まれていないのですか?」と尋ねると、長時間の保留の末、「結論として、既に亡くなられた方は含まれていない」との回答でした。そうすると、やはり生活保護をかつて受給していたけれど、現在は保護を受けていない「元利用者」の数は少なくとも136万人を越える計算になります。

ここには、非常に重要な事実が示されています。この実態について、元中日新聞記者であり、現在フリージャーナリストとして「いのちのとりで裁判」を理論面から支え続けてきた白井康彦氏(68)は、指摘します。

「保護を受けたら最後、もうずっと働かない人が多いのではないか」「生活保護受給者は怠けているだけ」こうした世間の冷ややかな批判が、いかに的外れであるかということです。この「136万世帯」という数字は、過去に病気や失業でやむを得ず生活保護を利用したものの、その後自助努力をして労働収入を確保して自立した人や、あるいは高齢となって若いときに働いて納めた老齢厚生年金を受けられるようになったことで制度を「卒業」した人が、これだけ多数存在するという明白な証拠なのです。

白井氏によれば、実際に「いのちのとりで裁判」の原告の中にも、老齢年金を受けられるようになったことで制度を「卒業」し、元利用者となった方々がいらっしゃるとのこと。

生活保護は怠けるための制度ではなく、一時的に困窮状態に至った国民が羽を休め、再び自立し、社会を支える側に回るためのセーフティーネットとして機能している何よりの証左です。

印象として、対応していただいた中川さんは非常に丁寧で、どんな質問にも真摯に答えてくれました。「HPに書いてあるから自分で確認しろ」と突き放すこともなく、調べて分かる範囲で誠実に教えてくださったことには丁重にお礼を伝えました。しかし、組織全体としての閉鎖的な体質には強い疑念を抱かざるを得ません。以前、私が行政書士になって間もない頃は、特に行政書士と名乗らずとも厚労省にこうした問い合わせがスムーズにできました。それが2024年の夏、エアコンの件で厚労省に見解を問いたいと連絡をした際には、「同様の問い合わせが多いから一律で繋がないことになった」と門前払いをされたのです。

こうした閉鎖的な対応が根底に流れる中で、一国民が疑問に思ったことを知ろうとしても、自力で情報を集めることがいかに困難であるか、伺い知れます。

なぜ国は負けたのか?

事の発端は、2013年にさかのぼります。当時の政権下において、国は「デフレで物価が下がっているのだから、生活保護費も下げるべきだ」という理屈を盾に取りました。そして、生活保護世帯の日常の生活費である「生活扶助」を、最大10%、平均して6.5%も大幅にカットするという過去最大規模の引き下げを強行したのです。

結果として、全国のおよそ96%の受給世帯が減額の対象となり、年間およそ670億円もの生活保護予算が圧縮されることになりました。生活保護受給者は、ただでさえギリギリの生活を送っているにもかかわらず、さらに食事や風呂の回数を減らし、交友関係を断つなど、苦しい生活をさらに締め付けられることになったのです。

これに対し、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する憲法25条に違反するとして、全国の受給者が国を相手取り立ち上がりました。これが「いのちのとりで裁判」と呼ばれる闘いのはじまりです。全国29の地域で、1000人を超える原告が結集し、国に対し基準引き下げの取消と損害賠償を求める前代未聞の大規模訴訟へと発展していきました。

法廷での死闘、最高裁での歴史的勝利

結果はどうだったか。巨大な国家権力を相手にしたこの裁判は、当初、原告側にとって厳しい闘いでした。2020年6月、名古屋地裁における最初の判決では、裁判所は「自民党の政策は国の財政事情や国民感情を踏まえたものだから問題ない」といった論理を展開し、原告側は敗訴しました。地裁と高裁の第一号判決は、科学的な検証を放棄したかのような内容で、原告たちに暗雲が立ち込めました。

しかし、2021年2月、大阪地裁で初の勝訴を勝ち取ると、風向きは少しずつ変わり始めます。特筆すべきは、国側が主導して書かせたかのような「コピペ判決」の存在が明るみに出たことです。信濃毎日新聞の報道などにより、福岡地裁、京都地裁、金沢地裁の判決文において、「NHK受信料」を「NHK受診料」と誤記する全く同じミスが発見されたのです。裁判官が独自の検討を行わず、国の代理人である訟務検事が作成したシナリオや他地裁の判決文を安易にコピー&ペーストしていた疑惑が浮上しました。国会でも追及され、不当判決の裏にあるずさんな実態が社会の知るところとなりました。

このコピペ判決問題以降、裁判所の姿勢にも変化が見え始めます。原告側の緻密な立証、特に学者や専門家による意見書が効果を発揮し、熊本地裁、東京地裁、横浜地裁など全国各地で国の引き下げを違法とする原告勝訴判決が相次ぐようになりました。2023年11月の名古屋高裁判決では、国に「少なくとも重大な過失」があり違法性が大きいとして、国に損害賠償を命じる画期的な判決までもが下されました。各地の裁判所が、国の行った計算が「専門的な知見から見て合理的とは言えない」と厳しく断罪し始めたのです。

下級審での勝訴が圧倒的に積みあがる中、ついに2025年6月27日、最高裁判所第三小法廷において、国の生活保護基準引き下げを明確に違法とする歴史的な勝訴判決が確定するに至りました。11年にも及ぶ過酷な闘いの末、司法が行政の暴走に歯止めをかけ、国民の尊厳を取り戻した瞬間でした。

物価偽装という過去最悪の統計不正

裁判所が国を厳しく断罪した最大の理由は、国が行った信じがたい統計不正でした。その中核にある「物価偽装」のからくりを暴き、原告側ブレーンとして歴史的勝訴への道筋をつけたのが、前述の白井氏です。長年の記者経験に裏打ちされた同氏の執念の追及により、国が生活保護費を引き下げるための口実として「デフレで物価が下がった」と主張した「3年間で4.78%の下落」という数字が完全なるでっちあげであることが丸裸にされていきました。

第一のからくりが、比較の基準となる年の設定です。国は計算の始点を、リーマンショック直前で原油価格などが歴史的に異常高騰していた「2008年」に設定しました。過去数十年で最も物価が高かった特殊な年と、その後の年を比較すれば、当然「物価が大きく下がった」ように見えます。

第二の、さらに悪質なからくりが、テレビやパソコンの価格下落の過大評価です。国が算出した4.78%という物価下落率のうち、なんとおよそ3%分がテレビとパソコンの値下がりによる影響でした。生活保護世帯は日々の食費にも事欠く状態であり、家電製品を買い替えたくてもその費用は容易に捻出できないのが実情です。それにもかかわらず、国は一般世帯の購入割合をそのまま当てはめたのです。

さらに、国は「パーシェ式」と呼ばれる、特定の条件下で著しい統計誤差を生み出す特殊な計算方式を密かに用いました。このパーシェ式は、普段はお蔵入りとなっているものです。通常使われる「ラスパイレス式」ではなくあえてパーシェ式を選ぶことで、テレビやパソコンの影響を異常なまでに増幅させたのです。物価指数計算の世界において、統計誤差が著しく大きくなることが分かっている方式をわざわざ選択する行為は、悪徳行為以外の何物でもありません。

「生活保護受給者が買えないテレビが安くなったから、生活費を削る。」これが、国家の論理でした。貧困世帯の物価下落率が、彼らが日頃買えない贅沢品の物価下落により劇的に下がるという構図は、科学的に完全に破綻しているものだったのです。

秘密裏に強行された、謎多き「2分の1処理」

統計不正は、これだけにとどまりません。さらに信じがたいのが「2分の1処理」と呼ばれる秘密工作です。

生活保護基準には、世帯の人数や年齢などに応じた基準額の歪みを直す「ゆがみ調整」という作業があります。国は低所得者の消費実態データを計算する際、生活保護世帯の消費が一般低所得世帯よりも下回っているというデータを導きだしました。本来であれば、専門家による社会保障審議会の部会で議論し、その差額を反映させるのが筋です。しかし厚労省の官僚たちは、差額をそのまま反映させず、何の統計学的根拠もなしに「エイヤッ」とばかりに「差額の2分の1だけを反映させる(=2分の1処理)」という謎の計算を強行したのです。部会の委員らには一切知らされませんでした。

なぜ厚労省は、数字を半分にしたのでしょうか。生活保護予算の大幅削減という政権の必達命題を達成するためには、単身高齢世帯などの基準額をどうしても減額に持ち込む必要がありました。本来の調整であれば、むしろ増額となるはずだった高齢世帯も、この2分の1処理によって強引に減額へと転落させられたのです。

国家の予算配分に例えるなら、防衛費を減らし、それ以外の予算を増やす方針だったものを、密かに「増減率を両方とも半分にする」と操作し、結果的に防衛費の削減率を小さく見せ、国民に還元されるはずの予算を大幅に削り取るようなものです。

これらは、国家が行う統計としてはこれまででも最悪レベルの不正であり、裁判所も「専門的な知見から見て合理的とは言えない」と断罪せざるを得なかったのです。

誰も検証しない責任逃れの官僚の欺瞞

裁判の中で不正の全容が明らかになるにつれ、国側の態度はさらに卑劣さを増していきました。当初、国会答弁などにおいて厚労省は、引き下げの目的を「物価が安くなったので、以前と同じ生活水準を維持するために必要な生活費を計算した」と、典型的な物価スライドの論理で説明していました。

しかし、裁判において自らが算出した物価下落率の異常性が暴かれ、正攻法では勝てないと悟るや否や、国側は突然その説明を翻しました。「一般世帯の消費はリーマンショック後に大きく落ち込んだが、生活保護基準は据え置かれていた。その不均衡を是正するためにデフレ調整を実施したのだ」と、後付けの全く異なる理由を持ち出してきたのです。

特定の行政手法を使った理由を後になってから言い換えるのは、行政訴訟における不誠実な禁じ手です。政府は、「証拠に基づく政策立案」を掲げていますが、その証拠となるはずの統計データを偽装し、それがばれそうになると政策目的そのものをすり替える。フェイクをフェイクで覆い隠す、ウソにウソを重ねる、悪政の極みと言わざるを得ません。

これほど巨大な国家規模の統計不正が行われ、1055億もの莫大な国費(税金)が事後処理として動くにもかかわらず、社会の反応は驚くほど静かです。

政権側が自らの過ち(統計の意図的改ざん)を真摯に振り返り、国民に向けて検証プロセスを公開し、謝罪と説明を行うのが筋ですが、その検証を怠っているので国民は真相を知らされないままです。

結果として、「なぜ1055億円もの予算が補正予算に組み込まれたのか?」という根本の理由がすっぽりと抜け落ちたまま、ただ事務的な手続きだけが進もうとしています。

最大の危機は、取り残される136万超の元利用者

最高裁での判決が確定し、国は違法に減額した保護費を追加支給、つまり返還することになりました。しかし、ここで最も重大な問題が発生しています。今回の違法な引き下げの「後処理(追加支給)」は、引き下げが行われていた期間に生活保護を利用していた人が対象となります。

現在も継続して生活保護を受給している人に対しては、比較的スムーズに自治体から案内がいき、支給が行われるでしょう。問題は、「当時は生活保護を利用していたが、今は自立するなどして生活保護を抜けた人」です。その数は、全国でおおよそ136万人規模にのぼると推定されます。実際に記事執筆に当たり筆者が厚労省に確認したところ、最低でも136万超の「世帯」がここに該当することが判明しました。

この最低でも136万人超の方々には、待っていてもお金は振り込まれません。対象者自身が「自ら申請」しなければならないのです。

引越しをして自治体に現在の住所を把握されていない人も多いでしょう。日々の生活に追われ、ニュースを見る余裕すらない人もいるはずです。本来であれば、国が予算を投じてテレビやCMや新聞広告、あらゆる方法で謝罪と周知を行うべき事態です。このままでは、自分が対象者であることすら知らず、本来受け取るべきだった追加給付を逃してしまう人が大量に発生するでしょう。だからこそ、この事実の分かりやすい徹底的な周知が、今どうしても必要なのです。

奪われた権利を取り戻すために

それでは、具体的に「誰が」「どの期間」対象になるのでしょうか。ご自身、あるいはご家族や知人が当てはまっていないか、必ず確認してください。なお、大前提として、亡くなった方は対象外です。現在生存している方が対象となります。現在、生活保護を打ち切られている・廃止されている方も、対象期間に受給していれば対象です。

対象となるのは、主に以下の2つの期間と条件に当てはまる方々です。

① 2013年(平成25年)8月 〜 2018年(平成30年)9月

この期間に「生活保護を受給していたかどうか」が問われます。 この期間内に1ヶ月でも生活保護を受給していた人は、追加支給の対象となる可能性が高いです。

② 2018年(平成30年)10月 〜 2026年(令和8年)3月まで

この期間については条件が変わります。「生活保護を受給した人の中で、障害者加算など、何らかの『加算』がついていた人」が対象となります。(※母子加算なども含まれるケースがあります。とにかく何らかの加算があった人です)。

③ 12月の「おもち代(期末一時扶助)」の計算

生活保護世帯には、年末に「期末一時扶助(通称:おもち代)」という一時金が支給されます。これも過去に不当に減額されていたため、このおもち代が算定されていた世帯に対しては、不足分の追加給付が行われます。

これらの期間、保護費が不当にカットされていたわけですから、数年分が蓄積されれば、人によってはまとまった金額の返還となります。もし「自分は対象かもしれない」「親族が当時生活保護を受けていた」という場合は、放置せずにすぐに行動を起こしてください。

まず行うべきは、国のコールセンターへの電話です。国(厚生労働省)は、今年の3月30日から専用の電話相談センターを開設しています。 ネットで「最高裁判決を踏まえた保護費の追加支給相談センター」と検索してください。厚生労働省の公式ページが出てきて、詳細な条件や専用のフリーダイヤルが記載されています。 「自分の過去の受給期間で、加算の有無はどうだったか」「いくらもらえるのか」などの疑問を直接確認することができます。

そして、実際に手続きを行うのは、各自治体の「福祉事務所(市役所・区役所などの生活支援課など)」です。 給付のスケジュールは各自治体によって異なりますが、すでに4月から順次、手続きと支払いが始まっています。 過去に生活保護を受けていた際の担当福祉事務所に連絡し、「追加支給の申請手続きをしたい」と伝えてください。引越しをしている場合は、当時の住所を管轄していた福祉事務所への確認が必要です。

これは「あなたの権利」です

「生活保護の話なんて自分には関係ない」と思う人もいるかもしれません。 しかし、この問題の本質は「国が都合のいいように公的統計を偽装し、国民の生存権を削り取った」という国家権力の暴走です。生活保護基準は、私たちの社会のセーフティネットの底辺を定めるものです。この基準が下がれば、それに連動して住民税の非課税限度額が下がり、就学援助が打ち切られ、さらには最低賃金の決定にも悪影響を及ぼします。これは日本国民全員に関わる問題なのです。

そして何より、136万人超もの人々が、国の不正によって奪われたお金を取り戻す権利があるのに、それを知らされずに放置されようとしています。

あなたの身近にも、過去に病気や失業で一時的に生活保護を利用し、その後必死に自立したり、年金で生活を維持しながら物価高を生き抜いている人がいるかもしれません。その人たちにとって、この追加支給は生活の支えになります。

政権が検証を怠り、周知をサボるのなら、私たち市民の力で情報を広め、対象者全員に当然の権利を届けましょう。申請しなければ、1円も戻ってきません。今すぐ確認と手続きを進めてください。