PTA非加入の決意
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PTA非加入の決意
2015年4月
「ただいま~。」
「おかえり、愛子ちゃん。」
中学生になった娘の愛子は、帰宅早々カバンをおろしながら私に話しかけてきた。

「ママ、今日先生が、PTAのお金の紙、出してーって、皆に言ってたよ。」
「ああ、PTAね・・・。ママ、中学校ではPTAには入らないつもりなんだよね。だから、先生にはお手紙を書いておくね。明日、先生に渡してくれる?聞かれたら、お母さんはPTAには加入今年はしないようです、何かあればお母さんに直接連絡してくださいって言ってくれたらいいから。」
娘の愛子は、一瞬ぽかんと、まあるく口を開け、息を呑んだ。
「えっ・・・。あぁっ、前に美香ちゃんのお母さんが言ってたやつか!でも、あれってダメみたいだよ。本当はPTA入らないといけないのに、美香ちゃんのお母さんはPTA会費を払わないから悪い人だ、ってみんな言ってたもん。」
「そんなことないんだよ。PTAは、入会するのも、退会するのも、お父さんお母さんの自由なの、本当はね。これを任意加入の私的団体っていうの!だから、いくらPTA会費を払う払わないとか、任意団体にお金を出すのかも個人の自由。任意団体ということを盾にして、学校や教育委員会も、PTAで何か問題があっても何もしてくれないんだよ。警察が、民事不介入ですってするのと同じような感じね。」
娘は、またポカンとした顔をして固まっている。それもそうだろう。
突如として、温厚で平凡な母が、これまで口に出したことなどなかったことを、初めて娘の前で言ったのだ。
娘が小学生の間は、周りのお母さん方の目を気にして、言いたいことを言えなかった。
そして、何より、大切な友達だった鈴木さんにもひどいことをしてしまった。
これからは、もう変わるんだ。
自分のためにも、子どもの未来のためにも、言うべきことは、言う。
やるべきことは、やらなくては。そう、鈴木さんや宮田さんのように。
もう、何年経つだろうか・・・。
私の名前は小川絵里子。
東京から大阪に引っ越してきて、子どもが2人いる。
昔は引っ込み思案でおとなしい、ごく平凡な家庭の主婦だった。
周囲の目をいつもどこか、気にしていた。
すべてを心の奥にしまい込んでいた。
この連載は実話を元にしたフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


