兵庫県宝塚市が、今年2019年4月から公文書(こうぶんしょ:国や地方公共団体の役所や公務員が職務上作成する文書のこと)については「障がい」と「障害」という表現を使わなくなったことをご存知ですか?

宝塚市での取扱い

行政書士法人ひとみ綜合法務事務所の本拠地である大阪のお隣、兵庫県。

宝塚市にお住まいの方からのご相談も非常に多いので、役所に提出する書類を作成することが仕事の行政書士の私たちにとっては、身近で大事なことなのです。

朝日新聞や毎日新聞といった大手メディアも大々的に報じたので、もうご存知の方も多いかもしれませんね。「障がい」ではなく「障碍(しょうがい)」と表記することになったのです。実際、宝塚市のホームページでは既に障碍という記載が見受けられます。

正しい表記は?

でもこの宝塚市のホームページ、中身を見るとすぐに、「障害」という一般的な表現もたくさん記載されていることに気付きます。

法律の文言や公文書には通常、常用漢字が使われます。「碍」という字は普段あまり出番もなく、「妨げる」といった意味もあるため、この常用漢字表に含まれていないのです。そのため、「障害者総合支援法」など、宝塚市のホームページには今も「障害」という表現が散見されるわけなのです。

でも、これでは見ている人が混乱してしまうでしょう。結局正しいのは、障がい者?障害者?障碍者?どれなの?と。

「正解は、ない」

タイトルの問いかけへの正解は、今のところ「ない」のが実情です。

もちろん、宝塚市は「障碍」の方が「障害」よりも適切と判断したから選択したわけで、個々に正解というのはあるでしょうけれども、この「障がい・害・碍」いずれが使用されるべきかについて、社会一般的に統一された見解は、まだないということです。

ちなみに、宝塚市の中川智子市長は今年2月の市議会において、市の判断で変えられるものは「障がい(これまでは平仮名交じりの表記だったようです)」から「障碍」に変更することを表明しています。

でも、今もやはり宝塚市のホームページには障害、障碍の文字が混在しているので、法律や固有名詞など宝塚市独自には変えられないものも多いことがわかります。

2010年にも議論されていた

2020年の東京パラリンピックに向けて、国会の衆議院と参議院は昨年、法律で「障碍」表記ができるように「碍」を常用漢字表に加えることを求める決議をしました。

ここ、注意です。
国会において、常用漢字表に「碍」を含める決議をしたのではなく、あくまでも常用漢字について話し合う文化審議会に国会として「意見する」決議をしたということです。

決定権のある文化審議会国語分科会は昨年11月、「碍を常用漢字表に含めることについては、相応の審議が必要」として結論を先送り・・・というと言葉が悪いですね。私も、これは十分な議論が必要なことだと思うので、時間をかけることに賛成です。

もともと、2010年の常用漢字表改定の際にも議論された、「碍」。

このときは、「社会全体が、(障害という文字の中の)害が嫌だという気持ちを重視する観点から『障碍』を使うという合意ができれば、常用漢字に入れるか改めて検討される」と、当時の文化庁の主任国語調査官は説明していました。

毎日新聞のアンケートによると

それから、9年。毎日新聞の校閲センターが昨春行ったアンケートによると、結果はこうでした。

Q. 『しょうがいしゃ』をどう表記するか?

A. 
障がい者  ・・・ 43.4%
障害者   ・・・ 31.1%
障碍者   ・・・ 10.8%
こだわらない・・・ 14.7%

この結果を見ても、「障害」よりも「障碍」に社会全体の風潮が傾いているようには見えません。

しかもこのアンケートは、街中などで行われたものではなく、毎日新聞の公式ホームページの「毎日ことば」というコーナーにおけるもの。つまり、もともと言葉の使い方に関心のある人を対象としたアンケートでも、「障碍者」を選んだ人は1割程度だったのです。

やはり「障碍者」という表記が、「障害者」「障がい者」よりも一般的になることは、少なくとも近い将来にはないでしょう。

「悪い状態」という意味の「害」を使うと、嫌な思いをする人が多いのではないか?という意見。
いやいや、日常的に使われる漢字ではない「碍」を使われることで、疎外感を感じる人もいるようです。

アンケートで多かった「障がい」は、音読みする熟語をカナ交じりで書く混ぜ書きで、読みにくく見た目にも良くないと考える人もいます。

しょうがいしゃ、という呼称自体を別の言葉に変更することも以前から議論されています。

考え始めるきっかけになれば

いずれにしても、何となくのイメージで言葉の使い方がフラフラしてしまうと、社会的混乱の要因になります。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに、社会全体で納得できる合致点が見出せるといいのですが、ちょっと難しいかもしれませんね。

行政書士法人ひとみ綜合法務事務所のこのブログを読んだ方が身近なこととして、このことを考えるきっかけにしていただければ幸いです。