どんぶりPTA会計(3)

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どんぶりPTA会計(3)

「ええっ、もう嫌というほど驚いたのに、まだあるんですかあ?」

「そうなのよ。市議会議員や町内会が祝儀袋に包んで公立小学校に持ってくる、毎年10万円を超える金額はPTAじゃなくて学校の財布に入ってる、ここまでは説明したでしょ?

これだけなら、PTAは関係ない、あ、町内会のおじさんはPTAにお金を持っていってるって認識だったとは思うけど、法的な話ね。

でもね、私たちの支払ったPTA会費から、そうやって学校にお金を持ってきた来賓客の手土産代を支出しているの。その額、年に何度もある行事のたび、1回ごと、数万円!
運動会で、生徒は薄いノート一冊もらうだけでしょ?

1冊50円にしたって、児童700人でPTA会費からの支出は3万円ちょっと。その何倍ものお金が、来賓客へのお土産代にもう何年だかわからないくらい、ずうっと出費されてるっていうわけ。

何とも一般の保護者を馬鹿にした、理不尽な話。PTA会費を支払っている家庭に還元せず、高収入の政治家に高額の手みやげをPTA会費から用意してたってことね。義務教育の場でね。」

「えっ、どういうことですか?子どもたちのためだと思って払っていたPTA会費で、大人の手土産って、ちょっともう、想像つきません。数万円もするお土産って何なんでしょう?」

「私だって、わからないわよ~。手土産代、としか領収書に記載されていないしね。それにね、学校長、教頭、PTA役員が参加する年に数回の会合では、料亭での食事代に一人6千円の支出がされてるの。」

「えっ、そんなことにPTA会費って使われていたんですか?夜の飲食費ですよね?1人6千円の食事って、プライベートでもなかなかないですよ・・・。子どものことに使われてると思って、毎月のPTA会費、うちはちょっときついなと思いながらも払っていたのに、なんだかもう、ただびっくりです。」

「そうでしょ?私だって、それは同じ。みんなこの真相を知れば、驚くと思うよ。まだまだあるの。成人教育といった名目で、毎年PTA会員60人くらいが参加する宝塚観劇、サーカス観劇、ホテルランチがあるんだけど。」

「ああ、そういえば去年も何だかシルクドソレイユを見に行くっていう案内が配られていましたね。子ども連れ不可、って書いてあったから、赤ちゃんがいるうちは行けないなって思いましたけど。」

「そうそう、うちも、要介護5の身内がいるんだけどね。身体が不自由な身内を置いて、自分だけ優雅に宝塚観劇なんてできないしね。でもね、あれって全額自腹じゃなくて半分以上がPTA会費から出てるのね。例年、参加者1人あたり約4千円の補助がPTA会費から支出されてる。」

「えーっ1人4千円の補助が60人分って、すごい金額なんじゃないですか?平日、子どもを置いてホテルランチや宝塚観劇できる人って、このご時世どこぞのマダム?一部の限られた専業主婦だけですよね。お金持ちの人たちだけ、毎年そんなにPTA会費から恩恵を受けるなんて、なんだか不公平じゃないですか?」

「そうでしょ?さらにね、それだけじゃないのよ~!!」

「もう、鈴木さんたらー。もったいつけずに教えてくださいよ。気になりますって。」

1トーン低く声を落とした鈴木さんは、
「あのね、その観劇やホテルランチの「下見」と称して、PTA役員とか代表者が多人数で、事前に同じホテルでランチをして、全員の食事代にアフタヌーンティー代、あっ『アフタヌーンティー代』ってそのまま領収書に書かれていたことを言ってるんだけどね。

しゃれた言い方よね、ケーキと飲み物のセットでしょう。それから、全員分の交通費が全額、PTA会費から支出されてるの。」

「えっちょっと待ってくださいね。そもそも、下見って10人で行く必要があるんですか?オリンピックの視察じゃあるまいし・・・。

それで、ホテルランチして、ケーキとお茶までする必要があるんですか?自腹ならともかく、保護者の皆さんが支払ったPTA会費から支出されるって、おかしくないですか?

じゃあ、その10人は、PTA会費で、平日昼間にタダで他県に行って、飲み食いしたっていうことですよね?高いホテルのレストランと喫茶店で。」

「おかしいと思うわよ~だから、私も驚いちゃってるの。あっ、ごめんなさい。もう愛子がバレエ教室から帰ってくる時間だわ。今日はこの辺で失礼するね。お茶、ありがとう。」

そう言って、慌ただしく鈴木さんが帰った後、私はしばらくぼーっとリビングのソファに身をゆだねていた。

1歳になった息子の博人は、今は寝ていてくれるから、しばらくはゆっくりできると思った。でも、しばらくしたら、夕食の準備に取り掛からないといけない。

こんな日常に追われていると、PTA会計の収支がどうなっているかなど正直疑問に思う暇もない。

ふとしたことから、鈴木さんを巻き込んで、こんなPTA会計の闇を知ってしまったけれど、私はなんだか不穏な感情を抱いていた。

正義感の強い鈴木さんのことだから、またこのことがきっかけで、真相を追求してしまうのではないか、そしてまた鈴木さんが、理不尽な目に遭うのではないかと思えてならなかったのだ。

愛子ちゃんは、毎日学校でいじめられているようで、かわいそうでならなかった。万引きをしたなんて噂まで児童の間で飛び交ってるらしいし・・・。

「鈴木さん、子育てに加えて介護もあったなんて・・・。やっぱり、余計なことを頼まなければよかったのかもしれない。」

一人になった途端、急激にそんな後悔の念が募ってきた。

続き→鈴木さんの秘密

※この連載は実話を元にしたフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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