生活保護受給者が多数暮らす自立支援住宅での火災事故を受けて
北海道札幌市にある、生活保護受給者の方も多く暮らしていた自立支援住宅で先日火災が起こり、多数の死者を出したことは記憶に新しいでしょう。
こうした生活困窮者の方々が入居する施設の劣悪な環境を私は知っていただけに、「まさか」ではなく「やっぱり」と思いました。
住む場所がない人たちからのSOS
「仕事を失って家賃を払えなくなって追い出され、今公園で寝泊まりしています!」
「家を失ってから、ずっと友人や知人の家を転々としています」
行政書士法人ひとみ綜合法務事務所には、ほぼ毎日、このような方々からの電話がかかってきます。
携帯電話も既に止まっているのでメールやLINEでやり取りさせてほしいという方が公衆電話からかけてきたり、今すぐ事務所に相談に行っていいですか?助けてください!といった緊急度の高いSOSも週に何件かあります。
安定した住居のない状態でご自分で役所に生活保護相談に行っても、なんだかんだと門前払いされてしまったという方がどれだけ多いことでしょう。役所の方は親身になって話を聞いてくれるわけでもなく、ハローワークを案内されたり、中には警察を呼ばれてしまった方もいました。
役所の方から、
「生活困窮者の自立支援住宅に入らないと保護を受けさせない」
と言われた方からの相談も、これまで多く受けてきました。
憲法において居住移転の自由(第22条)と最低生活の保障(第25条)がされているので、生活に困っている人が「施設に入らないと生活保護を受けられない」ということは本来ないはずなのです。
しかし、特に地方などの役所の生活保護相談窓口では、安定した住居がない方に対して支援住宅に入ることがあたかも生活保護受給の要件であるかのような説明をするケースも少なくないようです。
支援住宅に紛れ込む貧困ビジネス
その支援住宅を運営する要件はさほど厳しくないため、利益目的で新規参入する民間事業者も実は多いのです。大阪府内には、生活保護受給者に食事などを提供する施設住宅は約250軒程度ありますが、食事提供などのない共同住宅にはそもそも届け出義務はありません。
また食事提供する行政届出済みの施設でも、劣悪な住環境と粗末な食事しか提供せず、生活保護受給者の方の生活保護費の大半を業者が持っていってしまうというケースも多く目にしてきました。いわゆる「囲い屋」・「貧困ビジネス」の温床となっているのです。
そうした施設に入居する生活保護受給者の方々の多くが口にするのは、
「就職活動をしたくても、生活保護費で支給される金額のほとんどを施設が持っていくので交通費さえ捻出できない」
といった、国や行政が後押しする「自立支援」と矛盾する悩みです。月に手元に残るお金が5,000円~10,000円となると、就職活動が思うようにできないという悩みが決して誇張ではないことがわかるのではないでしょうか。
今回の火災事故から読み取れる現実
今回、死亡者11人のうちのほとんどが生活保護受給者という共同施設での火災事故の背景には、日本の困窮者支援の矛盾があると私は見ています。困窮者を支援する善良な団体や施設運営者であっても、十分に公的補助金を受けていないケースが多いです。
そのため、自ら資金を調達して活動するため、古くて狭い劣悪な建物を活用せざるをえなかったり、人件費を確保するため生活保護受給者の方から徴収する金額を上げざるを得ないという現実も隠れています。
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