行政書士の三木ひとみです。前回のブログの続きです。

8月22日(木)、この日何らかの形でご本人の安否確認が取れなければ、行政書士から警察、消防へ緊急通報することの承諾を、事前にご家族様にはいただきました。

前日同様、行政書士の私、三木がご自宅マンションへ行きましたが、やはり応答はありません。家賃もわりと高額、防音もしっかりしたマンションなので、外から様子は伺い知れません。チャイムの音は切られているようで反応しないので、ドアを叩いて大きな声で自分の名を名乗りましたが、反応はありません。ポストを覗くと、前日私が入れた手紙が、そのままになっています。

もはや、一刻の猶予もないと判断し、1、1、0、発信と、スマートフォンの画面操作。ここ一週間ほど安否確認ができていないこと、収入も資産もマイナスしかなく食糧を買うお金もないであろうことを伝えている途中に、電話口の対応職員の方は、わかりました!すぐ向かわせますと迅速な回答。
これまでにも仕事上、110番通報をせざるを得ないことは少なからずありましたが、緊急性がそれほど高くないと判断されたのか、お廻りさんが自転車で来られるケースが殆どでした。でも、この日の様相は全く違ったのです。

遠くから鳴り響くサイレンの音。パトカーではなく、赤い消防車が連なってやってくるのが反対車線に見えました。火事があったのかと思いきや、こちらへUターンして赤信号でも止まらない消防車はあっという間に到着しました。

私など目に入らないかのごとく、
「何号室ですか!」
「☆〇!!!」
と状況確認するやいなや、大声で名前を呼びながら目的の部屋のドアをドンドン叩き続ける消防隊員。普段民泊関連の仕事で消防署に行くことも多く、消防隊員の方々と接する機会はたくさんあります。しかしこのときばかりは、申請手続きをしているときとは全く雰囲気が違いました。

もしかしたら中で人が亡くなっているかもしれない状況。
1秒でもはやく部屋に入ることが出来れば助かる命かもしれない。緊張感の中、テキパキと動く隊員の方々の姿は本当に頼りがいがあり、ああ、役所というのはこうやって何か起きたときには市民を守っているのだなと感じさせてくれるに十分な動きでした。

しかし、それだけ呼んでも部屋の中からは反応がありません。この夏の暑さの中、ひょっとして中ではもう倒れて動けなくなっているのかも・・・といういやな予感も頭をよぎります。

ドア越しに呼んでも反応なしとみた消防隊員は、迅速に別の手段に移ります。
今度は、隣の部屋のドアの前に行き、隣部屋の住人を呼び出しました。先ほどからの騒ぎでこのマンションの前には消防車やパトカーが何台も止まり、消防隊員・警察官入り乱れて大勢の人が廊下に溢れています。

さすがにこの騒ぎの中、尋常ではない雰囲気を感じ取ったのか、隣の住人女性は慌てた様子すぐにドアを開けてくれました。ドアが開いた瞬間に問いかけを大きな声で始める多数の消防隊員とサイレンの音に、隣人女性は非常に驚いた様子で、ハッと息を呑んで口元を押さえていました。躊躇せず隣の部屋に駆け込む消防隊員。どうやら隣の部屋の窓伝いに、目的の部屋へ行き、窓を破り割って侵入する様子。あまりの手際の良さに、尊敬の念しか浮かびません。

すると、このタイミングで突如目的の部屋のドアが開いたのです!なんと、タラさん本人が飄々と中から出てきました。これまで何回も訪問して、あれだけ呼んでも置手紙をしても反応がなかったのに、なんで?という疑問とともに、とりあえず無事でよかったというほっとした気持ち。複雑な感情が入り混じります。

ともあれ、ようやくタラさん本人とコンタクトがとれたので、早速事情を聞いてみます。
しかし、なかなか話が噛み合いません。どうやら認知症の症状が進んでいるらしく、意思の疎通がかなり難しい様子です。

ただ、心配していた、飢えや暑さで倒れているのでは?という状態ではなく、身体的には大丈夫(かなりやせ細ってはいましたが)のようです。
駆け付けていただいた警察官や消防隊員の方々も、事件性があったり緊急で病院に運ばなければ・・・という状態ではないという判断になり、本人との対応を私に引き継ぎ、撤収準備に入っていきました。
「行政書士さん、あとは頼みますよ。」
という言葉を残して・・・・。

さて、ここからは行政書士の出番。
本人と話をし、今後の対応策を検討していきます。しかし、認知症の影響で、話が支離滅裂になる部分も多く、うまく話が進みません。

収入もなく、困窮状態にあるのは確か。ところが生活について聞いてみると収入はあると言い張ります。そこで何の収入があるのか確認してみても、男性がいて援助をしてもらっているの(とてもその様子は伺えません)、(亡くなったはずの)お父さんの年金があるから(ないことは確認しています)、要領を得ない答えばかり返ってきます。やせ細ったその身体から、栄養状況が良くない・食事もきちんと出来ていないのは誰が見てもわかります。

よくよく聞いてみると、どうやら行政書士法人ひとみ綜合法務事務所が連日大阪市へ公益通報を続けた結果、昨日役所も自宅訪問をしていたようです。しかし、役所の人が訪ねて来てもタラさんは、部屋からでなかったとのこと。

さすがに本人に会えない、生活の様子も確認できないでは、生活に困窮していながらも、生活保護を受けることは困難です。そのあたりの説明を根気強く続け、ようやく本人にも生活保護申請後の手続きに協力しなければならないことを理解してもらえました。

この日無事が確認できたことは、ご家族にその場からすぐに連絡を入れ、ご報告。
ご家族様も、この夏の暑い日が続く中、連絡が取れないことを内心かなり心配されていたので、無事にタラさんご本人と会えたことを伝えると、ほっとしたご様子でした。

そして後日、行政書士も家庭訪問に立会い、順調に生活保護審査は進み、タラさんは現在、安心した生活を送っていらっしゃいます。命は他に代えられない、かけがえのないもの。一瞬の判断の誤りで、その尊い命が失われることのないよう、生活保護行政に携わる職員の方には肝に銘じてほしいと願います。