前代未聞【特定行政書士作成の生活保護申請書の返送】をした佐賀県唐津福祉事務所
行政書士法人ひとみ綜合法務事務所で生活保護相談を担当している、行政書士の三木です。これまでに数千件を超える生活保護相談に対応、申請や受給をサポートしてきました。
今日は、驚くべき前代未聞の対応をしてきた役所がありました。今後このような不適切な対応により一般市民の方が不利益を被ることのないよう、お客様の了承のもと、役所名と事実をここに公表します。
目次
【事実関係】
【該当の役所名】佐賀県唐津福祉事務所 電話番号:0955-72-9153
当行政書士法人が作成した生活保護開始申請書を3月6日に佐賀県唐津福祉事務所に提出。その後役所とのやりとりにより、3月6日が申請受理日であるとの確認を行いました。
ところが。
(1)
3月6日にいったん受理したと行政書士に告げた『生活保護開始申請書』を、3日後に無連絡のまま簡易書留で行政書士法人ひとみ綜合法務事務所に返送。
(2)
申請者であるお客様が役所に抗議するも聞き入れられず、受理はしないとの回答。
(3)
3月12日(本日)、当行政書士法人が佐賀県唐津福祉事務所の担当・岡本氏に事実確認の連絡を入れたところ、やはり受理はしないとの回答。
(4)
3月12日(同日)福祉事務所の申請書返送は生活保護法違反と思われるため、上級行政庁に書面による苦情申し入れをする旨を告げると態度が一変、再度検討するとの返答。
(5)
3月12日(同日)佐賀県唐津福祉事務所の返答を待たず、当行政書士法人が佐賀県庁に苦情申し入れ。唐津福祉事務所の対応が適法であるかについて、書面での回答を求めた。
(6)
3月12日(同日)、唐津福祉事務所よりすぐに当行政書士法人に連絡があり、一転。受理は当初の予定通り3月6日にさかのぼるとの回答。当行政書士法人に返送してしまった生活保護開始申請書は、再送してくれたらきちんと扱うとのこと。
(7)
3月12日(同日)、返送されてきたお客様の生活保護開始申請書を確認し、唐津福祉事務所に再送した。
熊本に住む息子さんが申請者となり佐賀県に住むお母様の生活保護申請をした案件
まず、依頼者は昨年私が生活保護申請のサポートをさせていただいた、熊本県在住のHさん。病気のため働けなくなり生活に困窮したHさんは、熊本の役所に生活保護相談に自ら行くも、仕事を持つ女性と当時同居していたため門前払いをされました。
そして、当事務所で再申請を行い、無事に生活保護が決定。女性宅からの引越費用も役所に出してもらって、安心して暮らせるようになりました。
Hさんは私が今の行政書士法人ひとみ綜合法務事務所とは別の行政書士事務所に所属していた頃の依頼者様ですが、私に直接また担当してほしいとのことで、ひとみ綜合法務事務所に再度ご連絡いただいたのが先月。今回は、佐賀県にお住まいの高齢のお母様が生活保護を受けられるようにサポートしてほしいとのことでした。
生活保護申請が一度は受理される
Hさんとお母様双方からお電話でお話をお聞きして生活保護申請書を私が作成し、郵送でご本人のご署名ご捺印をいただいた生活保護申請書を佐賀県唐津福祉事務所に私が提出したのが、3月6日。
同日に役所の担当者と私は、「3月6日が受理日であること」の確認をしました。この生活保護申請の受理日というのはとても重要で、審査終了後に生活保護が決定すれば、この受理日にさかのぼって生活保護が開始されます。
生活保護費としてもらえるお金もこの受理日にさかのぼって支給されますし、受理日以降に病院にかかった分については、基本的に自己負担がなくなり払った診察代や薬代が返ってくるのです。
そして、この生活保護申請の受理は、役所に本人の「生活保護を申請する」という意思表示が到達した時点でしなければいけないと法令上されています。
(申請に対する審査、応答)
第七条 行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。行政手続法 第7条
(申請による保護の開始及び変更)
第二四条 保護の開始を申請する者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を保護の実施機関に提出しなければならない。ただし、当該申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りでない。<略>
生活保護法 第24条
ところが申請日から3日後。
一度受理されたはずのこの申請が、突然「受理しない」という扱いに変わり、当法人宛に発送(返送)されました(こちらに到着したのは3月12日)。
「申請を受理しない」はありえない
生活保護を受けたくて役所に行ったのに、ハローワークに行かされた、貸付金を受けなさいと社会福祉協議会に回された、など門前払いをされたという話はネット上にゴロゴロ転がっています。
が、これは私共からすれば、行政の怠慢。
口頭であろうと書面であろうと、ご本人の生活保護を受けたいという意思が確認されたのであれば、役所は受理して審査を開始しなければいけないのです(受理=決定ではないので、法令に基づいた所定の審査は受けなければいけません)。
当行政書士法人が生活保護申請をサポートする場合、申請は役所に必ず受理してもらいます。
また、私共特定行政書士が生活保護申請書を作成し、それが提出受理された場合は、不服申立ての代理権が生じます。口頭・書面問わず受理をしなければいけない原則とは別に、特定行政書士が作成した申請書を受理してもらう意義も大きいのです。そして、これは当然のお客様の権利であって、役所が書面受領の拒否をする権利などないのです。
にもかかわらず、です。
恥を知るべきは、法令に反してお客様直筆の署名捺印がされた、特定行政書士作成の生活保護申請書を送り返してきた佐賀県唐津福祉事務所でしょう。
抗議した結果、生活保護申請書はさかのぼって受理するという結果に
申請者である依頼人より3月12日の月曜日に連絡を受け、当行政書士法人では事実関係を確認するためにすぐに唐津福祉事務所へ電話をしました。
しかし、最初は「受理しない」の1点張りで対応を変えようとしません。
そこでこの扱いは法令に照らし合わせて明らかにおかしいことを強く説明し、さらに上級行政庁に対し書面による苦情申し入れをする旨を告げると、ようやく役所内部で再度検討するという姿勢に変わりました。
そして今度は唐津福祉事務所の再検討の回答を待つ間に、佐賀県庁に対し苦情を申し入れ、この件に関する書面による回答を求めました。
その結果。
ブログ冒頭の【事実】の通り、唐津福祉事務所は一転して、私たちが作成した生活保護申請書を当初の提出日にさかのぼって受理することとしました。しかし、証拠写真の通り、唐津福祉事務所は郵便料金の高額な簡易書留で私共の事務所にいったんは返送してきているのです。
これが税金の無駄遣いではなくて、何なのでしょうか。
しかし、残念ながら、このような生活保護申請窓口の担当者レベルの無知が原因で、不利益を被る一般市民の方は沢山いらっしゃいます。私共も、何度ケースワーカーの不適切な言動に驚かされたことか、わかりません。
とはいえ、私共特定行政書士が作成提出した生活保護開始申請書を受理せず(正確にはいったん受理したと言ったわけですがその後拒否)、返送してきた福祉事務所は前代未聞。
長らく生活保護申請サポートに携わってきた行政書士として、また新たな役所仕事の大きな穴を確認し、あらためて特定行政書士として、この生活保護サポートという仕事の社会的意義を実感せざるを得ませんでした。
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