先週、長野にお住いのお客様ご夫婦から産地直送のりんごが届きました。お身内の生活保護申請を当事務所にご依頼いただいたのはもう数年前のこと。

そのご家族様もお亡くなりになったのですが、今でも季節ごとに果物をお送りくださるので、スタッフ一同恐縮しつつもありがたく美味しいフルーツをいただいています。

昨夜は、女性のお客様から素敵なクリスマスカードが行政書士法人ひとみ綜合法務事務所のポストに届きました。

日々全国から寄せられる、切羽詰まったお客様の生活保護相談・申請業務に追われていると、季節や行事ごとなどがいつの間にか通り過ぎていることはしょっちゅう。

学生時代、筆まめな友人が
「電話は相手の時間を奪うもの、手紙は相手に時間を与えるもの」
と言っていたことを、最近よく思い出して妙に納得しています。

お客様からの手書きのお手紙を頂戴すると、なんともうれしいもので、読み返しては仕事の励みとさせていただいています。私も他のスタッフもいつでも見られるようにファイリングして、事務所に大切に保管しています。

年の瀬に切羽詰まった緊急の依頼

世間がボーナス後の景気でにぎわう中、丸二日間食事ができず、光熱費滞納により暖房も切れて冷たくなった部屋で布団にくるまっていらっしゃったお客様の家庭訪問へ行ってきました。

離れて暮らす妹さんが、切羽詰まった様子で当事務所に夜7時過ぎにお電話されてこられたのが1週間前でした。お兄様の様子がおかしく、生活困窮して何日も食べていないようで一刻も早く相談されたいということでしたので、年末の多忙なスケジュールで何とか合間の時間を作り、翌日の18時半に梅田出張所にお越しいただきました。

妹さんもお仕事帰りでかなりお疲れのご様子でした。お話をお伺いすると、離婚で疲弊したお兄様は精神的病を患ってしまい、ご実家を出て働くと言って家を出てからも仕事に行かず、家賃も滞納し、会社や不動産会社からご実家に連絡がたくさん来て困っていらっしゃいました。

悩み事がたくさんありすぎて妹さんも焦っていらしたのでしょう、お話は尽きません。まず何からしていいかわからない、不動産会社から家を出るように言われているけれどもどうしたらいいか、滞納している家賃や光熱費の支払もしてあげたいけれども実家の生活も苦しい、と・・・。

この妹さんも、自分自身と高齢で働けなくなったご両親の3人分の生活費をアルバイトのみで何とか支えている状況であり、とてもお兄様の生活まで手助けする余裕がなかったのです。

相談のあった当日中に生活保護開始申請書を作成し、翌日に役所へ申請

ご相談の日が金曜でしたので、申請が一日遅れることで受理が土日の分と遅れ、二日分の保護費をもらえなくなる可能性がありましたので急ぎ申請することになりました。

21時近くまで梅田出張所にてお兄様の生活保護申請書を作成し、妹様のご署名ご捺印をいただき、翌日私共が福祉事務所に代理提出をして生活保護申請を行いました。

急ぎご本人様不在で申請書を行政書士が作成、代理提出し、福祉事務所に受理(=申請を受け付けてもらうこと。審査に通ると、この受理日からさかのぼって生活保護費が日割りで支給され、医療費も無料適用となるので一日も早く申請受理されることでお困りの方の救済幅が広がります)してもらうところまでは何とかなりました。

これはお客様の権利利益確保のための、正当な行政書士業務です。
※行政書士以外の人が報酬を受け取って生活保護申請書を作ったり提出するといったことは、違法行為です。

生活保護が必要なのに家から出てこられない人

ところが、その後の手続きがなかなかスムーズにいかず、困難を極めたのです。ご本人様が精神疾患をお持ちで記憶障害もあり、電話も滞納により止められていたため、連絡が取れません。

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福祉事務所には、申請日の金曜の午後、他にも先約の予定があるんですよと嫌味を言われる中なんとか無理を聞いていただき、食料などの提供にご本人の家を訪問してもらいました。

ところが、肝心のご本人様が家から出てこないのです・・・。

私が妹さんに連絡をするも、妹さんはアルバイトのため夕方まで電話に出られず、結局役所の方にはその日お引き取りいただきました。週末の金曜日であったため、次に福祉事務所の担当の方に動いてもらえるのは3日後の月曜日まで待たなければなりません。

土日の間に何とか妹さんにお兄様と連絡をとってもらう

妹さんはその夜、生活に困っているのになぜ!と感情をあらわにされていました。お兄様は交通費もなく、食事もとっていないのに、遠方の実家まで夜歩いてきて、お米一合でいいからくださいと手紙をポストに入れて帰られたそうです。

精神疾患をお持ちの方はとにかく不安感が強く、人に会って助けを求めることができないほどに追い詰められていることもあり、私もそういう現場を何度も目にしてきました。ドアを開けてさえくれれば、役所の方から食料を受け取ることができたのにと、もどかしい気持ちでした。

そこで、土曜日に妹さんにお兄様の家まで出向いていただき、その場で私にお電話をしてもらいました。お兄様の電話は止められていて、通話ができないためです。お兄様はお電話では普通にお話できるのですが、妹さんいわくすぐに忘れてしまうとのこと。

私が月曜朝に役所に連絡し、役所の方に家庭訪問してもらう時間を決めてもらい、それをまず妹さんに伝える。
だから、週明け月曜日にお兄さんから公衆電話で妹さんに連絡し、そして役所の人が訪問する日時を聞いてほしいというお願いをしていましたが、案の定、忘れてしまったようでお兄様からの電話はありませんでした。

福祉事務所の人とともに訪問、しかし出てこない申請者

週明けすぐに福祉事務所へ私から連絡し、再度訪問してもらう日程を決定しました。

妹さんはお兄さんのことが心配で心配でたまらず、それでも平日に仕事を休んで家庭訪問に一緒に同席ということが難しく、福祉事務所と約束した日時に私と榎田行政書士で再びお兄様の家を訪ねました。前回同様、何度チャイムを鳴らしてもお兄様は出てきてくれません。役所の人も到着しましたが、お兄さんが出てくる様子はありません。

「次の予定もあるし、帰っていいですか」
「ご本人と会えないのでは、生活保護は受けられません」

法律に基づく対応とはいえ、このまま困っている人を役所に見捨てられては、お兄様は生きていく術がありません。私と榎田行政書士は、妹さんからの許可も得ていたので、玄関先で大きな声でお兄様を呼び続けました。このような行為は個人情報漏えいにもなってしまいかねませんので、役所の職員は行うことができません。

出てくる気配がなく、外からでは人がいるかいないかもわからない静かな家は、電気メーターもとうに滞納により止まっています。私はだんだん、凍死や餓死など、これまで何度か経験した悪夢を思い出し、不安が募ってきました。

管理会社に部屋の鍵を開けてもらう

妹さんが、管理会社に頼めば鍵を開けてもらえるかもとおっしゃっていたことを思い出し、アパートに記載されていた管理会社に連絡をしました。しかし、その部屋の鍵を持っている担当者が外出中のためすぐに連絡がとれません。しかも連絡がとれても戻ってくるには少し時間がかかるとのこと。

そこで不動産会社の電話口の方にも色々骨を折っていただき、なんとか担当の方と連絡がとれるようになりました。

しかしある程度予測はしていましたが、案の定、ご本人もしくはご身内の方の許諾がなければ鍵は開けられないとの返答。これはトラブルを避ける意味でも仕方のないことです。

とはいえ、申請者であるお兄様もここ数日食べ物もまともに入手できていない状況です。このままでは滞納家賃も払えず、生活保護も受けられず、お兄様は生命維持に必要な食事もすることができません。ここで役所の方と顔を合わせることができなければ生命にかかわるのです。

私と榎田行政書士は交互に管理会社と交渉した結果、何とか担当者の方(後でわかったのですがこの管理会社の社長でした)に急いで鍵を持ってきてもらえることとなり、そのまま部屋を開けてもらえることになりました。

役所の方と一緒にアパートの部屋の前で、鍵を持ってきてくれるのを待ちます。15分~20分ほど経ったでしょうか、管理会社の社長が部屋の鍵を持って到着しました。

到着してからもやはりトラブルを警戒して、管理会社には何かあって責任がかからないようにと、しぶっていましたが、役所の方も同席しているのでということで(福祉事務所の方は名刺と身分証明書を提示してちゃんと身元を明確にしていました)、ようやく部屋の鍵が開きました。

どうにか生活保護申請の意思確認が終了

ご本人様は12月の冷え切った部屋で布団にくるまって、耳栓をされて寝ていらっしゃいました。ご病気により、耳栓をしないと眠れないということで、せっかく来てくれたのにすみませんと謝られていました。

福祉事務所の方が食事の状況を確認すると、案の定この2日間ほど、ほとんど何も口にしていないとのこと。それ以前からもまともな食事はとれておらず、かなり衰弱したご様子。

電気も止められているため、部屋の中で暖房器具は一切動いていません。福祉事務所の方との意思確認や状況確認の間も、室内なのにジャンバーを着込まないといけないほど。そう広くもない部屋に大人が何人も入っているにも関わらず、最後まで部屋は冷え切って寒いままでした。

そんな中でも、どうにかこうにか無事にお兄様の生活保護申請意思を役所の方に確認してもらうことができました。福祉事務所にも緊急事態であることを認識してもらえ、その日のうちに食糧支援とお金も受け取っていただくことができました。

行政が出来ることの限界

申請書を私どもが役所に代理提出し、お兄様の生活保護申請をした当初は、正直言って冷たい対応だった役所の職員の方。面倒な申請をまたあの行政書士が持ってきた(その福祉事務所にはこれまで多数当事務所から申請して、すべて生活保護決定しています)などと思ったのかもしれません。

ただ、今回のケースでは、私どもが間に入っていなければ役所としては上述のように個人情報保護の観点から玄関先で大声を出してご本人を呼び出すこともできなければ、管理会社に連絡をして鍵を開けてもらうような交渉も立場上難しいので、内心ほっとしたのでしょう。

私共への役所の対応も優しくなって、なんだかほっと気持ちがあたたかくなりました。2日以上食事をしていないとおっしゃったお兄様の顔色は悪く、明らかに生命が危ない状況でしたので、役所の方も心配だったのでしょう。

「行政と市民の架け橋になる」という行政書士の本分

生活保護業務に従事する公務員は、生活保護法令に基づき、申請受理や審査を適正に実施すべき責任があります。

それを担保するための具体的指針が、生活保護実施要領と呼ばれるもので、こうした生活保護法関係法令や実施要領をまとめたものが、福祉事務所に常備されている「生活保護手帳」です。

この生活保護手帳の中には、常に公平でなければならないこと、ご本人の置かれた立場を理解して良き相談相手になるべきことなどが記載されています。血を通わせ、あたたかい配慮のもとに生きた生活保護行政を行うべきことも明記されていますが、このような対応がなされないがために、行政書士法人ひとみ綜合法務事務所へのご相談は日々絶えません。

ただ、私どもが役所の方とやり取りする中で、ふと職員の方の優しさや良心に触れることも多くあります。

今回のケースのように、行政では手の届かない部分を、民間企業の私共行政書士法人ひとみ綜合法務事務所が「行政と市民の架け橋になる」という行政書士の本分に基づき仕事をし、役所とお客様双方に少しでも行政書士法人ひとみ綜合法務事務所の存在があってよかった、と思っていただけることが、何よりの仕事冥利なのです。