行政書士試験対策と行政書士業務~③行政事件訴訟法と生活保護.~

Law Study Skills Guide to pass the National Gyoseishoshi Lawyer Licensing Examination and about services of Gyoseishoshi Lawer
~③Administrative Case Litigation Act and Public Assistance in Japan

Coming Soon~Gyoseishoshi Lawyer of Our Hitomi Law Office, Miki Hitomi’s book about Japanese Public Assistance will be released from Impress Japan on July 7, 2022.
You can pre-order by AMAZON or reserve at the book store.

特定行政書士三木ひとみ著書『わたし、生活保護をうけられますか』株式会社インプレスより2022年7月7日に発刊します。
Amazonで予約できます。大阪梅田ジュンク堂書店さんはじめ、全国の書店に並ぶようです。

This book was written over the course of a year and would not have been possible without many people who contributed their time and effort.

大勢の方のご尽力の賜物として、一年をかけて世に送りだす本です。

It was about 20 years ago. Seeking refuge from the abuser (stalker), I took all necessary steps to protect myself and escaped to a women’s domestic violence shelter.

20年ほど前、私はストーカー被害から逃れ、シェルターに入所しました。

After 30 days of staying at that shelter, I was asked to leave there without any consideration that I didn’t have anywhere to go or anyone to rely on.

30日後、どこにも行く当ても頼る先もお金もなかった私は、滞在期限のためシェルターを出なければいけませんでした。

I went to the ward office in Tokyo, but I only got the chance to speak at the consultation desk for a few minutes because when I tried to explain somehow, an employee approached me and my daughter and said, ‘What else do you have to say? Next person is waiting,’ and hurried us to vacate our seat.

東京の福祉事務所に相談に行きましたが、数分しか話はできませんでした。私たち母子に対して、福祉事務所の職員は、もう相談が済んだのなら次の人が待っているので席を空けてくださいと急かしてきました。

I felt I was not eligible for help, and my motivation to try and look for living was fading.

生活保護は受けられないと断念し、がんばろうという気持ちが徐々に沈んでいきました。

The thought “I want to die” came up in my mind many times but I couldn’t because I was afraid of death and also my daughter’s smile and kindness from many people (but strangers) around helped me a lot to survive.

「死にたい」という衝動に駆られたこともありましたが、娘の笑顔と、折々出会う他人からの優しさのおかげで、なんとか生きてくることができました。

I studied hard as working and became Gyoseishoshi Lawyer because I wanted to do such job that my daughter may feel proud of her mother.

そして、いつの日か娘が、母である私を誇りに思ってくれるような仕事がしたいという一心で、働きながら一生懸命勉強をして、行政書士になりました。

A Japanese sociologist and a professor emeritus at the University of Tokyo, Ueno Chizuko Sensei recommended this book as above (Blurb recommendation).

日本の社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子先生から、上記の推薦文を頂戴しました。初版より、書籍帯にも推薦文を掲載させていただく予定です。

1.はじめに

現役特定行政書士による、行政書士試験対策ブログ第3弾の今回は、司法制度改革の一環において平成17年に大改正のあった、行政事件訴訟法です。

前回までと同様、ブログを一読するだけで無駄なく自然と必要事項が頭に入るよう工夫して書いています。特に覚えてほしい重要事項は□で囲んでいます(条文が殆ど、すべての基本が条文だから。でも重要な条文がどれか、法律初学者にはわかりづらいものです)。

行政書士法人ひとみ綜合法務事務所のスタッフ複数名も、行政書士試験合格を目指して仕事をしながら隙間時間に勉強しています。このブログは、そうした弊所のスタッフの勉強の一助となるようにという願いも込めて特定行政書士でもある行政書士が作成しました。無駄を省き、かつ、試験でも実務でも必要不可欠な内容を極力わかりやすくまとめました。下記の英文併記の「はじめに」も然りで、行政書士試験後半部分の「行政書士の業務に関連する一般知識等」や、冒頭の「行政書士の業務に関し必要な法令等」で出題される可能性もある内容です。

The Japanese political framework is based on the separation of legislative, executive and judicial powers. The Constitution of Japan declares that sovereign power resides with the people, and the Diet shall be the exclusive legislative power, executive power shall be vested in the Cabinet, and judicial power vested in the courts.

日本では、立法権、行政権、司法権という国の権力を三つに分けて、それぞれを別の機関が分担する三権分立の仕組みを取っています。日本国憲法は、主権が国民に存することを宣言すると共に、国会が立法権、内閣が行政権、裁判所が司法権を持つと定めています。

Under the article 76 of Japanese Constitution, the whole judicial power is vested in a Supreme Court and in such inferior courts as are established by law and a third-tiered judicial system has been adopted in principle in Japan.

憲法第76条で、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」と定められており、日本では三審制度が採用されています。

There are five types of ordinary courts in Japan: Summary Courts, Family Courts, District Courts and The Supreme Court.

日本には、簡易裁判所、家庭裁判所、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所の5種類の裁判所があります。

The Supreme Court consists of a Chief Judge who is appointed by the Emperor based on the Cabinet’s nomination and 14 judges who are appointed by the Cabinet based on the nomination of Supreme Court.

最高裁判所は、長官と14人の最高裁判所判事によって構成されています。最高裁判所長官は、内閣の使命に基いて天皇が任命します。14人の最高裁判所判事は、最高裁判所が候補者を示し、内閣によって任命され、天皇の認証を受けます。

Administrative lawsuits (Administrative cases) are mainly filed against the central or local government when an individual is not satisfied with a decision made by him. The court of first instance for administrative cases is a district court, while it is a district court or summary court for civil lawsuits, and the administrative cases will be judged in accordance with the Code of Civil Procedure or the Administrative Case Litigation Act.

国や地方公共団体の決定に不服があるときなど行政に関する争訟(行政事件訴訟)の管轄裁判所(※管轄とは各裁判所の事件分担の定めのことで、どこの裁判所に訴状などの書類を出したら良いかということ)は、地方裁判所です。一方で、民事訴訟事件の第一審の管轄裁判所は、地方裁判所と簡易裁判所に提起することができます。行政事件訴訟とは、行政法規を根拠とし、行政事件訴訟法の手続きにより審理される訴訟のことをいいます。

There has been the major amendment of the Administrative Case Litigation Act in April 2005.

行政事件訴訟法は、2005年4月に抜本的改正がされました。

This revision of the Act has substantially lowered the hurdles and made it easier for citizens to file administrative lawsuits against the government.

行政事件訴訟法のこのときの法改正によって、実質的に国民が行政に関する争訟を提起しやすくなりました。

Demands for the cancelation of public assistance application rejection is one of the examples of administrative cases.

このブログで順次説明していきますが、生活保護申請却下処分の取消しを求める訴訟も、行政事件訴訟の一つです。

The Japanese government decided to slash about 67 billion yen from the base amount of public assistance payments over the following three-year period in 2013, and a total of about 900 plaintiffs filed lawsuits at 29 district courts nationwide.

日本政府が2013年に3年かけて計約670億円の生活保護基準額の削減を決めたことについては、全国29の地方裁判所におよそ900人の原告が訴訟提起しました。

On February 23, 2021, Osaka District Court, in which 42 plaintiffs of welfare recipients in Osaka Prefecture demanded that the state and 12 cities in the western Japan prefecture nullify the welfare benefit cuts claiming that the cuts in the benefits violated the article 25th of the Constitution, which guarantees the right to maintain the minimum standards of wholesome and cultural living, ordered the cancellation of welfare benefit cuts and said that the welfare benefit cuts went beyond the range of government discretionary power, therefore violating provisions of the public assistance law.

大阪府内の生活保護受給者42人が国と府内12市を相手取って生活保護費引き上げの取消を求め起こした裁判では、原告側が生活保護費引き下げは最低限の文化的な生活を保障した憲法25条に違反すると主張しました。
大阪地裁は、生活保護減額決定を取り消す判決を言い渡し、生活保護費減額決定は行政の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるから、生活保護法の規定に違反し違法であると判示しました。

However, On June 25, 2020, Nagoya District Court ruled that a drastic reduction in public assistance payments was valid and dismissed arguments of plaintiffs who are 18 recipients of public assistance in Aichi Prefecture that the decision was based on arbitrary calculations and the whims of the welfare ministry.

一方で、名古屋地方裁判所は2020年6月、生活保護費の大幅な引き下げは合法とし、原告らの請求を棄却する判決を言い渡していました。
愛知県の18人の生活保護受給者は、厚生労働省は恣意的かつ独断的な計算により生活保護基準引下げを決定したとして、処分の取消等を求める集団訴訟を起こしたのです。

5年前、まだ行政書士法人ひとみ綜合法務事務所設立前の岡・三木合同事務所だった頃、大阪地方裁判所近くの南森町にあった事務所に何度か行政のミスにより被害を受けた件でご相談でお越し頂いた大阪の懐かしいお客様から頂きました。ご挨拶にお越し下さるとのことでしたが、コロナ禍のため辞退申し上げたところ、ご親切にお送り下さいました。

2.行政事件訴訟法とは?

これまでの直近2回の試験対策ブログで解説した行政手続法と行政不服審査法の所管(しょかん=権限をもって管理すること、またその範囲のこと。)が総務省であるのに対し、行政事件訴訟法は法務省所管の法律です。

憲法の三権分立を実現する重要な制度が、行政訴訟制度です。裁判所を通じて、行政の活動が法律に基いて適切に行われているかをチェックするものだからです。昔の行政訴訟制度では、訴えを起こすための要件が厳しかったり、訴えても「行政裁量(=行政機関に与えられた独自の判断余地のこと)」を理由に裁判所が行政の判断を追認(ついにん:過去に遡ってその事実を認めること。)するものが殆どで、国民にとって使いにくい制度だと批判されてきました。

そこで、行政訴訟制度を使いやすくするため、審議や検討が重ねられ、行政事件訴訟法が改正され、司法の行政に対するチェック機能の強化が部分的に実現しました(義務付け訴訟・差し止め訴訟、確認訴訟の例示、第三者の原告適格の拡大など、救済範囲の拡大。出訴機関の延長や情報教示制度の新設、。執行停止要件の緩和や仮の義務付け・仮の差止め制度の新設による本案判決前における仮の救済制度の充実など)。

行政事件訴訟法は条文の雰囲気(言い回し等)も行政手続法、行政不服審査法よりも固い印象です。穴埋め問題で狙われやすい第一条を見てみましょう。

行政事件訴訟法
Administrative Case Litigation Act
昭和37年5月16日法律第139号
Act No.139 of May 16, 1962

第一章総則 Chapter I General Provisions

第一条(この法律の趣旨)Purport of This Act
行政事件訴訟については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。

Administrative case litigation is governed by the provisions of this Act, except as otherwise provided by other laws.

この第一条によって、行政事件訴訟法が行政事件訴訟の一般法だということがわかります。
他の法律に特別の定めがある場合→特別法があれば特別法が優先されるということ。7条に「行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。」と規定されていますが、これは行訴法が民事訴訟法の特別法ということではなく、訴えの性質に反しない限り民事訴訟に関する法令の規定が準用されるという意味。

行政事件訴訟についての特別法の例としては、地方自治法242条の2があります。地方自治法は、こうした重要条文だけ押さえておくといいですよ。

地方自治法

第242条の2 住民訴訟
普通地方公共団体の住民は、前条(住民監査請求)第一項の規定による請求をした場合において、同条第五項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第五項の規定による監査若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第五項の規定による監査若しくは勧告を同条第六項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対して、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもって次に掲げる請求をすることができる。
一 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差し止めの請求
二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
三 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
四 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第二百四十三条の二の二第三項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合には、当該賠償の命令をすることを求める請求

住民監査請求・住民訴訟制度については、行政士試験に出題されてもおかしくない、行政書士として理解しておくべき重要な制度なので、しっかり解説しておきます。

住民監査請求・住民訴訟制度とは、住民からの請求に基づき地方公共団体の執行機関又は職員の行う違法・不当な行為又は怠る事実の発生を防止し、その損害の賠償等を求めることを通じて、地方公共団体の財務の適性を確保し、住民全体の利益を保護することを目的とする制度です。

上に紹介した地方自治法第242条第2項冒頭に、「普通地方公共団体の住民は、前条(住民監査請求)第一項の規定による請求をした場合において」とありますが、これは監査請求前置主義と呼ばれるものです。住民監査請求を行った地方公共団体の住民(法人も含みます)が、住民訴訟を行うことができるということです。

条文だとわかりにくいですが、住民訴訟は次の場合に行うことができます。
①監査委員の監査の結果・勧告、勧告に基づいて長等が講じた措置に不服があるとき
②監査委員が監査・勧告を60日以内に行わないとき
③監査委員の勧告に基づいた必要な措置を長等が講じないとき

そして、この住民訴訟をするために先にしなければいけない、住民監査請求というのは、法律上の行為能力を認められている限りは自然人だけでなく法人でも可能で、1人でも請求できます。

住民監査請求制度は、地方公共団体の住民が当該団体の執行機関又は職員の違法又は不当な財務会計上の行為又は怠る事実について、これを予防又は是正することで、住民全体の利益を守ることを目的とする制度です。
監査請求の対象、監査請求の内容など、地方自治法第242条第1項に明記されているので、確認しておきましょう。

地方自治法第242条(住民監査請求)
1.普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合を含む。)と認めるとき、または違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によって当該普通地方公共団体の被った損害を補填するために必要な措置を構ずべきことを請求することができる。

上の第242条第1項に記載されている、監査請求の対象をわかりやすく列挙するとこうなります↓。

監査請求の対象は、普通地方公共団体の長、委員会、委員又は職員による違法・不当な財務会計上の行為又は財務に関する怠る下記の事実または行為がなされることが相当な確実性をもって予測される場合も。ただし、「公金の賦課・徴収を怠る事実又は財産の管理を怠る事実」は予測ではなく事実のときのみ)。
・公金の支出
・財産の取得・管理・処分
・契約の締結・履行
・債務その他の義務の負担
・公金の賦課・徴収を怠る事実又は財産の管理を怠る事実

監査請求の内容としては、下記の3点を請求できます。
①当該行為を防止し、または是正すること
②当該怠る事実を改めること
③当該行為・怠る事実によって当該普通地方公共団体が被った損害を補填するために必要な措置を講ずべきこと

その他、住民監査請求制度の重要点
・【監査請求の期間】住民監査請求は当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは、これをすることができない。ただし、請求がこの期間内にできなかったことに正当な理由があるときは認められる。
・監査委員は、監査の請求があったら60日以内に監査を行う。
・請求に理由がないと認めるとき→理由を付してその旨を請求人に通知、公表。
・請求に理由があると認めるとき→当該普通地方公共団体の議会、長、その他の執行機関又は職員に対し、期間を示して必要な措置をこうずべきことを勧告するとともに、勧告の内容を請求人に通知し、公表。
・監査委員から勧告を受けた者は、当該勧告に示された期間内に必要な措置を講じ、その旨を監査委員に通知するとともに、監査委員は通知に係る事項を請求人に通知し、公表する。
・【暫定的な停止勧告制度】監査委員は、以下の要件すべて満たす場合は理由を付して勧告等の手続きが終了するまでの間、当該行為を停止すべきことを勧告することができる(地方自治法第242条第3項)。
当該行為が違法であると思料するに足りる相当な理由があると認めるとき。
当該行為により当該団体に生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があると認めるとき
当該行為を停止することによって人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがないと認めるとき

住民訴訟制度の重要点
・【請求の期間】住民訴訟を提起できる場合は、それぞれ一定の日から30日以内に訴訟提起しなければならない。
・住民訴訟は当該地方公共団体の事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
・原告が訴訟に勝訴し、又は一部勝訴した場合において、弁護士に報酬を支払うべきときは、原告は、弁護士報酬額の範囲内で相当と認められる額を地方公共団体に請求することができる。


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3.行政事件訴訟の4類型の理解は完璧にすること

行政事件訴訟法第二条(行政事件訴訟)Administrative Case Litigation
この法律において「行政事件訴訟」とは、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟をいう。

The term “administrative case litigation” as used in this Act means actions for the judicial review of administrative dispositions, public law-related actions, citizen actions and interagency actions.

行政事件訴訟法上、行政訴訟は、①抗告訴訟②当事者訴訟③民衆訴訟④機関訴訟の4つの訴訟類型に分けられています。

主観訴訟:国民個人の具体的な権利利益の保護を目的とした訴訟=抗告訴訟、当事者訴訟
客観訴訟:客観的な法秩序維持を目的とした訴訟=民衆訴訟、機関訴訟

第三条(抗告訴訟)Actions for the Judicial Review of Administrative Dispositions
この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。

The term “action for the judicial review of an administrative disposition” as used in this Act means an action to appeal against the exercise of public authority by an administrative authority.

→第三条の2項以降において抗告訴訟の種類(①処分の取消訴訟②裁決の取消訴訟③無効等確認訴訟④不作為の違法確認訴訟⑤義務付け訴訟⑥差止め訴訟⑦無名抗告訴訟)が説明されていますが(⑦以外)これは後ほどじっくり解説します。まずは、行政事件訴訟の4類型の条文をしっかり読み込みましょう。記述式で出題されるかもしれません。

第四条(当事者訴訟)Public Law-Related Actions
この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

→当事者訴訟には、①形式的当事者訴訟と②実質的当事者訴訟の2種類があります。形式的当事者訴訟については、前回の行政不服審査法の解説ブログで詳しく解説しました。覚えていますか?平成24年度行政書士試験にも出題されました。

形式的当事者訴訟とは、当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分または裁決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とする訴訟です。

具体例:
・土地収用法133条3項に基づく、収用委員会の裁決のうち損失補償額に争いのある場合の土地所有者と起業者との間の訴え
・著作権法72条に基づく、著作権者が著作権利用者を被告として提起する補償金額に関する訴え

※この法律の文言を覚える必要はないですが、上に説明した形式的当事者訴訟の重要事項を理解するためには、根拠となる法律の条文を読んで理解しておく必要があります。こうした法律の条文の確認は、行政書士実務においても基本かつ大事なことです。

土地収用法第133条
1.収用委員会の裁決に関する訴え(次項及び第3項に規定する損失の補償に関する訴えを除く。)は、裁決書の正本の送達を受けた日から三月の不変期間内に提起しなければならない。
2.収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する訴えは、裁決書の正本の送達を受けた日から六月以内に提起しなければならない。
3.前項の規定による訴えは、これを提起した者が起業者であるときは土地所有者又は関係人を、土地所有者又は関係人であるときは起業者を、それぞれ被告としなければならない。

土地収用法第133条3.は形式的当事者訴訟ですが、1.は形式的当事者訴訟ではなく、抗告訴訟です。ややこしいかもしれませんが、大事なことなので、条文とにらめっここして、理解できるまで繰り返し読んでくださいね。独学で行政書士試験合格したメリットの一つは、簡単に質問できる講師などがいないので、ひたすら条文と解説書、判例集を熟読して自分で疑問点を解決していく習慣が根付いたことです。これも、行政書士実務において実に大事なことなのです。わからないことは行政書士バッジを外して役所に行って聞けばいい、などと無責任で恥ずかしいことを平気で言ってしまう同業者もいないわけではありませんが、そもそも行政窓口の職員も法令や判例を熟知していないケースが少なくないのです。行政書士として、役所の間違いを指摘して是正してもらったことも数知れず。

実質的当事者訴訟とは、公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟のこと。

この実質的当事者訴訟は条文だけでは理解困難でしょう。具体的には、取消訴訟の対象となる行政庁の処分その他公権力の行使以外の、行政機関の行為によって争いが生じた場合に提起できるのが、この実質的当事者訴訟です。

公法上の法律関係に関する確認の訴えは、平成16年の行政事件訴訟法改正によって、第4条に付加されました。話題を呼んだ「君が代・日の丸訴訟」の起立・斉唱・伴奏義務がないことを求める確認訴訟がこれに該当します(予防訴訟)。

この君が代・日の丸訴訟の最高裁判決では、通達や職務命令に処分性がないことから、取消訴訟はできないものの、将来の停職・減給・戒告といった懲戒処分がされる可能性があるといった差止め訴訟の訴訟要件は満たすため差止め訴訟は適法であるとされました。また、職務命令による起立・斉唱・伴奏義務がないことの確認訴訟は実質的当事者訴訟として適法であるものの、本件職務命令自体が違憲無効のため、起立・斉唱・伴奏義務がないとはいえないとされました(わかりにくいですね)。

実質的当事者訴訟と民事訴訟の違いは、訴訟物が「公法上の法律関係」であることです。「公法上の法律関係」とは、行政処分によって形成される法律関係や、直接法令により形成される法律関係などです。具体的には、公務員の地位確認の訴えや、国籍の確認等の訴え、国に対する損失の補償に関する訴えなどがあります。

行政事件訴訟法第五条(民衆訴訟)Citizen Actions
この法律において「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。

The term “citizen action” as used in this Act means an action seeking correction of an act conducted by an agency of the State or of a public entity which does not conform to laws, regulations, and rules, which is filed by a person based on their status as a voter or any other status that is irrelevant to their legal interest.

原告の個人的権利利益の救済のためではなく、行政活動が適性に行われることを求める客観訴訟が、民衆訴訟です。公職選挙法203条、204条、207条、208条の選挙訴訟(一票の格差訴訟など)や地方自治法242条の2の住民訴訟が、この民衆訴訟の例。

そして、客観訴訟である民衆訴訟と機関訴訟は、法律に定める者に限り提起できるとされています。

行政事件訴訟法第四十二条(訴えの提起)Filling of Action
民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。

Citizen actions and interagency actions may be filed only by persons specified by Acts in cases provided for in Acts.

行政事件訴訟法第六条(機関訴訟)Interagency Actions
この法律において「機関訴訟」とは、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう。

The term “interagency action” as used in this Act means an action relating to a dispute between agencies of the State and/or a public entity(ies) oever issues concerning which of these agencies has the power, or the exercise thereof.

機関相互間の紛争というものは、当事者間の権利義務に関する紛争ではないので、法律上の紛争には含まれません。この機関訴訟は、第五条で定義する民衆訴訟と同じく、原告の個人的な権利利益の救済ではない、客観訴訟と位置付けられています。

機関訴訟の具体例は、地方自治法第176条の定める、地方公共団体の長と議会との紛争。

地方自治法第176条(議会の瑕疵ある議決又は選挙に対する長の処置)
普通地方公共団体の議会の議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、その議決の日(条例の制定若しくは改廃又は予算に関する議決については、その送付を受けた日)から10日以内に理由を示してこれを再議に付することができる。
1~6 は省略
7.前項の規定に不服があるときは、普通地方公共団体の議会又は長は、裁定のあった日から60日以内に、裁判所に出訴することができる。
→これが機関訴訟

この地方自治法第176条は、再議制度という、地方公共団体の長が議会の判断(議決)に異議を有する場合の長の拒否権として設けられた制度ですが、実際にはあまり利用されていません。行政書士実務で関わることは極めてまれ、ほとんどないと言えるでしょう。

機関訴訟のもう一つの具体例として理解しておきたいことを、行政代執行法という行政書士試験でも出題されることの多い行政法の説明と共に、解説します。

行政代執行法というのは、私人の行政上の義務に関して、その義務の履行(りこう=実際に行ること、実行)を確保するための代執行手続きを規定した法律です。行政書士試験に出題されやすい条文を見ておきましょう。

行政代執行法
第1条 行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。

第2条 法律(法律の委任に基づく命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代ってなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によってその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。

そして、辺野古争訟で一躍脚光を集めたのがこの地方自治法第245条の8です。この自治法245条の8(代執行等)は、地方自治法における他の係争処理手続とは独立した手続となっています。改善命令から代執行までの手続が、独自の要件とともにこの条項に全て規定されているのです。

地方自治法第245条の8(代執行等)
 各大臣は、その所管する法律若しくはこれに基づく政令に係る都道府県知事の法定受託事務の管理若しくは執行が法令の規定若しくは当該各大臣の処分に違反するものがある場合又は当該法定受託事務の管理若しくは執行を怠るものがある場合において、本項から第八項までに規定する措置以外の方法によってその是正を図ることが困難であり、かつ、それを放置することにより著しく公益を害することが明らかであるときは、文書により、当該都道府県知事に対して、その旨を指摘し、期限を定めて、当該違反を是正し、又は当該怠る法定受託事務の管理若しくは執行を改めるべきことを勧告することができる。
2 各大臣は、都道府県知事が前項の期限までに同項の規定による勧告に係る事項を行わないときは、文書により、当該都道府県知事に対し、期限を定めて当該事項を行うべきことを指示することができる。
3 各大臣は、都道府県知事が前項の期限までに当該事項を行わないときは、高等裁判所に対し、訴えをもつて、当該事項を行うべきことを命ずる旨の裁判を請求することができる。
4 各大臣は、高等裁判所に対し前項の規定により訴えを提起したときは、直ちに、文書により、その旨を当該都道府県知事に通告するとともに、当該高等裁判所に対し、その通告をした日時、場所及び方法を通知しなければならない。
5 当該高等裁判所は、第三項の規定により訴えが提起されたときは、速やかに口頭弁論の期日を定め、当事者を呼び出さなければならない。その期日は、同項の訴えの提起があつた日から十五日以内の日とする。
6 当該高等裁判所は、各大臣の請求に理由があると認めるときは、当該都道府県知事に対し、期限を定めて当該事項を行うべきことを命ずる旨の裁判をしなければならない。
7 第三項の訴えは、当該都道府県の区域を管轄する高等裁判所の専属管轄とする。
8 各大臣は、都道府県知事が第六項の裁判に従い同項の期限までに、なお、当該事項を行わないときは、当該都道府県知事に代わって当該事項を行うことができる。この場合においては、各大臣は、あらかじめ当該都道府県知事に対し、当該事項を行う日時、場所及び方法を通知しなければならない。
(9~15は省略します。)

2015年10月に当時の翁長沖縄県知事が、その前の知事だった仲井眞前知事が承認した辺野古新基地をつくるための埋立承認を「法律的な瑕疵がある」として取り消したのです。簡単に取り消したわけではなく、半年かけて、埋立承認の適法性を検証する第三者委員会を設置して検証したところ、法的な瑕疵(かし=欠陥、欠点)があるという結論に至り、埋立承認は取り消すということになったのです。でも、前知事が行った埋立承認処分を現知事が取り消すというのは、異例のことなのです。

一市民が行政から受けた営業許可や生活保護決定といった、利益を与えられる行政処分を授益的行政処分といいます。この授益的行政処分については、そう簡単に取り消せないという、取消制限の法理という行政法上の考え方があるのです。そのため、半年かけて翁長知事は慎重に、法律的な瑕疵があるから取り消さなければいけないという根拠を調査したわけです。

翁長知事が埋立承認を取り消したことで、辺野古の埋め立て工事が進まなくなった国は困ってしまい、上に条文を載せた地方自治法245条の8で定められた代執行等関与の手続きに基いて、まずは国土交通大臣から知事に「勧告」をしました。でも知事が勧告に従わないので、次は245条の2の「指示」を出し、それでも従わないため、245条の3に基き高等裁判所に代執行訴訟すわなち「機関訴訟」を提起したというわけです。

代執行訴訟をわかりやすく説明すると、国の大臣が裁判所に対して、都道府県知事の行った処分は違法だから、代執行していいかと尋ねる。裁判所が許可すると、国の大臣が知事に代わって処分を行うことができるようになる制度です。そのため、国土交通大臣が裁判に勝訴すれば、翁長知事が行った埋立承認処分の取消処分を、知事に代わって大臣が取り消すことができるようになるわけです。

地方自治、地方分権の観点に逆行する国の権力的関与ともいえるので、地方自治法245条の8には、代執行訴訟以外の関与の手段、措置をまず検討するようにといった文言も書いてあります。それが、条文の赤文字にしている部分です。

参考程度にこの裁判のその後を少し書くと、2013年12月に仲井眞前知事が埋立承認し、2015年10月に当時の翁長知事が埋立承認を取り消し、2016年3月4日和解が成立したのです。

裁判官は、平成11年(1999年)の地方自治法の改正の趣旨である国と地方公共団体との対等・協力関係や役割分担の原則に反し、地方自治法改正の精神にも反すると指摘していたのです。

地方自治法第245条の3
国は普通地方公共団体が、その事務の処理に関し、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与を受け、又は要することとなる場合には、その目的を達成するために必要な最小限度のものとするとともに、普通地方公共団体の自主性及び自立性に配慮しなければならない。


行政書士法人ひとみ綜合法務事務所の提携・協力先の特定行政書士・社会保険労務士の山田六郎先生の奥様から、手作りの抹茶パンナコッタとケーキを頂きました。お近くの事務所なので、山田六郎先生が作りたてを届けてくださって、感激しました。スタッフ皆で美味しく頂きました。

4.抗告訴訟の類型5つ

行政事件訴訟法の条文は全部で46条ですが、8条から38条までがすべて「第二章抗告訴訟」についてです。行政庁の公権力行使に対して、不服を申し立てる訴訟をまとめて「抗告訴訟」というので、行政事件訴訟の大部分がこの「抗告訴訟」に当てはまります。

おさらいです。「法律上の争訟」に含まれない、民衆訴訟と機関訴訟を除けば、行政訴訟は、「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」抗告訴訟と、「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」および「公法上の法律関係に関する訴訟」である当事者訴訟です。つまり、法令で定める訴訟を除き、行政訴訟とは、「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」と、「公法上の法律関係に関する訴訟」ということになります。

抗告訴訟の類型は、①処分の取消②無効確認の訴え③不作為の違法確認の訴え④義務付けの訴え⑤差し止めの訴えが規定されています。


令和4年母の日に

5.平成16年改正行政事件訴訟法のポイント

5-①行政訴訟を利用しやすくした情報提供(教示)制度の新設

平成16年の行政事件訴訟法改正前には、実は行政庁が国民に対して、処分や裁決に関する訴えの提起に関する情報提供を行う旨の規定は存在しませんでした。でも、教示がなければ、国民が取消訴訟を提起する場合の被告や出訴期間、不服申立ての方法を知ることは難しく、適切な権利救済ができていなかったのです。

そのため、平成16年改正により、抗告訴訟の類型である取消訴訟を提起することができる処分又は裁決をする場合には、行政庁は、当該処分又は裁決の相手方に対し、①当該処分又は裁決に係る取消訴訟の出訴期間、②法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨(いわゆる不服申立前置)の定めがあるときはその旨を教示しなければならないこととされました。

行政事件訴訟法第46条【取消訴訟等の提起に関する事項の教示】
①行政庁は、取消訴訟を提起することができる処分又は裁決をする場合には、当該処分又は裁決の相手方に対し、次に掲げる事項を書面で提示しなければならない。
ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。

1.当該処分又は裁決に係る取消訴訟の被告とすべき者
2.当該処分又は裁決に係る取消訴訟の出訴期間
3.法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、その旨

処分につき、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決に対してのみ、取消訴訟を提起することができることを、裁決主義といいます。この裁決主義の定めがある場合において、当該処分をするときは、行政庁はその処分の相手方に対して、法律に裁決主義の定めがあることを教示しなければならないこととされました。それが、行政事件訴訟法第46条2項です。

行政事件訴訟法第46条【取消訴訟等の提起に関する事項の教示】
②行政庁は、法律に処分についての審査請求に対する裁決に対してのみ取消訴訟を提起することができる旨の定めがある場合において、当該処分をするときは、当該処分の相手方に対し、法律にその定めがある旨を書面で教示しなければならない。
ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。

行政事件訴訟法第46条3項では、形式的当事者訴訟の教示について記載しています。
形式的当事者訴訟とは何か?を記述式問題で出されるかもしれませんよ。すらすら、定義は出てきますか?条文で定義された内容を、復習しておきましょう。

行政事件訴訟法第4条【当事者訴訟】
この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

はい、そして当事者訴訟の教示制度の条文がこちら!

行政事件訴訟法第46条【取消訴訟等の提起に関する事項の教示】
③行政庁は、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものを提起することができる処分又は裁決をする場合には、当該処分又は裁決の相手方に対し、次に掲げる事項を書面で教示しなければならない。
ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。
1.当該訴訟の被告とすべき者
2.当該訴訟の出訴期間

5-②出訴期間の延長

行政事件訴訟法改正前は、取消訴訟の出訴期間は今より短いものでした。(従前のものを間違って記憶しないよう、あえて昔の期間は書きません。試験勉強で気をつけなければいけないのは、問題を解いたらすぐ見直して正しい知識を入れることです。間違ったまま記憶定着させてしまう悪いパターンにくれぐれも陥らないように。)
そして、平成16年の法改正以前は、出訴期間の経過について正当な理由がある場合でも、出訴期間経過後の提訴は認められませんでした。
国民が行政庁の処分又は裁決に対して取消訴訟を提起しようとするときは、訴訟の適法性に関して原告適格、被告適格、裁判所の管轄、出訴期間といった訴訟要件など、多くのことを検討する必要があるため、訴訟準備に相当の期間を要することが多いのです。

そこで、平成16年改正では、出訴期間は処分又は裁決があったことを知った日から6か月に延長されました。同時に、正当な理由がある場合には、期間経過後の提訴も許容されることになったのです。これが、行政事件訴訟法第14条です。出訴期間は試験でもよく出題されますが、単に数字を覚えるよりこうした法改正の経緯を理解しておくと実務にも役立ちますよ。

行政事件訴訟法第14条【出訴期間】
取消訴訟は、処分又は裁決があったことを知った日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2.取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
3.処分又は裁決につき審査請求をすることができない場合又は行政庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があったときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前二条の規定にかかわらず、これに対する裁決があったことを知った日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

この第14条は、民衆訴訟又は機関訴訟のうち、処分又は裁決の取消しを求めるものにも準用されています。

行政事件訴訟法第43条【抗告訴訟又は当事者訴訟に関する規定の準用】
民衆訴訟又は機関訴訟で、処分又は裁決の取消しを求めるものについては、第九条及び第十条第一項の規定を除き、取消訴訟に関する規定を準用する。

5-③抗告訴訟における被告適格がわかりやすくなった

行政事件訴訟法改正前は、処分又は裁決をした行政庁を被告とする原則がとられていましたが、これだと原告となる国民にとっては、どの行政庁が処分又は裁決をしたのか特定するのが容易ではないと指摘されていました。

そのため、平成16年改正により、被告を特定するため国民の負担を軽減すべく、被告適格が簡明化されました。

これが、行政事件訴訟法第11条1~3項です。

行政事件訴訟法第11条【被告適格等】
処分又は裁決をした行政庁(処分又は裁決があった後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁。以下同じ。)が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。

一 処分の取消しの訴え
当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体

二 裁決の取消しの訴え
当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体

②処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属しない場合には、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない。

③前二項の規定により被告とすべき国若しくは公共団体又は行政庁がない場合には、取消訴訟は、当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体を被告として提起しなければならない。

この行政事件訴訟法第11条は、取消訴訟以外の抗告訴訟にも準用されます。(行政事件訴訟法第38条【取消訴訟に関する規定の準用】※この38条自体は数字が並ぶだけなのでここでは割愛します。)

5-④抗告訴訟の管轄裁判所が拡大された

平成16年の法改正前は、取消訴訟の原則的な管轄裁判所は、被告行政庁の所在地を管轄する裁判所でした。これだと、遠隔地に居住する国民は、訴訟を起こすのも、裁判が始まってからも、不利な立場に置かれます。そのため、平成16年改正では、行政訴訟における専門性を確保しながら、原告の住所地に近い裁判所で訴えを提起できる可能性が広げられました。

行政事件訴訟法第12条第1項は、国民が行政庁を特定できなくても、国又は公共団体さえ特定すれば管轄裁判所が当然定めるようにするため、処分又は裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所に加えて、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所も原則的な管轄裁判所に加えたのです。
そして、第4項に規定される特定管轄裁判所は、抗告訴訟(国又は独立行政法人通則法第2条第1項に規定する独立行政法人若しくは別表に掲げる法人を被告とする取消訴訟)について原告住所地を管轄する高等裁判所所在地を管轄する地方裁判所にも管轄裁判所が拡大されたからこそなのです。そして、特定管轄裁判所に提起された訴訟に関する移送の規定が整備されたのが、行政事件訴訟法第12条第5項です。こうした法策定の経緯や背景がわかると、勉強が楽しく覚えやすくなるはずです。

行政事件訴訟法第12条【管轄】
取消訴訟は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所又は処分若しくは裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
2.土地の収用、鉱業権の設定その他不動産又は特定の場所に係る処分又は裁決についての取消訴訟は、その不動産又は場所の所在地の裁判所にも、提起することができる。
3.取消訴訟は、当該処分又は裁決に関し事案の処理に当たった下級行政機関の所在地の裁判所にも、提起することができる。
4.国又は独立行政法人通則法第2条第1項に規定する独立行政法人若しくは別表に掲げる法人を被告とする取消訴訟は、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所(特定管轄裁判所)にも提起することができる。

5.前項の規定により特定管轄裁判所に同項の取消訴訟が提起された場合であって、他の裁判所に事実上及び法律上同一の原因に基づいてされた処分又は裁決に係る抗告訴訟が係属している場合においては、当該特定管轄裁判所は、当事者の住所又は所在地、尋問を受けるべき証人の住所、争点又は証拠の共通性その他の事情を考慮して、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部について、当該他の裁判所又は第一項から第三項までに定める裁判所に移送することができる。

5-⑤取消訴訟で原告適格が拡大された

従前は、現在の行政事件訴訟法第9条第1項に定めるように、処分又は裁決の取消しの訴えは、処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者しか提起できませんでした。

行政事件訴訟法第9条【原告適格】
処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(取消訴訟)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分又は裁決の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

法律上の利益を有するかどうかが、当該処分又は裁決の根拠となる法律の規定の文言のみで判断されると、原告適格が認められる範囲が狭いという指摘がなされていたため、平成16年改正では、法律上の利益の有無を判断するに当たって考慮すべき事項を決定し、法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨・目的や処分において考慮されるべき利益の内容・性質などを考慮すべき旨の規定が設けられたのです。
それが、この行政事件訴訟法第9条第2項です。

5-⑥義務付け訴訟が法定された

行政庁が一定の処分又は裁決をすべきであるにもかかわらず、これをしない場合に、一定の要件の下で、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める「義務付け訴訟」は、平成16年行政事件訴訟法改正以前は明文の規定は存在しませんでした。抗告訴訟の類型は、取消訴訟、無効等確認訴訟および不作為の違法確認訴訟のみが法定されていました。改正前は、義務付け訴訟が認められるかどうかは、解釈にゆだねられていたのです。それでは十分な救済が得られないということで、義務付け訴訟についての規定を設けるべきとの指摘が長らくされていました。

そこで、平成16年改正で義務付け訴訟が新たな抗告訴訟の類型として法定され、次のように要件が規定されました。

行政事件訴訟法第3条【抗告訴訟】
6.この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにもかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにもかかわらずこれがされないとき。

第三十七条の二【義務付けの訴えの要件等】
第三条第六項第一号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。
2 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
3 第一項の義務付けの訴えは、行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
4 前項に規定する法律上の利益の有無の判断については、第九条第二項の規定を準用する。
5 義務付けの訴えが第一項及び第三項に規定する要件に該当する場合において、その義務付けの訴えに係る処分につき、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命ずる判決をする。

第三十七条の三 第三条第六項第二号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当するときに限り、提起することができる。
一 当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされないこと。
二 当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合において、当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在であること。
2 前項の義務付けの訴えは、同項各号に規定する法令に基づく申請又は審査請求をした者に限り、提起することができる。
3 第一項の義務付けの訴えを提起するときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める訴えをその義務付けの訴えに併合して提起しなければならない。この場合において、当該各号に定める訴えに係る訴訟の管轄について他の法律に特別の定めがあるときは、当該義務付けの訴えに係る訴訟の管轄は、第三十八条第一項において準用する第十二条の規定にかかわらず、その定めに従う。
一 第一項第一号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る不作為の違法確認の訴え
二 第一項第二号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴え
4 前項の規定により併合して提起された義務付けの訴え及び同項各号に定める訴えに係る弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。
5 義務付けの訴えが第一項から第三項までに規定する要件に該当する場合において、同項各号に定める訴えに係る請求に理由があると認められ、かつ、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきであることがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決をすべき旨を命ずる判決をする。
6 第四項の規定にかかわらず、裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、第三項各号に定める訴えについてのみ終局判決をすることがより迅速な争訟の解決に資すると認めるときは、当該訴えについてのみ終局判決をすることができる。この場合において、裁判所は、当該訴えについてのみ終局判決をしたときは、当事者の意見を聴いて、当該訴えに係る訴訟手続が完結するまでの間、義務付けの訴えに係る訴訟手続を中止することができる。
7 第一項の義務付けの訴えのうち、行政庁が一定の裁決をすべき旨を命ずることを求めるものは、処分についての審査請求がされた場合において、当該処分に係る処分の取消しの訴え又は無効等確認の訴えを提起することができないときに限り、提起することができる。

行政事件訴訟法そのものには書かれていませんが、義務付け訴訟は次の2種類に分類されます。

①申請型義務付け訴訟・・・第3条第6項第2号
行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき
②非申請型義務付け訴訟・・・第3条第6項第1号
申請型義務付け訴訟の場合以外で、行政庁が一定の処分をすべきであるにもかかわらず、これがされないとき

申請型義務付け訴訟を提起することができるのは、次の2つのいずれかの場合。
①当該法令に基づく申請等に対し、相当の期間内に何らの処分等がされない場合
②当該法令に基づく申請等を却下し又は棄却する旨の処分等がされた場合において、当該処分又は裁決が取り消されるべきものであることなどの要件に該当する場合

そして、申請型義務付け訴訟を提起する場合には、処分等に対する取消訴訟等を併合提起することが必要とされています。(上記□内条文の、第37条の3第3項部分)

行政書士の私がかつてPTA問題に取り組み、PTAが任意加入の私的団体であることを公立校の入学式で広く知らせるべきといった活動をしていた頃に提起した、大阪市の公立小中学校にエアコン設置を求めた訴訟は、非申請型義務付け訴訟でした。非申請型義務付け訴訟は、一定の処分がされないことにより重大な損害を生じるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに、提起することができます。義務付け訴訟が抗告訴訟の新たな類型として定められたからこそ、一母親である私が大阪市相手に子どもたちを守るため公立小中学校にエアコンをつけてくださいという訴えを起こし、教室の夏場の気温を教頭先生と一緒に測定したら34度であったことなどを公開の法廷で証拠として示し、公正な裁判官による司法判断を受けることが、可能になったわけです。

5-⑦差止訴訟が法定された

差止めの訴えとは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらず、これがされようとしている場合に、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟です。

義務付け訴訟と同じように、平成16年の行政事件訴訟法改正前は、この差止訴訟についても名分の規定は存在しませんでした。
たとえば、行政の監督権限に基づいて制裁処分が公表されると、名誉や信用に重大な損害が生ずるおそれがある場合など、事後的に制裁処分の取消しの訴えを提起しても十分な救済を得ることができません。そのため、義務付け訴訟同様に、差止訴訟についての規定を設けるべきという指摘が長らくされていたのです。

そして、次のように差止訴訟は抗告訴訟の新たな訴訟類型として、法定され、要件も規定されました。

行政事件訴訟法第3条【抗告訴訟】
7.この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにもかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。

第三十七条の四【差止めの訴えの要件】
差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。
2 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案するものとする。
3 差止めの訴えは、行政庁が一定の処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
4 前項に規定する法律上の利益の有無の判断については、第九条第二項の規定を準用する。
5 差止めの訴えが第一項及び第三項に規定する要件に該当する場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきでないことがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をすることがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずる判決をする。

このように、行政庁が一定の処分又は裁決をしようとしている場合において、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合(ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときを除く。)には、差止訴訟を提起することができます。

5-⑧「確認訴訟」が当事者訴訟の一類型となった

当事者訴訟の2類型、形式的当事者訴訟(当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の一方を被告とするもの)と実質的当事者訴訟といわれる「公法上の法律関係に関する訴訟」は、平成16年の法改正前から認められていました。
ただ、公法上の法律関係に関する確認訴訟の位置付けについては明らかではない側面があったため、当事者訴訟が十分活用されていないと指摘されていました。

確認訴訟は、抗告訴訟の対象とならない行政の行為も含む、多様な行政の活動によって争いの生じた権利義務などの公法上の法律関係について、確認の利益が認められる場合には活用ができます。法改正により、「公法上の法律関係に関する確認の訴え」が当事者訴訟の一類型として「公法上の法律関係に関する訴訟」に含まれることを明記しました。それが、この条文です。

行政事件訴訟法第4条【当事者訴訟】
この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするも及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

記述式問題で、こうした訴訟類型の定義を書かせる問題が狙われやすいといわれますが、単に丸暗記をするよりも、こうした法改正の経緯を知っておくと理解して覚えることができるので、忘れにくくなります。

5-⑨釈明処分の規定が新設された

まず、釈明処分が何かは行政法には規定がないので、民事訴訟法の条文から学びましょう。

民事訴訟法第151条【釈明処分】
裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次に掲げる処分をすることができる。
一  当事者本人又はその法定代理人に対し、口頭弁論の期日に出頭することを命ずること。
二  口頭弁論の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で裁判所が相当と認めるものに陳述をさせること。
三  訴訟書類又は訴訟において引用した文書その他の物件で当事者の所持するものを提出させること。
四  当事者又は第三者の提出した文書その他の物件を裁判所に留め置くこと。
五  検証をし、又は鑑定を命ずること。
六  調査を嘱託すること。
2  前項に規定する検証、鑑定及び調査の嘱託については、証拠調べに関する規定を準用する。

平成16年の行政事件訴訟法改正前は、この釈明部分に関する特則は行政事件訴訟法にはありませんでした。

行政事件訴訟に定めがない事項は、民事訴訟の例によるとされています。

行政事件訴訟法第7条【この法律に定めがない事項】
行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。

そのため、上記の民事訴訟法第151条第1項第3号により、釈明部分として裁判所が提出を求めることのできる文書範囲は、訴訟で引用された文書等に限定されていました。

ただ、民事訴訟とちがって、処分または裁決がされたことを前提としてその効力を争う類型の行政事件訴訟法においては、処分又は裁決における行政庁の専門的・技術的判断や最良判断について争われることで多いので、裁判所が判断するために行政庁が処分又は裁決を行う際に判断の根拠とした資料を確認する必要があるわけです。そこで、審理の充実と促進のため、釈明処分により提出を命ずることのできる文書の範囲が拡大されました。処分又は裁決の理由を明らかにする資料が、審査請求に係る事件の記録の提出を求めることができることと規定されました。
また、提出を求め送付を嘱託する相手方も、被告である国または公共団体に所属する行政庁や

被告である行政庁に限らず処分又は裁決の理由を明らかにする資料や審査請求に係る事件の記録の送付を、ほかの行政庁に対しても嘱託することができる旨の規定が次のように新設されたのです。

第二十三条【行政庁の訴訟参加】
裁判所は、処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者若しくはその行政庁の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その行政庁を訴訟に参加させることができる。
2 裁判所は、前項の決定をするには、あらかじめ、当事者及び当該行政庁の意見をきかなければならない。
3 第一項の規定により訴訟に参加した行政庁については、民事訴訟法第四十五条第一項及び第二項の規定を準用する。

5-⑩仮の救済制度

行政事件訴訟法は、処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げないとして、執行不停止の原則を定めています。

第二十五条【執行停止】
処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。
3 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
4 執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない。
5 第二項の決定は、疎明に基づいてする。
6 第二項の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。
7 第二項の申立てに対する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
8 第二項の決定に対する即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しない。

一定の要件を満たす場合は、裁判所は、当事者の申立てにより、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止をすることができるとしています。(上記代25条2項)これも法改正により、より広く許容されるようになりました(ややこしくならないように、どのように広くなったかは、あえて記載しません。気になる人は、ネットで検索してみてください。ただ、法改正で何がどう変わったかまでは、おそらく試験には出ないと思いますが。)

そして、法改正前は、義務付け訴訟や差止訴訟に関する明文の規定が存在しなかったことは5-⑥⑦で説明しました。仮の義務付け、仮の差止めが認められる余地は殆どなかったため、法改正により、義務付け訴訟、差止訴訟の明文規定と共に、仮の義務付けと仮の差止めの裁判に関しても、明文の規定が設けられました。

第三十七条の五【仮の義務付け及び仮の差止め】
義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
2 差止めの訴えの提起があつた場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずること(以下この条において「仮の差止め」という。)ができる。
3 仮の義務付け又は仮の差止めは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、することができない。
4 第二十五条第五項から第八項まで、第二十六条から第二十八条まで及び第三十三条第一項の規定は、仮の義務付け又は仮の差止めに関する事項について準用する。
5 前項において準用する第二十五条第七項の即時抗告についての裁判又は前項において準用する第二十六条第一項の決定により仮の義務付けの決定が取り消されたときは、当該行政庁は、当該仮の義務付けの決定に基づいてした処分又は裁決を取り消さなければならない。

このように、仮の義務付けは、義務付けの訴訟の提起があった場合に、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことができない損害を避けるために緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることができることとされました。

仮の差止めは、差止めの訴えの提起があった場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことができない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならないことを命ずることができることとされました。


行政書士法人ひとみ綜合法務事務所のホームページにおいては、コロナ禍において有用な情報を随時発信し、特に公式手引きがわかりにくかったと思われる家賃支援給付金、一時支援金等の申請解説記事に至ってはツイッターを介して12万人以上の人が閲覧され、全国の事業主様から感謝の声が届きました。

6.おわりに

行政事件訴訟とは、行政上の法律関係に関する訴訟で、この手続きについて定めた法律が、行政事件訴訟法です。

令和4年の今年は、沖縄県が日本に復帰してからちょうど50年節目の年。米軍基地や飛行場からの騒音被害を受ける住民らが合同で原告となって国を訴える行政訴訟など、静かで平和な暮らしを望む住民は、不条理な日常をこれまで幾度も司法に訴え、救済を求めてきました。嘉手納基地からの騒音被害訴訟は、1982年の第1次は原告が900人ほどでしたが、現在の第4次では3万5千人以上と、全国最大級です。

裁判所は、騒音被害に対する損害賠償は命じても、米軍機の飛行差し止めの訴えは日米安全保障条約や日米地位協定の規定を理由に、「基地の管理・運営権は米国に委ねられ、国は米軍機の運航を規制、制限できる立場にない」として一貫し、止める手立てがないまま住民生活は置き去りにされてきました。

沖縄は重い基地負担だけでなく、米兵による女性への性犯罪、深刻な人権侵害である暴行事件も絶えません。ロシアによるウクライナ侵攻により、「台湾有事は日本の有事」といった発言をして勇ましい政治家と称えられる光景が見られるようになりましたが、武力衝突に巻き込まれる可能性が高い沖縄県民を守る議論をまず、すべきではないでしょうか。