行政書士試験対策と行政書士業務~②行政不服審査法と生活保護~

Law Study Skills Guide to pass the National Gyoseishoshi Lawyer Licensing Examination and about services of Gyoseishoshi Lawer
~②Administrative Complaint Review Act and Public Assistance in Japan

1.はじめに

現役特定行政書士による、行政書士試験対策ブログ第2弾の今回は、前回の行政手続法同様に出題数が多い「行政不服審査法」について無駄なく(時間は貴重)かつ行政書士実務にも絡め(行政書士試験合格後、特定行政書士になるための試験にも、行政不服審査法の内容は必須の知識)わかりやすく解説します。

ブログを一読するだけで無駄なく自然と必要事項が頭に入るよう工夫して書いていますが、特に覚えてほしい重要事項は□で囲んでいます(条文が殆ど、すべての基本が条文だから。でも重要な条文がどれか、法律初学者にはわかりづらいものです)。

行政不服審査法は、2016年4月に抜本的改正がされました。

There has been the major amendment of the Administrative Complaint Review Act in April 2016.

この行政不服審査法改正によって、不服申立人の地位の向上と、適正な手続の保障がより手厚くなりました。

This amendment was executed to ensure that the status of petitioners to be improved and the administrative procedures to be implemented appropriately.

この数年は、改正された行政不服審査法に基づいて様々な行政手続が構築されてきました。

Multifarious administrative procedures have been conducted since the amendment of the Administrative Complaint Review Act over these years.

不服申立人が口頭で意見を述べる機会を保障することは、この適正な手続を保障する上で重要な要素ですから、改正前の行政不服審査法における異議申立制度においても原則として口頭意見陳述が認められていました。

It is a crucial element in guaranteeing the appropriate implementation of administrative procedures to ensure the opportunity for petitioners to state their opinion orally so the opportunity to give an oral opinion statement had been acknowledged in principle even under the previous objection filing mechanism before the Act was amended.

2.行政不服審査法とは?

お客様から、「行政不服審査法とはどんな法律ですか?」と聞かれたら、行政不服審査法第1条を見て頂くのが正確でわかりやすいです。
市販のテキストやYouTube講師の説明も、ほぼこの第一条をかみ砕いて説明しているだけなので、それなら条文そのまま覚えた方が、行政書士試験の記述問題においても適切な用語が出てきやすくなります。

第一条(目的等)(Purpose)
この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。

The purpose of this Act is to establish a system for allowing citizens to file complaints against administrative agencies broadly under simple, prompt and fair procedures with regard to illegal or unjust administrative dispositions of administrative agencies or acts involving the exercise of public authority, with the aim to relieve the rights and interests of citizens, and to ensure proper operations of the administration.

すなわち、行政不服制度の目的は以下の2つ。
①簡易迅速な手続によって国民の権利利益を救済
②行政の適性な運営を確保

行政庁による公権力の行使について、行政庁に対して不服を申し立てる手続きには、次の2種類があります。

①『行政不服審査法(今回ブログ解説)』による『行政庁』に対する行政上の不服申立て
②『行政事件訴訟法(次回ブログ解説)』による『裁判所』に対する行政事件訴訟
※ただし、①の不服申立てを経てからでないと、②の訴訟提起ができないケースもあります。

私が行政書士としてお客様に①と②の違いを聞かれた際は、「行政上の不服申立ては手数料も無料」を強調しています。

法律用語の意味確認!
・行政庁:行政主体(=行政を行う権利と義務を持ち、自己の名および責任で行政を行う団体・法人、たとえば国、地方公共団体(=都道府県、市町村、特別地方公共団体)、国民生活センターや国立公文書館といった独立行政法人)の意思を決定し、外部に表示する行政機関のこと。行政庁と行政主体との違いは、『行政庁は原則、独任制』であること。行政庁の例は、各省大臣、知事、市町村長、税務署長、保健所長など。

・公権力:国家や公共団体による統治において、国民に対してもっている権力。その権力を行使する主体。

行政行為には公定力(=瑕疵カシ ある行政行為であっても、正当な権限のある機関によって取り消されない限り、一応有効として取り扱われる効力のこと)があるので、たとえば生活困窮した人が生活保護申請をしたのに却下となった場合、権限のある機関に取り消しをしてもらう必要があるのです。

行政の行為によって権利を侵害された私人の権利の救済を図るための法律を総称(=まとめて呼ぶこと)して、行政救済法といいます。(※行政救済法という法律はありません。)行政救済法には、国家賠償法、行政不服審査法、行政事件訴訟法があります。

3.平成26年、52年ぶりに行政不服審査法の本格的な改正

旧行政不服審査法は、昭和37年に制定・施行(せこう、しこう、どちらの読み方も間違っていません。成立した法令の効力を発生させるという意味)されて以降、平成26年に抜本的な改正が行われるまで、50年以上も本格的な改正がなかった法律です。

なぜ改正が行われたかというと、その背景には、平成5年の行政手続法の制定、平成16年の行政事件訴訟法(次回の試験対策ブログで解説予定)等の関連法制度の整備がされたことがあります。

改正のポイント
・審理員による審理手続きの導入
・行政不服審査会等への諮問手続の導入
・審査請求人と参加人の権利の拡充(証拠書類等の謄写・処分庁への質問等)
・不服申立期間が60日→3ヶ月に延長
・不服申立ての手続きは審査請求に一元化
・審理の迅速化、不服申立前置の見直し

なお、改正された行政不服審査法の施行は平成27年4月1日でした(ここまで覚える必要はないですが)。

4.行政不服審査法は一般概括主義(いっぱんがいかつしゅぎ)を採用している

一般概括主義というのは、行政庁の処分や不作為に不服のある人は、この行政不服審査法に基づく不服審査の請求が原則的に全ての処分について(行政不服審査法第7条や個別法の規定により適用除外とされている処分等を除き)認められているということです。

言い換えれば、処分や不作為に不服のある人は、個別法令等に不服審査を認める特段の定めがなくても、行政不服審査法によって不服審査を請求することができるということです。

国の行政機関による処分等だけでなく、法律や条例に基づく地方公共団体の行政機関による処分等についても、行政不服審査法は適用されます。

ずいぶん昔の話ですが、昭和37年に行政不服審査法が制定される前の祈願法(明治23年制定ですから、本当に昔の法律ですね!)では、列記主義という、不服申立てや訴訟は法が個別に列記したものに限るという、国民の権利利益の救済がされにくい制度になっていました。行政不服審査法による不服申立制度は、旧祈願法よりも、国民の権利利益の救済の整備と拡充がなされたということです。

では、この一般概括主義を定める行政不服審査法の条文を見ていきましょう。

行政不服審査法第2条(処分についての審査請求)
(Request for Review with Regard to Dispositions)
行政庁の処分に不服がある者は、第四条及び第五条第二項の定めるところにより、審査請求をすることができる。

A person who is dissatisfied with a disposition reached by a administrative agency may file a request for review pursuant to the provisions of Article 4 and Article 5, paragraph(2).

行政不服審査法第3条(不作為についての審査請求)
(Request for Review with Regard to Inaction)
法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分もしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、次条の定めるところにより、当該不作為についての審査請求をすることができる。

When a person has applied for a disposition with an administrative agency based on laws and regulations but the administrative agency takes no action for the application based on laws and regulations (hereinafter referred to as “inaction”; the same applies hereinafter) although a certain period of time has elapsed after the relevant application, the person may file a request for review with regard to the relevant inaction pursuant to the provisions of the following Article.

処分について審査請求をする法律上の利益がある人、その処分によって自分の権利もしくは法律上保護された利益を侵害された、あるいは必然的に侵害されるおそれのある人であれば、処分の相手方でなくても審査請求をすることができると考えられています。

ただし、行政不服審査法第7条1項各号において、不服審査を適用することが相応しくない(ふさわしくない)12類型の処分と不作為については、行政不服審査法の適用を除外しています。

まずは、条文そのままを見てみましょう。この行政不服審査法の適用除外も、行政書士試験、特定行政書士考査どちらでも出題される可能性があります。(お客様から質問されたとき、申請から不服申立てまで総合的にサポートする特定行政書士が、主たる行政法の条文に明記されていることに答えられないようでは困りますよね?)

行政不服審査法第7条(適用除外)
(Exclusion from Application)
次に掲げる処分及びその不作為については、第二条及び第三条の規定は、適用しない。

(1) The provisions of Articles 2 and 3 do not apply to the following dispositions and inaction pertaining thereto:

一 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分

(i) dispositions rendered in the nature of any resolution of both or either houses of the Diet, or by assemblies of local public entities;

→選挙で選ばれた国民の代表により国会の議決でされた処分等を不服審査の対象としないことは、理解しやすいと思います。

二 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分

(ii) dispositions rendered by the judgement of any court or judge, or made in the nature of the execution of any such judgement;

→三権分立ですから、司法である裁判所が除外されるのも、当然ですね。

三 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を経た上でされるべきものとされている処分

(iii) dispositions directed in the nature of an express instruction by a resolution of both or either houses of the Diet, or assemblies, of local public entities, or dispositions rendered based upon the consent or approval of the relevant houses or assemblies, where such consent or approval is necessary;

→1号とよく似ていますね。1号の国会・議会関係の処分も、この3号の国会・議会の同意・承認の上でされる処分も、やはり三権分立を考えると立法機関ですから除外されるのはわかりやすいですね。

四 検察官会議で決すべきものとされている処分

(iv) dispositions to be decided by the Audit Commission;

→検察官会議というのは、憲法第90条で定められる独立した機関である会計検査院の意思決定機関のことです。そのため、当然に除外されるわけです。

憲法第90条
国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
②会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

↑これら行政不服審査法第7条1の1~4号は、行政手続法で「処分」と「行政指導」の適用除外にもなっています。覚えておきましょう!そもそも、処分に該当しないので、不服審査の対象にもならないということですね。

五 当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの

(v) dispositions to confirm or create a legal relationship between parties, wherein either party to the legal relationship is to stand as a defendant as prescribed in the provisions of laws and regulations;

とてもわかりにくい説明ですが、これは『形式的当事者訴訟』のことを指します。形式的当事者訴訟は、例を挙げた方がわかりやすいです。

公共の利益の増進と私有財産の調整を図るため、土地収用法という法律に基づいて各都道府県に置かれている、収用委員会という行政委員会があります。この委員会は、都道府県知事から独立して公正中立な立場で権限を行使しますが、何をするかというと、収用の裁決申請に基づいて、起業者と土地所有者等との間における土地の区域、損失の補償などの争いを中立の立場で公正に審理して、適正な補償金の額などを最終的に裁決で決定してくれます(当事者間で協議成立の場合は和解解決も可能)。

これだけでは、やはり理解しにくいかもしれませんので、さらに説明します。

憲法第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2.財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。
3.私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。

Article 29. The right to own or to hold property is inviolable.
2. Property rights shall be defined by law, in conformity with the public welfare.
3. Private property may be taken for pubic use upon just compensation therefor.

このように憲法第29条第1項で、私有財産権が保障されています。また、3項では、正当な補償の下にその私有財産を公共のために用いることもできるとされています。このことを具体的な手続として定めているのが、土地収用法なのです。土地収用法は、私有財産権と公共の利益との調整を図り、国土の適正で合理的な利用に寄与することを目的として、公共事業に必要な土地等の収用(=特定の公共事業のために正当な補償の下に、権利者の意思にかかわらず土地等の所有権をはじめその他の権利を移転または消滅させること)または使用の要件、手続、効果、損失の補償などを定めています。

たとえば、公園や鉄道といった公共事業を行うために、新たに土地を必要とする場合、その事業を行う人(起業者)は、土地所有者や関係者と話し合って、合意すれば任意の売買契約を結んで必要な土地を取得します。

でも、その金額(補償金の額)について合意できなかったり、土地の境界や所有権について争いがあるなどの理由で、土地を取得できない場合があります。そうしたとき、起業者は、この土地収用法に基づいて、国土交通大臣又は都道府県知事による事業認定を受けた後、収用委員会に対して収用の裁決申請をすることができるのです。

収用委員会は、起業者からこの裁決申請がされると、起業者、土地所有者および関係人の意見を聴くため審理を開いたり、調査をして、収用する土地の範囲や補償金の額などを決めるというわけです。

必要な前提知識の説明を丁寧にしたので、ようやくここから、当事者訴訟についてです。市販のテキストでは、ここまで詳しく書いていないと思うので、どうしても丸暗記になりがちですね。言葉だけ覚えても、その内容、中身を理解していないと、結局実務において使える知識になりません。

収用委員会の裁決のうち、損失の補償について不服がある場合、裁決書の製本の送達を受けた翌日から起算して6か月以内に、裁判所に訴えを提起することができます(これは覚えなくていいですよ。読み進めてくださいね)。

この場合、訴えを起こす人が土地所有者または関係人であるときは、起業者を被告としなければなりません。訴えを起こす人(=訴えを提起する人)が起業者であるときは土地所有者または関係人が被告となります。
これが、当事者訴訟です。

さあ、もう一度、行政不服審査法第7条1の5の条文と照らし合わせてみましょうか。

5 当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの

損失の補償についての不服は、当事者訴訟によってのみ争うことができます。行政不服審査法第7条5で適用除外になっている通り、審査請求の対象になりませんし、次回ブログで解説予定の抗告訴訟(裁決取消訴訟)によって争うことはできないのです。

「こんな細かいところまで、行政書士試験に出るの?」と思われるかもしれませんが、実際出題されています。これが、実際の過去問題です。

平成24年-問44 記述式 行政法

Xは、A県B市内に土地を所有していたが、B市による市道の拡張工事のために、当該土地の買収の打診を受けた。Xは、土地を手放すこと自体には異議がなかったものの、B市から提示された買収価格に不満があったため、買収に応じなかった。ところが、B市の申請を受けたA県収用委員会は、当該土地について土地収用法48条に基づく収用裁決(権利取得裁決)をした。しかし、Xは、この裁決において決定された損失補償の額についても、低額すぎるとして、不服である。より高額な補償を求めるためには、Xは、だれを被告として、どのような訴訟を提起すべきか。また、このような訴訟を行政法学において何と呼ぶか。40字程度で記述しなさい。

正解例
B市を被告として、損失補償の増額請求の訴えを提起すべきで、形式的当事者訴訟と呼ぶ。(41字)

このように、土地収用に伴う損失補償金の増額請求訴訟というのは、形式的当事者訴訟の典型例なのです。

そして、もう一つ行政書士になった後の実務や特定行政書士の考査試験においても役立つ知識としても覚えておきたいのは、収用委員会の裁決のうち、損失の補償以外についての不服がある場合は、審査請求をすることができます。これは、形式的当事者訴訟ではないため、行政不服審査法第7条1の5に定める適用除外にはなりません。
同様に、損失補償以外についての不服がある場合は、審査請求だけでなく、抗告訴訟(次回試験対策ブログで解説しますね)も直接提起できます(審査請求の有無にかかわらず)。

では、行政不服審査法第7条に戻りましょう。

六 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分

(vi) dispositions rendered by a public prosecutor, public prosecutor’s assistant officer, or judicial police official pursuant to laws and regulations relating to criminal cases;

→刑事事件関係の処分が「簡易迅速な行政不服審査法による手続」になじまないことも理解しやすいと思います。

七 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合も含む。)に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、収税官吏(かんり)、税関長、税関職員又は徴税吏員(ちょうぜいりいん)(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び金融商品取引の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて証券取引等監視委員会、その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。)、財務局長又は財務支局長がする処分

(vii) dispositions rendered by the Commissioner of the National Tax Agency, directors of a Regional Taxation Bureau, chiefs of a tax office, tax collectors, superintendents of custom houses, custom officers, or local tax officials (including those who perform the duties of these officials pursuant to the provisions of other laws and regulations), pursuant to laws and regulations relating to national or local tax law violations (including cases where the relevant laws and regulations are applied mutatis mutandis pursuant to other laws and regulations), and dispositions rendered by the Securities and Exchange Surveillance Commission, personnel of that Commission (including persons deemed as its personnel pursuant to the provisions of the relevant laws and regulations), directors-general of a Local Finance Bureau, or directors-general of a Local Finance Branch Bureau pursuant to laws and regulations relating to violations of financial instruments transactions regulations (including cases where such laws and regulations are applied mutatis mutandis pursuant to other laws and regulations);

→ 国税に関する法律に基づき税務署長等が行う処分については、行政不服審査法ではなく別の法律に基づく不服申立てになります(国税通則法)。そのため、行政不服審査法の適用除外とされています。

このように、行政不服審査法は一般法であることから、特別法に別の規定があるとその規定が優先されます。つまり、行政不服審査法7条によって審査請求をすることができない処分または不作為の場合も、別に法令で当該処分または不作為の性質に応じた不服申立て制度を設けることは可能なのです。
(行政不服審査法第8条:前条の規定は、同条の規定により審査請求をすることができない処分又は不作為につき、別に法令で当該処分又は不作為の性質に応じた不服申立ての制度を設けることを妨げない。)

八 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分

(viii) dispositions rendered, towards the achievement of educational or training-oriented goals, to students, pupils, elementary school children or pre-school children or to their custodians, or to trainees in schools, short-course training schools, training schools, and professional training institutes;

→たとえば、学校教育法による市町村教育委員会による児童生徒の出席停止命令は行政不服審査法の手続による不服申立てを認めるのは適当ではないということです。

九 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院、少年鑑別所又は婦人補導院において、収容の目的を達成するためにされる処分

(ix) dispositions rendered to effectuate accommodation in prisons, juvenile prisons, jails, detention facilities, detention facilities of the Japan Coast Guard, juvenile training schools, juvenile classification homes, and women’s guidance homes;

→刑事施設内の処分に対する不服は、別の手続で争うべきものとされています。受刑者に対する刑罰の執行など、行政不服審査法になじまないのは明らかですね。

十 外国人の出入国又は帰化に関する処分

(x) dispositions concerning departure and immigration or naturalization of foreign nationals;

→帰化申請の許可処分は審査請求ができませんが、難民認定処分は出入国管理及び難民認定法(いわゆる入管法)に基づいた不服申立てができます。(特別法の適用ですね。)

十一 専ら(もっぱら)人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分

(xi) dispositions exclusively based upon results of examinations or tests for certifications regarding a person’s expertise; and

→たとえば行政書士試験の結果についての処分(不合格)など、国家試験の結果が不服審査に相応しくないことも明らかといえるでしょう。

十二 この法律に基づく処分(第五章第一節第一款の規定に基づく処分を除く。)

(xii) dispositions based on this Act (excluding dispositions based on the provisions of Chapter V, Section 1, Subsection 1).

→申請請求の最中の処分などが、この適用除外に該当します。

2.国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。

The provisions of this Act do not apply to dispositions rendered to national government organs, local public entities, other public entities, or their organs, for which these organs or entities are the parties subject to the dispositions with their distinct status as governmental entities, and to inaction pertaining thereto.

→この条文はわかりにくいですね。「固有の資格」というのは、私人(国民)と区別するために用いられる概念です。行政不服審査法第1条目的において定められている「国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図る」国民=私人の権利の簡易迅速な手続による救済のための行政不服審査制度なので、本来、国や国の機関が審査請求する立場にないことが当然です。ただ、国の機関でありながら、私人と同視して審査請求の適格が認められる例外的なケースもあります。

とはいえ、行政不服審査制度は、行政作用によって個別の権利利益の侵害を受けた私人(国民)を簡易迅速に救済するための制度ですから、本来国に審査請求の適格を認めることができないのが原則です。国が個別の権利利益の侵害を受けた私人と同一の立場にある場合(=固有の資格に基かない場合)にのみ、例外的に審査請求の適格が認められるにすぎないということです。

5.不服申立ての種類は「審査請求」のみ

どういうわけか、市販の行政書士試験対策テキストには『不服申立ては3種類』など書かれているのですが(審査請求、再調査の請求、再審査請求の3種類としているようです)平成26年行政不服審査法改正により不服申立ての種類は原則「審査請求に一元化」されました。このことは、日本行政書士会連合会の特定行政書士法定研修テキストにも記載されています。

お客様から、「不服申し立てはどういう場合にできるのですか?」と聞かれたら、行政不服申立手続代理業務ができる特定行政書士として、私は次のように回答します。

「都道府県知事や市町村長といった行政庁の法令に基づく行為のうち、たとえば生活保護申請に対する応答といった行政庁の処分や、許認可の取消しなど公権力の行使にあたる行為に不服がある場合は、処分についての審査請求をすることができます。

個別の法令に特別の定めがある場合は、審査請求の前に処分庁といってその処分をした行政庁、たとえば大阪市で申請が却下されたら、大阪市長が行政庁ですから、処分庁である大阪市長に対する再調査の請求をすることや、審査請求についての裁決に不服がある場合は、再審査の請求もできる場合があります。

法令に基づく申請から相当の期間を経過しても、行政庁が何らの処分もしない、いわゆる行政庁の不作為がある場合は、不作為についての審査請求をすることができます。」

お客様から、こんな質問をされたこともありました。
「以前行政書士試験勉強を少ししたことがありますが、処分をした行政庁に対する不服審査の請求は、異議申立てですよね?」

行政書士の回答「行政不服審査法改正前の旧法においては、たしかに異議申立てと審査請求を呼び分けていましたが、現在は、処分庁、その上級行政庁、特別の審査機関いずれに不服審査を請求する場合も、一元的に審査請求と呼ばれています。」

審査請求は、個別法に特別の定めがある場合を除いては、処分庁の最上級行政庁が審査請求先となります。たとえば、大臣、都道府県知事、市町村長などです。

ただし、次のケースは例外です。
①処分庁に上級行政庁がない場合(処分庁が主任の大臣や外局として置かれる庁の長官である場合も)
→処分庁が審査請求先になります。

②処分庁の上級行政庁が主任の大臣や外局として置かれる庁の長等である場合
→その大臣や庁の長等が審査請求先になります。

6.審査請求の流れと終結

行政不服審査法の第二章が審査請求について。条文が長く繰り返しが多い箇所もあるので、試験と実務において重要なところを解説していきます。

第九条の審理員(Review Officers)とは、審査請求がされた行政庁(審査庁)に所属する職員のうちから、審理手続を担当する者として指名された職員のことを審理員といいます。

審査請求の審理手続は審理員が行いますので、処分に関与していないなどの要件を満たす職員から指名されます(審理員を指名するのは、審査庁)。ただ、行政委員会が審査庁である場合など、審理員が指名されない例外的なケースもあります。

この審理員は、審理手続を終結したあと、その結果を「審理員意見書」として取りまとめて、「審査庁」に提出します。

審理員意見書の提出を受けた審査庁は、他の第三者機関の関与がある場合や、審査請求が不適法である場合などを除き、第三者機関である行政不服審査会などに諮問しなければなりません。

審査請求の審理は原則として書面により進行しますが、申立てをすることで審査請求人や参加人が口頭で意見を述べることができます。
また、審査請求人や参加人は、審理員に対して、証拠書類や証拠物を提出することができます。審理員が提出期限を定めたときは、その期限までに提出しなければなりません。(審理員が指名されない場合は、審査庁に提出します。)

審査請求の流れとしては、まずその審査請求が適法であるかどうかの要件審理がされます。たとえば、審査請求ができる期間を過ぎていたら、審査請求自体が不適法となって、「却下」裁決が下されます。

行政不服審査法 第二節 審査請求の手続き Procedures for Filing Request for Review
第十八条 処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して一月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

2.処分についての審査請求は、処分(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定)があった日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

(1) A request for review with regard to a disposition may not be filed after three months passed from the day following the day on which the relevant person comes to know that the disposition was reached (when a request for re-investigation has been filed with regard to the relevant disposition, after one month has passed from the day following the day on which the relevant person comes to know that the decision was made for the relevant request for re-investigation); provided, however, that this does not apply when there are any justifiable grounds.

(2) A request for review with regard to a disposition may not be filed after one year has passed from the day following the day on which the disposition was reached (when a request for re-investigation has been filed with regard to the relevant disposition, from the day following the day on which the decision was made for the relevant request for re-investigation); provided, however, that this does not apply when there are any justifiable grounds.

審査請求は、書面(審査請求書)に必要事項を記載して、処分があったことを知った日の翌日から起算して3ヶ月以内に、審査請求先とされている行政庁に対してする必要があります。再調査の請求も同じです。

審査庁が行う裁決で、紛らわしく間違いやすいのが、「却下裁決」と「棄却裁決」の違いです。
却下裁決は、審査請求が不適法である場合に、本案の審理を拒否する判断です。一方、棄却判決は、適法になされた審査請求の本案の審理を行った上で、審査請求人の主張を退け行政庁の処分を是認する判断のことです。条文を確認しておきましょう。

行政不服審査法 第五節 裁決
Section 5 Determination

第四十四条(裁決の時期)(Timing of Making Determination)
審査庁は、行政不服審査会等から諮問に対する答申を受けたとき(前条第一項の規定による諮問を要しない場合(同項第二号又は第三号に該当する場合を除く。)にあっては審理員意見書が提出されたとき、同項第二号又は第三号に該当する場合にあっては同項第二号又は第三号に規定する議を経たとき)は、遅滞なく、裁決をしなければならない。

第四十五条(処分についての審査請求の却下又は棄却)
(Dismissal with or without Prejudice of Request for Review with Regard to Disposition)
処分についての審査請求が法定の期間経過後にされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。
2.処分についての審査請求が理由がない場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。
3.審査請求に係る処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し、又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮した上、処分を取り消し、又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却することができる。この場合には、審査庁は、裁決の主文で当該処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない。

つまり、審査請求の手続きの終結は、審査庁が審査請求に対する判断として、次のいずれかの「裁決」を行うことで終結します。

①認容(処分の全部又は一部の取消しなど)
②棄却(審査請求に理由がない)
③却下(審査請求が法定の期間経過後にされた場合など、不適法)

この裁決の種類は、再調査の請求についての決定、再審査請求についての裁決でも同様です。
審査請求については、処分庁・不作為庁やその上級行政庁である審査庁は、裁決で申請を拒否する処分を取り消す場合や、申請に対する不作為が違法・不当である旨を宣言するとき、その申請を認容する等の処分を命ずることができます。

裁決は、主文や事案の概要、理由等を記載し、審査庁が記名押印した裁決書の謄本が審査請求人に送達されることによって、効力が発生します。

7.審査請求をする方法~書面(審査請求書)が原則

行政不服審査法第十九条(審査請求書の提出)
Submission of Written Request for Review
審査請求は、他の法律(条例に基づく処分については、条例)に口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、政令で定めるところにより、審査請求書を提出してしなければならない。

2.処分についての審査請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 審査請求人の氏名又は名称
二 審査請求に係る処分の内容
三 審査請求に係る処分(当該処分について再調査の請求についての決定を経たときは、当該決定)があったことを知った年月日
四 審査請求の趣旨及び理由
五 処分庁の教示の有無及びその内容
六 審査請求の年月日

3.不作為についての審査請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 当該不作為に係る処分についての申請の内容及び年月日
三 審査請求の年月日

4. 審査請求人が、法人その他の社団若しくは財団である場合、総代を互選した場合又は代理人によって審査請求をする場合には、審査請求書には、第二項各号又は前項各号に掲げる事項のほか、その代表者若しくは管理人、総代又は代理人の氏名及び住所又は居所を記載しなければならない。

※令和3年2月15日に総務省による「押印を求める手続きの見直し等のための総務省関係政令の一部を改正する政令」が公布され、同日から審査請求書への押印が不要になりました。これは、再調査の請求書、再審査請求書も同様に、押印不要になりました。

他の法律又は条令で口頭による審査請求をすることを認めている場合は、口頭で行うことも可能です(社会保険関係の法律などに口頭による請求を認める例があります)。ただ、原則は審査請求書を正本と副本の計2通提出して行います(処分庁が申立先となる場合は、副本の提出は不要)。

代表者(管理人)、総代又は代理人がいる場合は、代表者(管理人)、総代又は代理人の氏名及び住所(又は居所)も申請書に記載が必要です。

そして、再調査の請求についての決定を経た場合の審査請求は、その決定があったことを知った日の翌日から起算して1月以内にしなければいけません。再調査の請求には、「再調査請求書」の提出が原則必要です。

再審査請求は、審査請求の裁決があったことを知った日の翌日から起算して、1月以内にしなければなりません。再審査請求の場合は、「再審査請求書」を原則提出します。

そして注意が必要なのは、処分又は裁決があった日の翌日から起算して1年を経過すると、たとえ処分又は裁決があったことを後から知っても、原則もう不服申立てをすることはできません。

上記期間のいずれについても、郵送に要した日数は算入されません。また、正当な理由がある場合には、期間の経過後も例外的に認められます(ただし、審査請求期間の経過後に審査請求をすることについての正当な理由等を申請書に記載する必要あり)。

不作為についての審査請求は、不作為が解消されるまでの間は、いつでも不服申立てができます。

不服申立てをすることができる期間(不服申立期間)はとても重要なので、上の行政不服審査法第18条「(処分があったことを知らなくても)処分があった日の翌日から起算して1年以内(客観的期間といいます)」「処分があったことを知った日の翌日から起算して3月以内(これは主観的期間といいます)」このあたりは正確に覚えましょう。試験対策だけでなく、行政書士実務においても役立ちますから。

行政不服審査法 第八十二条(不服申立てをすべき行政庁等の教示)
Instruction on Administrative Agencies with Which Complaint should be Filed
行政庁は、審査請求若しくは再調査の請求又は他の法令に基づく不服申立て(以下この条において「不服申立て」と総称する。)をすることができる処分をする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を書面で教示しなければならない。ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。

When an administrative agency renders a disposition for which a request for review, request for re-investigation, or administrative complaints based on other laws and regulations (hereinafter collectively referred to as a “complaint” in this Article) may be filed, the administrative agency must instruct the party subject to the disposition, in writing, that a complaint may be filed with regard to the relevant disposition, the administrative agency with which a complaint should be filed, and the period of time during which a complaint may be filed; provided, however, that this does not apply when the relevant disposition is rendered orally.

処分をした行政庁(=処分庁)は、不服申立てをすることができる処分を書面でする場合には、処分の相手方に対して、書面で不服申立先となる行政庁、不服申立期間などを教示(教えてあげる)しなければいけないというのが、この82条の条文の内容です。
実際の申請却下通知と不服申立ての教示を見てみましょう。


これは、生活保護を受けている方が諸事情により他県に転居を希望し、その転居費用の支給を福祉事務所に対し申請したときの却下通知です。
この事案では、不服申立てをせず、あえて再申請をしたところ、結果として希望通り引越費用の支給が決定し、引越をすることができました。

8.再調査の請求

再調査の請求とは、処分庁に対して行う不服の申立てのことです。再調査の請求は、次の場合にすることができます。
①法律(個別法)に再調査の請求をすることができる旨の定めがあること。
②行政庁の処分について、処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることが出来る場合において、まだ審査請求をしていないこと。

処分庁に再考を促すための制度なので、不作為は再調査請求の対象にはなりません。

再調査の請求書には、次の事項を記載します。

・再調査の請求人の氏名(又は名称)及び住所(又は居所)
・再調査の請求に係る処分の内容
・再調査の請求に係る処分があったことを知った年月日
・再調査の請求の趣旨及び理由
・処分庁の教示の有無及び教示の内容
・再調査の請求の年月日
(一定の事由に該当する場合の記載事項)

代表者(管理人)、総代又は代理人がいる場合は、代表者(管理人)、総代又は代理人の氏名及び住所(又は居所)を記載します。
再調査の請求期間の経過後に再調査の請求をする場合は、再調査の請求期間の経過後に再調査の請求をすることについての正当な理由を記載します。

※再調査については、行政不服審査法第61条において、第19条第2項等を準用するとされています(条文そのものは、〇条、〇条などと数字が殆どなので、ここでは省略し要点のみ記載しています。)

9.再審査の請求

(再審査請求期間)
(Period for Filing Request for Re-examination)
第六十二条 再審査請求は、原裁決があったことを知った日の翌日から起算して一月を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

Article 62 (1) A request for re-examination may not be filed after one month passed from the day following the day on which the relevant person comes to know that the original determination was made; provided, however, that this does not apply when there are any justifiable grounds.

2 再審査請求は、原裁決があった日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

(2) A request for re-examination may not be filed after one year passed from the day following the day on which the original determination was made; provided, however, that this does not apply when there are any justifiable grounds.

法律(個別法)に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合には、再審査請求をすることができます。

再審査請求ができる場合であっても、再審査請求をせずに取消訴訟を起こすこともできます。

再審査請求書は、申請書に以下の事項を記載します。
・再審査請求人の氏名(又は名称)及び住所(又は居所)
・再審査請求に係る処分又は裁決の内容
・審査請求についての裁決があったことを知った年月日
・再審査請求の趣旨及び理由
・裁決庁(審査請求についての裁決をした行政庁)の教示の有無及び教示の内容
・再審査請求の年月日

代表者(管理人)、総代又は代理人がいる場合:代表者(管理人)、総代又は代理人の氏名及び住所(又は居所)
再審査請求期間の経過後に再審査請求をする場合:再審査期間の経過後に再審査請求をすることについての正当な理由 

10.審査請求は特定行政書士、弁護士などに有償依頼できる

審査請求は、代理人によってすることができます。そして、代理人はその審査請求に関する一切の行為をすることができます。ただし、審査請求の取下げについては特別の委任を必要とします。

行政不服審査法第十二条(代理人による審査請求)(Request for Review by Agents)
審査請求は、代理人によってすることができる。
2.前項の代理人は、各自、審査請求人のために、当該審査請求に関する一切の行為をすることができる。ただし、審査請求の取下げは、特別の委任を受けた場合に限り、することができる。

(1) An agent for a requestor for review may file a request for review.
(2) The agent set forth in the preceding paragraph may undertake all acts for filing a request for review on behalf of the relevant requestor for review; provided, however, that the agent may undertake procedures for the withdrawal of the request for review only when having been specially entrusted.

委任契約等をしても、この取下げに関する特別の委任が必要とする旨と反する定めをすることは許されません。

代理人となる人に特段の制限はありませんが、報酬を目的として代理人になることができるのは、特別行政書士、弁護士など、一定の事件について個別法が認めている人に限られます。

11.審査請求をしても、受けた処分の効力は停止されない

お客様から行政書士がよく受ける質問の一つに、「不当な生活保護申請の却下があったとき、審査請求をすればすぐに保護費はもらえますか?」といったものがあります。

残念ながら、審査請求をしても、対象となった処分の効力は停止されません。これを、執行不停止の原則といいます(言い換えると、行政不服審査法は執行不停止の原則を採用している、ということです)。

執行停止という、審査請求人に仮の救済を与える仕組みがあるとはいえ、この執行停止の措置は当該処分の効力等を消滅させるものにすぎないのです。つまり、生活保護申請などの申請拒否処分に対する審査請求については、機能しないのです。たとえば、営業許可の申請拒否処分の効力を消滅させても、営業許可になるわけではないので、審査請求人が営業できることになるわけではないのです。そのため、執行停止は不作為についての審査請求に適用はされていません。

申請拒否処分や不作為についての仮の救済のためには、裁決まで仮に営業を許可するといった別の仕組みが必要ですが、残念ながらそのような仕組みは行政不服審査にはありません。そのため、こうした場合には直接裁判を起こして、裁判所に仮の義務付けを求めるしかないのです。次回ブログでは、行政事件訴訟法における仮の義務付けについて詳しく解説します。

行政不服審査法第二十五条(執行停止)(Stay of Execution)
審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。

A request for review does not preclude the effect of the disposition, execution of the disposition, or continuation of procedures.

受けた処分の効力を停止させるためには、審査請求に併せて審査庁に対して、「執行停止の申立て」をする必要があります。審査請求人の早期の救済の観点から、必要があると認めるときは職権で審査庁が執行停止の措置をとれることになっていますし、さらに一定の要件を満たす場合は執行停止の措置をとらなければならない、ともされています。

第二十五条 2
処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(以下「執行停止」という。)をとることができる。

(2) The reviewing agency that falls under the higher administrative agency of the Administrative Agency Reaching the disposition or the administrative agency reaching the disposition itself may suspend the effect of the disposition, execution of the disposition, or continuation of procedures in full or in part or take other measures (hereinafter referredto as a “stay of execution”), when finding it necessary, upon a petition filed by the requestor for review or by its authority.

第二十五条 3
処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取した上、執行停止をすることができる。ただし、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をとることはできない。

(3) The reviewing agency that does not fall under the higher administrative agency of the administrative agency reaching the disposition nor the administrative agency reaching the disposition itself may order a Stay of Execution, when finding it necessary, upon a petition filed by the requestor for review and after hearing opinions of the administrative agency reaching the disposition; provide, however, that the relevant reviewing agency may not take any measures other than suspending the effect of the disposition, execution of the disposition, or continuation of procedures in full or in part.

第二十五条 4
前二項の規定による審査請求人の申立てがあった場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は執行停止をしなければならない。ただし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでない。

(4) When a petition has been filed by the requestor for review pursuant to the provisions of the preceding two paragraphs, and the reviewing agency finds it urgently necessary for avoiding serious damage to be caused by the disposition or through the execution of the disposition or the continuation of procedures, the reviewing agency must order a stay of execution; provide, however, that this does not apply when the stay of execution is likely to seriously affect public welfare or when the action on the merits seems groundless.

執行停止の申立書の書式は特に決まっていないので、行政書士実務においては、審査請求書に執行停止を求める旨とその理由を記載したりします。

審査庁が執行停止をして、処分の効力を停止する判断をするのは、次のいずれかの場合です。

1.権利利益の救済の必要性、審査請求を認容する可能性など総合的に判断して執行停止の必要があると認める場合

2.原状回復が困難となるなど、重大な損害を避けるため緊急の必要性があると認める場合

審査請求人から執行停止の申立てがあった場合は、「重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるとき」には執行停止をしなければいけません。ただし、執行停止により、「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」と「本案について理由がないとみえるとき」は、上の行政不服審査法律25条4項の通り、執行停止は認められません。

いったん執行停止が認められても、事情の変更があったときなどは、執行停止が取り消されることもあり得ます。

行政不服審査法第二十六条(執行停止の取消し)(Revocation of Stay of Execution)
執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。

After ordering a stay of execution, if it has become clear that the Stay of Execution would seriously affect public welfare or when there have otherwise been any changes to the circumstances, the reviewing agency may revoke the stay of execution.

さらに、審査庁が「必要があると認める場合」に執行停止の措置がとれることは上の第25条の通りですが、あとの条文で出てくる40条では、審理員も必要と認める場合には執行停止をすべき旨の意見書を提出できるとされているのです。審査庁の主導で、柔軟な執行停止ができるようになっているわけです。

行政不服審査法第四十条(審理員による執行停止の意見書の提出)
(Submission of Written Opinions by Review Officers to Suggest the Necessity to Order Stay of Execution)
審理員は、必要があると認める場合には、審査庁に対し、執行停止をすべき旨の意見書を提出することができる。

When finding it necessary, a review officer may submit a written opinion to suggest the necessity to order a Stay of Execution to the reviewing agency.

行政書士の私の息子の小学校の卒業式だった令和4年3月12日土曜日、行政書士法人ひとみ綜合法務事務所の提携協力先の一つである社労士行政書士の山田六郎先生に(同姓同名くいだおれ創業者のお孫さん)奥様の手作りケーキを頂きました。手作りケーキを頂いたのは記憶もおぼろげな子どもの時以来、とても嬉しく良い思い出になりました。

12.おわりに

不服申立制度は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることを可能とすることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする制度です。

そして、特定行政書士は、裁判によらない形での行政内部の救済制度であるこの行政不服制度において、簡易迅速な国民の権利利益の保護や国民の行政に対する信頼の確保に業務として寄与することができます。

次回の行政書士試験対策ブログでは、行政上の不服申立制度においては救済が困難なケースでも救済の道を拡大できる、抗告訴訟の類型である義務付け訴訟、差止訴訟など、10年ほど前に大阪市に公立小中学校へのエアコン設置を求める義務付け訴訟を提起したことがある行政書士の私自身の経験も交え、行政書士試験突破に必要な重要事項を解説していく予定です。

行政書士法人ひとみ綜合法務事務所の令和4年冬鍋特集は今回で終了です。

行政書士試験対策と行政書士業務~②行政不服審査法と生活保護~”へ2件のコメント

  1. 山口 梨花 より:

    行政書士の試験を今年控えています。
    三木先生のブログには法律用語の説明も記載されていて、他のテキストなどを開かなくてもすごく勉強になります!
    行政法の条文も数多く、どれを覚えたらいいのか、何から目を通せばいいのか…いつも悩んでいますが、覚えた方が良い理由、解説、更には試験対策だけでなく行政書士になってからも役立つ情報を提供してくださり、すごく勉強になります。
    ブログではなく三木先生の行政書士試験対策テキストを作ってもいいのかな…と思うほど(笑)
    行政法の改正などの時事問題対策にもなりますし、行政不服審査法はイマイチピンと来てなかったのですが、目的も分かりやすく、理解出来ました。
    お客様に聞かれた時の答え方も書いてくださってるのはいいですね!
    一般の人にも分かりやすい説明はとても助かります。
    試験突破の重要事項!必ず読みますので楽しみに待っていますね!

  2. 鈴木直人 より:

    僕は、11月に行政書士試験を受けます。
    三木先生のブログでは、
    条文をすべて分かりやすく解説していて、
    わざわざ意味を調べなくてもよくて、
    とても読みやすかったです。
    そんな中、僕なりに審査請求の審理から、審査庁による審査請求までの流れを説明できるようになりました。
    まず、審査の方式は行政不服審査法は、
    その目的にあるように、簡易迅速な救済の手続です。したがって書面審理です。
    そこから審理員による審理が始まります。
    その過程は、処分庁が審査請求人に処分をだして、審査庁に審査請求人が審査請求をして、審査庁が審理員を指名して審理員が処分庁に審査請求書を送付して、処分庁が弁明書を審理員に提出、その弁明書を審査請求人に送付、審査請求人が審理員に反論書を提出する。そして、審理員が必要な審理を終えたと思ったときは、審理員は審理を終結して、その後審理員は直ちに審査庁に審理員意見書を提出し、審理員意見書を受けた審査庁は、裁決を行う前に原則として行政不服審査会に諮問を行い、行政不服審査会から答申を受けたら、審査庁は、
    審査請求を開始して、処分が不適法の場合は、却下、処分が適法ではあるが違法、不当ではない場合は棄却、処分が適法で
    あって違法、不当だと認められた場合は、
    認容(認容となると処分が取り消しになる)となります。
    このように説明できるようになったのは、
    三木先生のブログのおかげです。
    行政事件訴訟法のブログも待っています。

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