行政書士試験一般常識~改正民法と生活保護

Law Study Skills Guide to pass the National Gyoseishoshi Lawyer Licensing Examination and about services of Gyoseishoshi Lawer
~The revised Civil Code and Public Assistance in Japan

他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類、その他権利義務又は事実証明に関する書類作成を業とする行政書士になるための行政書士試験は、「行政書士の業務に関し必要な法令等」と「行政書士の業務に関連する一般知識等」という2つの試験科目で構成されています。

Gyoseishoshi Lawyers are certified experts authorized to prepare documents to be submitted to a public agency in order to gain license or approval, or documents relating to rights, duties and representation. Japan’s Gyoseishoshi bar exam is composed of two main sections: A legal section and a general knowledge section.

政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解の問題が14題、出題されます。

The general knowledge section requires you to answer a total of 14 questions from government, economics, society, technology, information privacy and reading.

法令等科目でいくら高得点を取っても、試験全体の得点が合格点を超えていたとしても、この一般知識の科目で4割以上得点しなければ行政書士試験は不合格になるので注意が必要です。

Failure to achieve 40% on the general knowledge section will result in failing grade, even if you achieved a passing grade on the main legal portion or in total.

平成30年6月に成立した、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする「民法の一部を改正する法律」(改正民法)が、令和4年4月1日施行(しこう又はせこう:法令の効力を発生させること)されました。私人相互間の権利義務関係を規律する私法の基本法が民法ですから、私たち市民の間の関係のルールを定めた法律なだけに、民法は私たちの日々の生活に関わるものばかりです。

The revised Civil Code has come into effect on April 1, officially lowering the age of majority in Japan from 20 to 18. Japanese Civil Code, so called Mimpo is a body of private law, concerning the relationship between private individuals.

行政書士試験対策も兼ねて、今日はこの改正民法と、年度末に多かった生活保護の方からの引越相談など、行政書士実務についてもご紹介します。

1.成人年齢の引き下げは明治9年以来約140年ぶり!
Lowering adulthood age in Japan is 1st in about 140 years!

近代の日本では、「20歳成人」が大人と子ともを線引きする基準として定着していました。明示29年(1986年)に民法が制定されて以来、成年年齢は20歳と定められてきました。これは、明治9年の太政官布告を引き継いだものといわれていますから、大人の入り口となる成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたこの成年年齢の見直しは、明治9年以来なのです。

松野博一官房長官も、3月31日の記者会見で、「146年ぶりの成年年齢変更で歴史的な節目」「若者の積極的な社会参加を促し、主体的な役割を果たしてもらうことは、社会に大きな活力をもたらす」と改正の意義を強調しました。

民法の定める成年年齢というのは、①単独で契約を締結することができる年齢という意味と、②親権に服することがなくなる年齢という意味を持ちます。

未成年者が一人で有効な契約をするには父母の同意が必要で、同意なくして締結した契約は、あとから取り消すことができます(未成年者取消権)。この未成年者取消権というのは、未成年者を保護するためのもので、未成年者の消費者被害を抑止する役割を果たしています。

そして父母は、未成年者の監護と教育をする義務を負います。
民法が定める成年年齢を18歳に引き下げたことで、18歳に達した者が一人で有効な契約をすることができ父母の親権に服さなくなったのです。

2.成年年齢の見直しの議論きっかけは「憲法」だった!
The motive behind the change of legal definition of an adult involves the Constitution!

1947年施行の日本国憲法は、安定性を保ちつつ時代の変化に適合させるため、憲法改正の要件を「衆参両院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民投票で過半数の賛成を必要とする」と、厳格に定めました。

国民投票の手続き法は、長く放置されていましたが、戦後60年の節目だった2005年に、衆院憲法調査会が、国民投票法を整備すべきだと方向性を打ち出したのです。そのとき、国の最高法規である憲法の改正に関わる国民の範囲について、若い世代も手続きに参加すべきと意見がされ、海外では18歳選挙権が主流だったことも踏まえ、2007年に投票権年齢を18歳以上と明記する国民投票法が成立しました。

その後、選挙権年齢を20歳から18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が2015年に成立しました。そして、2018年、成人年齢を引き下げる改正民法が成立したのです。

OECD加盟国の中で、成年年齢を18歳以外とする国は、19歳成年の韓国と20歳成年の日本とニュージーランドしかありませんでした。OECD(経済協力開発機構Organisation for Economic Co-operation and Development)これも一般知識で問われるかもしれませんので、しっかり解説します。
OECDの前身OEEC(欧州経済協力機構)は1948年に米国による戦後の欧州復興支援策であるマーシャル・プランの受入れ体制を整備するため、パリに設立されました。その後、欧州経済の復興に伴い、欧州と北米が対等のパートナーとして自由主義経済の発展のために協力を行う機構として、OEECが発展的に改組されて1961年、OECDが設立されたのです。日本は1964年に、現加盟国(オーストリア、ベルギー、デンマーク、仏、独、ギリシャ、アイスランド、アイルランド、伊、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英、米、カナダ)以外で初めて、非欧米諸国としても初めてOECDに加盟したのです。)

ちなみに、OECD加盟国の中で日本は三番目に男女間の賃金格差が大きいとされています。男性に比べて女性の昇進の機会が抑えられていたり、管理職比率が低いことから、格差に繋がっています。女性のキャリアアップを阻む目に見えない壁を表す言葉が、「ガラスの天井」これも一般知識で出題されたら確実に得点源に繋げたいところです。現在、日本の働く女性の過半数は非正規雇用で、これも男女の賃金格差を広げる要因になっています。

非正規雇用の7割がパート労働者です。パート労働に就くのは既婚女性が多く、一定の要件を満たせば社会保険の負担が生じないため、企業はパートを中心に非正規雇用をどんどん増やしてきたのです。妻の年収が103万以下なら、夫は配偶者控除を受けることができるので、所得税の負担が減ります。年収が103万を超えても配偶者特別控除がありますが、103万(条件によっては106万)を超えると妻にも社会保険料の負担が生じまるから、仕事量を調整するなど女性側が自ら収入を抑えてしまう実情もあります。

3.男女共に婚姻可能年齢が18歳に統一
The age at which both men and women can marry without need of parents’ permission has become 18

女性の婚姻開始年齢は16歳と定められていたので、18歳とされていた男性の婚姻開始年齢と異なっていましたが、今回の改正によって女性の婚姻年齢が18歳に引き上げられたので、男女の婚姻開始年齢が統一されました。

もともとは、男女間で心身の発達に差があるとして区別されてきたのですが、男女平等の観点も踏まえて法改正されました。

民法第731条
婚姻は、十八歳にならなければ、することができない。

4.成年年齢の引き下げによって変わること
Key changes under the new change in the legal age in Japan

・18歳、19歳でも、親の同意なしに様々な契約ができるようになります。たとえば、一人暮らしをするために賃貸契約を交わす、携帯電話を購入する、クレジットカードを作る、自動車を買うためにローンを組むといったことが可能になります。
ただし、2022年4月1日より前に18歳、19歳の人が親の同意を得ずに締結した契約は、施行後も引き続き、取り消すことができます。

・親権に服する事がなくなるので、18歳、19歳でも、どこで暮らすか(居所)、進学や就職といった進路を、自分の意思で決められるようになります。

・民法の成年年齢が民法以外の法律においても、各種行為をするための基準年齢とされているので、10年有効パスポートの取得や、公認会計士、司法書士、行政書士、社会保険労務士といった国家資格に基づく職業に就くことも可能となります。

・家庭裁判所において、性別の取り扱いの変更審判を受けることも18歳から可能になります。性同一性障害特例法は性別変更の審判を受けることができる年齢要件を20歳以上としていましたが、18歳以上に改められたためです。

5.成年年齢の引き下げによって変わらないこと
What has not changed under lowered adulthood age

健康面への影響や非行防止、青少年保護といった観点から、以下のようなものは従来の年齢制限が維持されます。

・お酒を飲んだり、たばこを吸うことができる年齢(20歳)
・国民年金の加入義務が生ずる年齢(20歳)
・競馬、競輪、オートレースといった公営競技の年齢制限(20歳)

6.事件を起こした18、19歳の実名報道が解禁
Allowing for the full names and faces of 18 and 19 offenders to be revealed for media reporting

改正少年法も改正民法と同時施行となって、事件を起こした18、19歳は「特定少年」と位置付けられ、起訴後は実名報道が可能となりました。改正少年法では、18、19歳の特定少年は立ち直る可能性がある存在として、18歳未満とも、20歳以上とも別の扱いとしています。

少年事件は刑期中の更生状況に応じて刑期が選択される不定期刑が適用されてきましたが、特定少年には成人事件と同様に、定期刑が適用されます。家庭裁判所が少年事件の送致を受けて、少年の成育歴や家庭環境を詳細に調査する従来の仕組みは維持されますが、特定少年については刑事処分が相当として原則逆送(検察官送致)とする対象事件が拡大されます。従来の「殺人など故意に人を死亡させた事件」に加え、「強盗や放火、強制性交等」など対象となる事件が拡大されます。

これまでは、事件を起こした少年の氏名や住所が推定されるような報道(推知報道)が禁じられていましたが、このルールも改められて、特定少年が起訴された場合はこのルールが適用されないこととなりました。

とはいえ、検察が起訴した18、19歳の特定少年の全事件で実名が明らかにされるわけではありません。法改正に至った国会審議では、実名報道に反対する意見が相次ぎました。衆参両院の法務委員会では、
「インターネットでの掲載により情報が半永久的に閲覧可能となることも踏まえ、特定少年の健全育成や更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならない」とする付帯決議がなされました。

最高検察庁は、起訴された特定少年の実名報道解禁を踏まえて、全国の検察庁に対して、
「犯罪が重大で地域社会に与える影響も深刻な事件については実名公表を検討すべきだ」とする考え方を示す通知を出しています。その典型例として、裁判員裁判対象事件が挙げられました。それ以外でも、社会の要請が高い場合などは実名公表の検討対象になり得るとされています。

7.生活保護での引越し
How to get Relocation Assistance

生活保護を受給している方から、様々な事情で引越しをしたいけれども先立つ費用がないため、役所から引越費用を支給してほしいという相談を受けることも少なくありません。

この通知書は、特定行政書士が作成した生活保護を受給している方の引越費用の支給を求める申請書について、引越費用を出しますよという決定文書です。

生活保護を受けている人が転居に際して引越の敷金等を必要とする場合は、転居費用の支給を求める申請をすることができます。また、家具や家電を引越し先に運ぶために引越し業者に支払う費用についても、支給を求める申請が可能です。

また、生活保護法に基づく申請が却下となった場合には、審査請求が可能です。とはいえ、行政機関である福祉事務所長(処分庁)は、法令に則って処分を行い、同じく行政機関である審査庁もまた、法令に則り判断をしますから、法令の規定が納得できないとか、制度そのものに対する不服を理由として処分を取り消してもらうことはできません。

そのため、こうした生活保護受給者の方からの引越費用を役所に出してもらって転居をしたいといった相談に対する具体的な行政書士実務においては、個々の状況を詳しくヒアリングした上で、「生活保護法による保護の実施要領について」という局長通知で被保護者が転居に際し、敷金等を必要とする場合に、どのようなケースであれば必要額を認定することができると規定されているか、列挙されている18要件からその方に必要と思われる部分を抜粋して説明することから始まる場合が多いです。

8.賃貸住宅のトラブルを防ぐために
To prevent tenant landlord disputes

成年年齢が18歳に引き下げられたことで、18歳、19歳の消費者トラブルが増えると指摘されています。全国の消費生活センターなどに寄せられる消費生活相談では、成人になりたての若者の相談件数が突出しています。行政書士の私も、大学生だった19歳の頃に「未成年者が親権者の同意なく結んだ契約は、原則取り消すことができる」ことを知らずに高額化粧品のセールスに引っ掛かって高額ローンを組んでしまい、親に迷惑をかけないよう自分で返そうと苦しんだ経験があります。

民間賃貸住宅における賃貸借契約は、契約自由の原則により、貸す側と借りる側の両者の合意に基づいて行われます。借地借家法26条以下並びに消費者契約法8条以下の強行規定(契約の内容を規制する規定)に反しない限りは、当事者間で内容を自由に決めることができます。

契約書は貸主側が作成するのが一般的ですが、賃貸借契約は諾成契約といって、賃貸人と賃借人が口頭で合意するだけでも成立します。つまり、契約書面がなくても賃貸借契約は成立するということです(※ただし、期間の定めのある建物賃貸借契約のうち、賃貸借契約の更新が認められず契約期間の満了により確定的に賃貸借が終了する定期建物賃貸借契約では、必ず書面により契約をすることが必要)。
通常は契約で合意したことを明らかにしておくため、詳細な契約書が作成されます。また、生活保護制度においても、住宅扶助費(家賃)を役所が生活保護受給者本人あるいは家主さんなどに直接支払うにあたっては、賃貸借契約書のコピーの提出が必要です。

特に退去するときに、原状回復をめぐるトラブルが起こりやすいのです。原状回復とは、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」として、国土交通省のガイドラインに定められています。

通常使用による破損や経年劣化によるものは家主の負担、通常の使用方法を超える使い方によって生じたものは借主、入居者の負担とされています。納得できないことは事業者、家主とよく話し合い、入居時は仲介業者や家主さんと一緒に部屋の現状をよく確認することが大切です。確認した内容をメモに残す、写真を撮るなど、後になって証拠として使えるよう記録しておくことも重要です。

賃貸契約書に、退去時に賃借人が負担する損害賠償額が契約書に定められていることがあります。契約の当事者は、損害賠償の額を予定し、契約で定めておくことができます。

民法第420条
1.当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
2.賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
3.違約金は、賠償額の予定と推定する。

契約自由の原則の具体的な一内容として、当事者は債務不履行について損害賠償の予定をすることが許されるのです。債務不履行とは、債務(義務)を果たさないことです。債務不履行には、①履行不能(債務の履行が不可能になってしまった状態)②履行遅滞(債務の履行が遅れている状態)③不完全履行(一応債務の履行があったものの、不完全な状態)の3種類があります。

賃借人が、賃貸借契約に関して賃貸人に損害を与えた場合に備えて損害賠償額があらかじめ契約書に規定されていることがありますが、民法90条、消費者契約法9条1号により無効となることもあります。そのため、賠償額を予定してそれを契約書に盛込んでも、実損額によっては予定賠償額通りに請求できない場合もあるということです。

生活保護制度上、必要に応じて公費で支給されることもある敷金は、賃借人が賃料を滞納したり、賃借人が不注意等によって賃借物に対して損傷・破損を与えた場合等の損害を担保(たんぽ、この場合は保証するという意味)するために、賃借人から賃貸人に対して預け入れるものです。

賃借物の明け渡しまでに、未払い家賃や損害賠償金債務など、賃貸人に対する賃借人の債務が生じていなければ、敷金は賃借人に対して全額返還されるべきものです。

賃借人の故意や不注意、通常の使用方法によらず賃借仏に損傷や汚損等を生じさせてその損害を賃借人が賃貸人に対して支払っていない場合は、賃貸人はその損害額を敷金から差し引いた残額を賃借人に返還します。

資金の返還請求は、契約で特に定めがない場合は、建物の明け渡しを行った後でなければできません。これは、敷金が賃貸借契約終了後明け渡しまでの損害金を担保するもので、敷金返還請求権は賃貸借契約の終了時に発生するものではないからです。賃貸借契約に特に時期の定めがない限りは、建物を明け渡してはじめて賃借人が敷金返還を賃貸人に対して請求できるというのが、判例です。(最高裁判所判決昭49・9・2)

行政書士試験一般常識~改正民法と生活保護”へ1件のコメント

  1. 山口 梨沙 より:

    行政書士を目指して勉強している者です。
    前回、前々回の行政書士試験必勝ブログも拝読しています。
    今回の、自分で勉強するには少し難しく量も多い一般知識を、分かりやすく興味を引かれるように書いて頂きありがとうございます。

    民法は難しく、唯一興味を持っている家族、婚姻などの分野もかなり細かく量も多く悪戦苦闘しています。
    時効の分野は本当に苦手です。
    2020年から、時効はその権利を知った時から5年、行使できる時から10年で消滅します。
    2022年度の試験に取り入れられるかはわからないですが、結構大事なポイントですよね。
    債権、債務、債務不履行など、民法は身近にあるものが多いので試験とは別で勉強するのは大事!
    それと前に自分のテキストでやった一般知識の分野で、個人情報について勉強しました。
    生きている人に限られるなど…
    これは試験に大事なのでしょうか。

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