過去に収入申告しなかったことを理由に生活保護を止められた無収入ステージ4のがんを患う女性
このブログは、行政書士法人ひとみ綜合法務事務所に生活保護のご相談を頂き、その後申請書の作成等のサポートをご依頼された大阪府在住の女性のお客様のご希望をもとに、書きました。同じように、困っているのに生活保護を止められてしまい、憲法第25条で保障された最低生活が守られず、もう二度と生活保護を受けることはできないと、後悔と絶望の淵にいる人に届くことを願っています。
女性のSさん(仮名)は、過去に男性からDV を受け、PTSDを発症していました。心療内科の主治医から
「働く事は無理だから、生活保護申請をしたほうがいい」と助言を受けたことが、生活保護申請を決めたきっかけでした。
PTSDを患い、さらに乳がんステージ4で乳房を全摘出し、さらに肺と骨にもがんは転移していました。経済的に頼れる親族はいません。
今はとても後悔しているのですが、Sさんは生活保護受給中に過去に交際していた男性から、何度か仕送りを受けたことがありました。
ある日、突然ケースワーカーから電話が来ました。
「話があるので、家庭訪問します。」
男性ケースワーカーと上司の女性が来られて、次のことを言われました。
「男性の〇〇さんと言う方から、支援を受けていましたね。銀行で調べてさせてもらいました。不正受給になるので、返還してもらわないといけないですが、ここで、今話したことは、私たちも、人間なので、事務所に帰ったら、忘れてしまうと思います。この場で生活保護をやめると言ってくれたら、返還してもらわなくても、大丈夫。今後、誰か支援してくれる人を、探して生きていってね。」
「今日で打ち切りはしないけれど、月末に生活保護は打ち切ります。」
ただ、その不正受給が発覚した時点では、既にその男性は交通事故で亡くなっていて、仕送りを受けることはできなくなっていたのです。それを説明しても、ケースワーカーと女性上司は聞く耳を持ってくれなかったといいます。
たしかに、不正受給はいけないことです。生活保護受給中に他者から経済援助を受けたら、収入申告という手続きをして、お金をもらった分は保護費を減額してもらうか、貰い過ぎた保護費を新たな収入から返還するといった法に則った対応が求められます。
とはいえ、反省しており、なにより既に経済援助を受けられる状態ではなくなっていて、生活保護を受けなければ最低生活が守られない状況ですから、生活保護を受けながら過去の不正受給の分を分割で返済しながら生活保護を継続するということはできたのです。
でも、Sさんは、不正受給した分を毎月の保護費から分割で返すことができるなどの説明は一切なかったといいます。過去に経済援助をしてもらった分を一括返済などできないので、言われた通りに保護を打ち切るしかないと思い込んだのです。
そして、Sさんは慌てて、生活保護を受けられなくなっても病院を受診するための保険証の申請、限度額認定証の手続きに、体調崩している中、かけずり周りました。
「役所手続きに、必要な書類も保護をやめさせておきながら、脱退書を早く送ってくれず困りました。」
連日役所に行き、保険証、限度額認定証を、早く必要な書類を作って下さい!とお願いし、病院に事情話したところ、医療費の支払いを待ってくれると言ってくれたそうです。
Sさんが生きる為に服用しなければいけない薬は、一錠20000円以上します。数日間でも薬代が全額負担になると100万円ほどになってしまうため、飲まなければいけない薬も諦めざるを得なくなりました。
福祉事務所は、Sさんが乳癌ステージ4で、右乳房を全敵手術した事を把握していました。それでも、既に経済援助をしてくれていた男性は交通事故死したにもかかわらず、
「誰か支援してくれる男性を見つけて」と、信じられないことを福祉事務所で言われたのです。
Sさんは、過去の経緯から、生活保護はもう受けられないと思い込んでいました。それでも、病院に行かなければ、がんが進行して生きることができないので、行政書士法人ひとみ綜合法務事務所に思い切って相談されることを決意したと、ご連絡をいただきました。
憲法第25条で保障された生存権は、生活保護制度により守られますと行政書士が丁寧に説明し、再度の生活保護申請の道があることをSさんは知りました。そして、万が一不当な却下をされた場合に特定行政書士に不服申し立てを代理で行ってもらいたいとのご希望から、特定行政書士に生活保護開始申請書作成を依頼されました。
がんは骨に転移していることから、歯が壊死すると主治医から忠告されていたSさんは、生活保護申請後すぐに歯科医にかかりたいと希望されました。そして、過去の不正受給の分は、毎月2千円ずつ保護費から返済していくことを約束しました。審査期間中も三度の食事ができるよう、食糧援助を自宅まで持って来てもらい、病院にも安心して通えるようになりました。
生活保護申請後の家庭訪問には、Sさんの強いご希望により、女性特定行政書士の三木ひとみも同席させていただきました。その後、審査期間中に行政書士が書面作成して福祉事務所および上級行政庁に提出した書面の一部がこちらです。
【行政書士の意見】
特定行政書士の三木ひとみです。私どもの本来の業務は、生活保護申請書をご本人様の申告内容を元に作成し、内容を確認してもらったうえで福祉事務所に提出し、不当な却下があった場合などは不服申し立てについても代理人となり業務を行ないますが、こうした要望書面を作成することは通常ありません。
ただ、今回は最初の相談を受けた段階から、行政書士として福祉事務所の対応に違和感を覚えることが多くありました。まず、過去に収入申告をしなかったことから不正受給となった点はご本人も大いに反省しているのですが、不正受給が発覚後、福祉事務所のケースワーカーらからは、その時点で生活保護を辞退し今後も申請しないと約束すれば、返還金の請求はしないといったようなやり取りがあったと聞きました。
生活保護申請後の家庭訪問同席も、コロナ禍で私共行政書士もリモートワークに徹していることから極力しないようにしていますが、今回はご本人と息子さんの強い希望から、〇月〇日に同席しました。
その際に訪問されたのは、以前ご本人が収入も経済援助も今後見込めない中で生活保護を実質的に打ち切られてしまった際の対応をしたケースワーカーらで、当日のやり取りも歯切れが悪い印象でした。
「返還金はいくらあるのですか?」と行政書士が聞いても、業務が忙しくてそのあたりの計算ができていないとのことでしたが、ご本人がおっしゃるには、以前計算もすべてして金額を提示されたとのことでした。
不正受給が発覚し、返還金が生じた時点で、生活保護を辞退しようと継続しようと、この返還金が消滅するわけでは当然ないはずですが、正確ではない説明がご本人になされ、結果として病気も重い中、約10か月間とても辛い生活を余儀なくされたようです。今後、法テラスの無料弁護士相談なども利用するよう、行政書士からは助言させていただきました。ただ、当面はご本人が不安なく生活保護制度を利用し最低生活が守られるよう、その一助となればと、ご本人の希望から本書面を行政書士が作成した次第です。
特定行政書士三木ひとみ著書「わたし生活保護を受けられますか」や弊所のブログをお読み頂いた方々から頂戴したお手紙やメールの一部をご紹介します。
行政書士法人ひとみ綜合法務事務所
特定行政書士 三木ひとみ先生
お世話になります。
(伏せます)県で〇月に行政書士に登録になった(伏せます)と申します。
ひとみ先生の書籍「わたし生活保護を受けられますか」を購入し読ませて頂き、感銘を受けましたので、今回感謝のお手紙を書かせて頂いております。
正直、ひとみ先生の書籍を読むまで『生活保護』については漠然としたイメージしか持っていませんでした。しかしながら今回本を読ませて頂き、具体的な内容が多く分かりやすくて、どんどん内容に引き込まれていきました。
導入部分でひとみ先生の生い立ちが書かれておりますが、本当であれば隠しておきたいであろう過去をさらけ出していることで、依頼される方々も「ひとみ先生なら信頼できる」と感じ、全国からひとみ先生を頼って依頼しているのだと思います。これから行政書士として生きていこうとしている私もとても参考になったことであり、私を頼ってきてくれる相談者には、士業だからといってかっこつけずに、自分をさらけ出し、相手の立場になって最善を尽くすことの大切さを学ばせて頂きました。
もう一点素晴らしいと思ったことは、生活保護の窓口である福祉事務所の方々に対するメッセージです。行政書士の仕事をしていると、どうしても許可の権限がある役所は敵(越えなければならない壁)に感じてしまいますが、ひとみ先生はそうではなく、困っている人を共に助けられる存在として、福祉事務所の方々を尊重しています。もし私が福祉事務所の職員だったら、あのメッセージを読んで、その後の相談者との接し方は良い方向に変わっていくと思います。
その他、書ききれませんが、今回の著書はひとみ先生の想いが詰まった最高の内容でしたので、周りの方にもどんどん紹介していきたいと思っています。
最後になりますが、ひとみ先生は自分の信念を持って、行政書士会をより良い方向に進めていこうとしていてとても尊敬しています。流されやすい私ですので、すこしでも見習いたいと思います。
突然のお手紙失礼いたしました。今後とも応援しております。
(他県の行政書士の先生のお名前)
お世話になっている税理士の先生が送って下さいました。「阿倍野 ルシアス店にて、映画を観ての帰りにて」
こちらは、行政書士法人ひとみ綜合法務事務所のスタッフ武田宛に頂戴した、特定行政書士三木ひとみの母校ICUご出身の行政書士受験生の方からの嬉しいエールのメッセージでした。
ありがとうございます!
9月28日19時仕事おわりに、ご多忙の大阪府議会議員であり税理士の松浪武久先生と、友人の大学Clerk山下秀憲さん(お兄さんは映画化されたバリ島の兄貴ご本人!)とご一緒させて頂き、行政書士の担う社会的役割など貴重なお話をさせて頂きました。
最後に、本日届いた、お名前も存知ないまだ見ぬ素敵な方から頂いた「わたし生活保護を受けられますか」のご感想をご紹介します。
三木ひとみ様
初めまして。「わたし生活保護を受けられますか」を図書館から借りて読みはじめたところです。
なぜ、読み終える前に感想を?と疑問に思われるかもしれませんが、その理由は次のとおりですが、一言でいうと理屈抜きで、感極まったから、ということです。運命的出会の一冊だったと勝手に思っています。
私自身10年以上福祉事務所で生活保護を担当していたこと。
私にとってICUは最高に憧れた大学だったこと。もちろん、能力がない私にとっては高嶺の花。今から52年前の受験では1次試験で不合格。それでもいまだに憧れは消えていません。
DVや児童相談等の仕事にも長年従事したこと。
私自身両親のDVに曝され続けたこと。
生家はバラックのような家で、経済的には生活保護以下の極貧状態だったこと。
など。
現役の、いやこれから生活保護ケースワーカーを目指す皆さんにも、事務必携である「生活保護手帳」を読む前に、三木さんのこの本を読んで頂きたいと強く強く願っております。
この本に40数年前に出会っていたなら、私自身もう少しましな仕事ができたのでは、と悔やまれます。
早速書店に注文しました。
これからもお元気で、ご活躍されますように。
突然のメールで大変失礼しました。
2022・10・3
ホテル阪急インターナショナルホテルにて
弁護士の渡邉祐樹先生と未来の弁護士山田六郎先生もご一緒に。
コロナ感染対策も引き続き気を引き締めてしっかりとしつつ、貴重な交流の時間でした。
弁護士の渡邉祐樹先生は愛するご家族のため早々にお帰りになられ、仕事後の多忙な国際行政書士中村伊知郎先生が駆け付けられ、入れ替わりに撮影したお写真。
こちらも20時前には解散し、その後は残った仕事を夜遅くまでがんばりました!
お客様から頂いたバウムクーヘン
Former Prime Minister Shinzo Abe’s state funeral was held on Tuesday, Sept.27th despite public opposition to the cost of the event as the country grapples with their late leader’s legacy.
9月27日火曜日、日本では安倍晋三元首相の国葬が営まれました。ただ、国民からはかつての首相の功績について世論が分かれ、費用の高さを理由に反対する声も出ていました。
He is Japan’s longest-serving prime minister. Sadly, he was shot dead during a campaign speech in Nara in July, stunning a nation where gun violence is extremely rare.
歴代最長の期間にわたり首相を務めた安倍元首相。悲しいことに、奈良県での選挙遊説中に銃撃され尊い命が絶たれました。事件は銃暴力が極めてまれな日本に衝撃を与えました。
Funeral was held at the Nippon Budokan Arena in Tokyo. More than 4,300 guests attended the service including foreign dignitaries.
葬儀は日本武道館で行われ、海外要人を含む4300人以上が参列しました。
Former Prime Minister Yoshihide Suga who gave impressive remarks, was Abe’s right hand man for many years.
その追悼の辞に多くの人が涙した菅義偉前首相は、長年にわたり安倍元首相の右腕として献身的に支えてきました。
Police ramped up security for the event, with about 20,000 police officers were said to be deployed to keep the peace. However, altercations took place anyway between police and demonstrators outside the funeral venue.
政府は警備体制を強化し、治安維持のために警察官約2万人が派遣されたそうです。それでも、会場の外では警察とデモ隊が口論する場面も見受けられました。
葬儀翌朝には、献花を行い安倍元首相に最後の弔意を示そうと、指定された場所の外にも沢山の人々が列をなしたそうです。一方で、やはり多くの人々が国葬反対の街頭デモを実施し、日本で1967年以来となる国葬をめぐる世論の深い分断が浮き彫りになりました。
賛否ある問題ですから、私の意見を述べるのはやめておきます(個々人の価値観、心は自由でも、表現することによって誰かを傷つけてしまうこともありますね・・・)。
生活保護行政に関し、不定期にブログで発信を続けたことから著書『わたし生活保護を受けられますか』出版に繋がり、全国の図書館に蔵書されるべき一冊という名誉ある推薦図書として選定頂くに至りました。
行政書士法人ひとみ綜合法務事務所のホームページ『お客様の声』は、制度の仕組みを作る(立法)側の政治家や運用する(行政)側の官公庁の職員の方、生活保護を必要とする方、そのご家族やご友人、また誰しもいつ生活保護が必要になるかもわかりませんから、本当に多くの方々に日々ご覧いただいています。
小さな声でも黙せず発信し続けることで、差別偏見を減らし、誰もが生きやすい優しい世の中に一歩ずつ近付けていくことができる時代。今の世を生きる恩恵を享受すべく、今後も行政書士法人ひとみ綜合法務事務所は一切の忖度なく正義と良心のもとに発信して参ります。
こちらのお客さまは保護決定し、その後無事に保護が再開されたとの事でお手紙をいただきました。
→家庭訪問の同席もお願いし、私は何もせずに体調不良の為、ベッドで寝かせてもらっている間に、役所の人たちと話を進めて頂き、私が以前、保護打ち切りになった事を、納得いかないから、大阪府と役所の所長宛に手紙を出していただき…
あまりに凄まじい事例に言葉もないです。「大変でしたね」などとたやすく言えない。私も頼れる身内がなく足の障害もひどくなりつつあるけど、世の中にはもっと辛く苦しい思いをしてる人はたくさんいるんてすね。三木先生はそんな方たちをいっぱい見てこられたから精神的にもしんどい思いをされたんでしょうね。ブログで目にするだけでこれだけ心が暗くなるんですから。
なんか悲しいです。こんなケースワーカーがまだまだ多いんですね。もちろん、誠実な人もいるんでしょうけど…。なかなかハードルが高いなと思います。
生活保護のルールは細かくて複雑ですよね。来る方は素人なわけだからもう少し寄り添ってもらいたい。
勘違いで不正受給になっても反省されてるんだからセカンドチャンスはああるべき。
結果、三木先生のおかげで大切な命が救われてほんとに良かったです。
ブログの後半は温かいメッセージが沢山あったので安心。
ほっこりしました。
行政書士の三木です。いつも温かいお言葉、ありがとうございます!
ご指摘の通り権利と義務は表裏一体、その辺りの自覚は社会で生きる上で必要なことだと思います。法令で定められたルールのもとに、誰にも公平で平等な制度が運用されます。ただ、そのあたりの理解に乏しい方がつい出来心で収入申告をせず不正受給をしてしまうケースもあるので、そのときは隠したりせず少しでも早く事実をケースワーカーや福祉事務所に連絡し、反省をしてその後の対応も法に則りしまうと伝えていただきたいですね。悪事は早かれ遅かれ、自分の身に返ってくるものです。
この前、テレビで興味深い事を言ってました。
SNS等で誹謗中傷するのは大半が男性で50代以上でそこそこの地位にいる人だそう。
そしてその人たちはひどいことをしてる意識はなく自分は正しいことをしている、間違ってはいない、と思っているらしい、というデータがあるんだそうです。
すぐ、三木先生の受けた嫌がらせの一件、を思い出しました。
なんかすごく納得してしまいました。
怖いな、と。
まだやましい気持ちがわずかながらあるほうがましなのかな。
自分達は正しいことをしてるんだ、ということの恐ろしさ。
社会の深い闇を感じます。
三木先生の受けた傷はとてつもないものだったんだなと思います。