「国民をだます背信行為だ」
厳しい言葉で非難する障害者団体の声は、長年極めて困難だった障害者の就労支援に取り組んできた立場として、もっともでしょう。

世の障害者への偏見・差別を助長することにもなりかねない、中央省庁による障害者雇用の水増しは、昨年だけで三千人台に達するようです。

中央省庁の障害者雇用水増し問題

中央省庁の障害者雇用に水増しの疑いのある問題で、国のガイドラインに反して不正に算入していた人数が3千人台半ばに上っていることが分かった。中央省庁では約6900人を雇用していたことになっており、半数程度が水増しだったもようだ。障害者雇用の推進役である中央省庁で雇用者数を大量に偽っていたこと明らかになり、批判が高まるのは必至だ。

中央省庁の障害者雇用、半数水増しか 不正3千人超に  :日本経済新聞

障害者雇用水増し問題 「企業努力バカにされた」 中央省庁の水増しに経済界から批判の声 – 産経ニュース

怒っているのは当事者だけではなく、障害者の法定雇用率の義務付け以来、ノルマ達成にしのぎを削ってきた民間企業も同様でしょう。

従業員100人超の企業に対し、障害者の法定雇用率2.2%(本年4月より2.0%から引き上げられたもの)を達成できなければ事実上の罰金を科す法的仕組みをつくった国自らがルールを破っていたのですから、まさに民間企業の努力に冷や水を浴びせる行為です。

何らかの障害を持っている方からの生活保護申請依頼は非常に多い

行政書士法人ひとみ綜合法務事務所に生活保護のご相談をされるお客様の中には、精神・身体に何らかの障害をお持ちの方が多数いらっしゃいます。

あるいは、そうした障害をお持ちで定職になかなか就くことのできない方のお身内からのご相談も、ほぼ毎日受けているのが現状です。

精神障害者手帳をお持ちの方同士でご結婚されたり、同棲されているパートナーと一緒に生活保護を受けたいと希望されるお客様の生活保護サポートもこれまで何度もしてきました。

先日、生活保護申請して決定間近だったお客様が、もう待てないと激情してしまい、役所で大声を出してしまったことがありました。そのときは私共行政書士が同席していない場でしたが、パートナーの方がトラブルを未然に防ごうと役所のテーブルを離れて外に連れ出し、助けてほしいと私にお電話下さいました。

役所の担当者も驚いて私どもの事務所に同時に電話して来られたので、すぐに駆け付け、お客様と同席して役所の方とお話し、事なきを得ました。お互いの病状を理解し寄り添って懸命に生活されている様は、頭が下がる思いと同時にどこか羨ましくもありました。

とはいえ、精神障害の方に対する周囲の偏見は根強いものがあると、日々当事者であるお客様と接する中で実感します。

依然として精神障害者が生活し難い現実

「精神障害のことを言うと、賃貸物件の入居審査に通らない」
「採用が決まってから障害のことを伝えたら、来なくていいと言われた」

これまで何度、悲痛な、あるいは既に諦め悟ったかのような、ため息交じりの同じ内容を聞いたことでしょう。

私共の提携する不動産会社からも、当行政書士事務所の紹介する生活保護のお客様の賃貸入居審査を通したくても、精神障害があるということを聞いてしまうと大家さんに言わざるを得なくなり、そうなると審査が通らなくなるから聞かなかったことにします、と営業マンから耳打ちされたことがあります。

国家試験をパスし、法定規定の倫理研修も定期的に義務付けられている行政書士でさえ、お客様の障害の有無で差別をするような現場を私は見聞きしてきました。

個人特定するようなことは明らかにできませんが、私ども行政書士法人ひとみ綜合法務事務所に対して、
「精神障害を持っているような方の依頼を受けない方がいいのではないか」
といった内容を、多数の行政書士がいる場で発言、非難してきた同業者もいました。

「・・・障害の有無でお客様を取捨選択するようなことは、行政書士の倫理規定に反すると思いますので、そのようなことは検討致しかねます」
呆れて最初はうまく言葉が出てきませんでしたが、私はそのような返答をしたかと思います。

ある精神疾患を抱えた人からの依頼

このような精神障害に対する世の無理解ゆえ、ようやく仕事が見つかって働き始めても、同僚や上司から腫れ物扱いをされているようだと、離職を繰り返してしまう方も少なくありません。

先日、行政書士法人ひとみ綜合法務事務所にお電話され、即日今里オフィスに面談にいらっしゃった20代の若い男性は、幼い頃から親族のトラブルに巻き込まれ、親兄弟全員が別々の精神病院に入院されご自身も精神障害を患っているという、壮絶な半生を歩まれていました。

児童養護施設を出た後、突然社会に放り出され、何とか就職したものの相談できる人もなく、上司からの優しい指導さえも負担に感じるほどに追い詰められていました。

「もう明日は出社できないから生活保護申請書を作成して、代理提出してほしい。」
そう訴えるお客様のお気持ちを第一に尊重し行政書士として業務を行うべきところかもしれませんが、お客様のためにもお伝えすべきことはお伝えしなければと、色々と事情をお尋ねしました。

精神障害があることも、家族が全員精神病院に入院していることも理解したうえで雇用してくれたという、聞けば理解ある職場でした。なんの連絡もなく、明日突然出社しなければ会社に心配と迷惑をかけてしまうことから、お客様のご納得とご要望のもと、私がお客様の目の前で会社にお電話をしました。

障害を持っていても生きやすい世の中に

「〇〇様は今当行政書士事務所に生活保護申請のご相談にお越しになっていて、ご本人のご希望により代わりにお電話しています。ご病気の悪化により明日から出社できず退社をご希望されていて、会社に返却するものや必要な書類のやり取りは郵送でされたいそうです。」

上記を伝えたところ、職場の上司の方は快諾され、ご本人確認のため代わりましょうかと私がお尋ねするも固辞され、貸与している制服と携帯電話、それから退職願を郵送で至急返却すれば問題ないという、あっさりした回答でした。

お客様は心底ほっとしたようで、
「こんなに早く問題解決すると思わなかった!来てよかった!」
と何度もおっしゃって帰られ、お辛い状況の方のお役に立てたことをよかったと思う反面、色々と考えさせられました。

今後は、障害者の法定雇用率の引き上げや対象となる障害者の区分拡大などによる雇用促進のみならず、障害者の方が安心して働け、継続就労するための公的支援が必要だと感じます。