2016年4月に発生した熊本地震。被災者生活再建支援法による支援金や義援金の交付を理由に、今年2月までに376世帯が生活保護費の支給を自治体に打ち切られていたことが毎日新聞による関係機関への取材でわかったそうです。
熊本地震2年:生活保護費、義援金で打ち切り376世帯 熊本県内 – 毎日新聞


「義援金は収入」善意に壁 熊本地震 生活保護停止も 被災受給者 受け取り迷う|【西日本新聞】

基本的に生活保護受給中に受け取った金銭は全て収入となるが、例外もある

たしかに法律上、生活保護受給中に本人が得た金銭は収入とみなされ、その分の保護費減額や収入が生活保護費を上回る場合は生活保護費をもらえなくなるのが「原則」です。とはいえ、さまざまなケースがあり、例外はあります。

たとえば、行政書士法人ひとみ綜合法務事務所のお客様の中には、毎月パートにできるだけがんばって出勤され、生活保護費を極力もらわないで生活できるように努力されている方がいます。

その方はここ数ヶ月のパート収入が保護費を少し上回っている状態ですが、ご病気のご家族がいるため保護廃止になって医療費が自己負担になると生活にたちまち困窮してしまいます。

そのため、パート収入が保護費を上回っているため保護廃止になるかもしれないと示唆された時点でご家族様より当事務所に相談があり、行政書士が福祉事務所にご本人ご家族の状況を伝えたところ、保護継続となりパートも無理ない範囲で続けて勤務されています。

このように、福祉事務所長の判断(法律用語では裁量と呼びます)で、原則論にとらわれない判断措置をとることも可能なのです。当事務所ではこのような事案のサポートを何件も手掛けています。

義援金受取によって保護停止となることへの様々な意見

今回の地震被災による義援金受け取りによる保護廃止措置についても、専門家の中には、柔軟な対応を行政はすべきだという指摘が多いです。日本弁護士連合会も、生活保護が停止になって生活再建が困難となっては義援金の趣旨に反するという懸念を会長声明で表しています。

日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:生活保護世帯が受給する義援金の収入認定に関する緊急会長声明

行政の立場としては、法律に則って処理しているに過ぎないわけです。生活保護廃止を下した熊本県は、保護が廃止になっても再度困窮すれば再開の申請はできるし必要と行政が判断すれば再開する、としています。

とはいえ、いったん廃止された生活保護をどの時点で申請すれば再開されるのかを一般の方が知る由はなかなかないでしょう。実際、当事務所には東日本大震災と熊本地震で被災された熊本県、福島県の方々からの生活保護相談がとても多いのが実情です。

もちろん様々なケースにおいて対処法は存在します。

震災を機に生活が困窮する人たち

災害で配偶者の方を亡くし、たくさんのお子さんを片親で育てているシングルマザー、シングルファーザーの方からの相談が特に顕著で、児童手当と児童扶養手当だけで食べるものもギリギリの生活をされている方も少なくありません。

役所に自分で相談に行っても、同じ状況の方も皆保護に頼らず努力しているというような物言いで門前払いをされたのは、福島県のシングルファーザーの30代の男性。その後、当事務所で申請書を作成して福祉事務所に代理提出をしたところ、いともスムーズに生活保護決定がなされ、お客様は拍子抜けされていました。

生活保護が本当に必要な人ほど行政の手が届かない

金銭的に苦しく、日々の生活に追われている方ほど、生活保護制度の法令や判例の正しい知識を仕入れることが困難な状況にあります。それどころではなく、目の前のお子さんやご家族、自分が食べることに必死にならなければ明日を生きていけないのです。

books bookcase-0308 (Copy)
books bookcase-0308 (Copy) / Nick Vidal-Hall

その多忙な時間を削って役所に出向いたのに冷たく門前払いをされては、呆然と立ち尽くし追い詰められてしまうでしょう。

私もかつて、乳飲み子を背負って東京の福祉事務所へ出向いて冷たい対応をされ、その後は水商売をして時に子どもを置いても夜働きに出なければいけないこともありました。そうでもしなければ、生きていくことができなかったのです。

当行政書士法人の役割として

「生活に困っている人相手に行政書士として仕事をするなんておかしい」

外部だけでなく、同じ行政書士や士業者からも、このような批判の矢にさらされることも少なくない行政書士法人ひとみ綜合法務事務所ですが、私どもは、真に生活に行き詰まり今日食べるものにさえ困っている中役所に一人で出向いて救済されなかった沢山の方々の受け皿になっています。

福祉課で門前払いをされ、死が脳裏をよぎるほど追い詰められ、当事務所に駆け込んでくる方々の実情を知ってほしいので、日々多忙な時間を縫ってブログ発信を続けています。

役所が生活相談に来る方に対してもっと親身に、生活保護制度の趣旨にのっとり、血の通った対応をしてくれて、当事務所への生活保護申請サポートの依頼が少なくなって行く事を、私ども行政書士法人ひとみ綜合法務事務所は願っています。

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