行政書士の榎田です。
2019年となりましたが、年明け三が日の間さえも行政書士法人ひとみ綜合法務事務所宛ての相談や問合せは一日中途切れない状態でした。

行政書士法人ひとみ綜合法務事務所で受けている生活保護申請に関する相談の数は、年間通じて3000件以上に及びます。

そのなかでよく聞くのが、生活が苦しくどうにもならなくなり、たまりかねて住んでいる地域の福祉事務所の窓口へ相談に行ったものの、生活保護の申請を受け付けてもらえなかった、という話。

生活保護の申請先は各自治体の窓口だが

生活保護の申請先は各市区町村の福祉事務所です。

第十九条 都道府県知事、市長及び社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に規定する福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)を管理する町村長は、次に掲げる者に対して、この法律の定めるところにより、保護を決定し、かつ、実施しなければならない。
一 その管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者
二 居住地がないか、又は明らかでない要保護者であつて、その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有するもの

生活保護法 第19条

当法人は行政書士事務所なので、生活保護業務以外にも各種許認可を取り扱っておりますが、ほとんどの許認可手続きにおいて疑問点がある場合には、専門家である私共行政書士であっても、申請先となる役所やその上級行政庁に直接確認します。

その例で言えば、まず自分が住んでいる地域の福祉事務所へ相談に行くことは間違ってはいません。しかし、それにも関わらずそれでは解決しないことが多いのです。なぜでしょうか。

本来、福祉事務所の窓口では生活保護を希望する人からの申請を断ることはできません。そもそも申請を受理する・しないを選択する権限を持っていないのです。つまり、生活保護申請に対してはその全てを一旦受理し、その後決められた期間内に審査を進めていかなければならないというのが大原則。

第二十四条 保護の開始を申請する者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を保護の実施機関に提出しなければならない。ただし、当該申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りでない。
一 要保護者の氏名及び住所又は居所
二 申請者が要保護者と異なるときは、申請者の氏名及び住所又は居所並びに要保護者との関係
三 保護を受けようとする理由
四 要保護者の資産及び収入の状況(生業若しくは就労又は求職活動の状況、扶養義務者の扶養の状況及び他の法律に定める扶助の状況を含む。以下同じ。)
五 その他要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な事項として厚生労働省令で定める事項

生活保護法 第24条

上記法令が示すように、生活保護を受けたいときは日本国民は誰でも、申請をする権利があるのです。

福祉事務所での生活保護相談から申請に至る件数は少ない

生活保護申請の統計に関するデータの中に「申請率」と呼ばれるものがあります。

これは一体何かといえば、福祉事務所での窓口での相談を母数とし、実際に申請された件数を割ったもの。要するに相談件数のうちから生活保護申請に至った人の割合を表すもの。

元になる統計データがあれば単純に割り算するだけなので簡単です。

例えば大阪市であれば、大阪市の福祉局が所管する各種事務事業の統計資料として【福祉事業統計集】というものが公表されています。
大阪市:福祉事業統計集 (…>各種統計>福祉事業統計)

平成28年度版をみてみると、過去5年分の年度毎の生活保護申請件数や、そこからの生活保護開始件数が掲載されているのがわかります。

なお、この生活保護開始件数を生活保護申請件数で割ると【保護開始率】とでも呼ぶべき数字が出てきます。ちなみに大阪市の場合、上記の平成28年度の数値で計算すると92.9%。

申請率を計算する為にここで必要となるのは、生活保護の相談件数です。しかし上記資料では相談件数が年間何件であったかの数字は記載されておりません。

この場合生活保護の相談件数を知るにはどうすればいいか?
やり方は簡単、大阪市に直接聞きます。もし尋ねてスムーズに回答が来ない場合は大阪市に対して情報公開請求をすれば問題なく回答を得られます。

本来はここで大阪市での申請率をだせれば話としてはいいのですが、残念ながらこの記事を書くにあたりそこまでしている時間がなかったのでそこは割愛。
代替として数値の資料が公開されていた愛知県のデータを元に計算をしてみたいと思います。

少し古いですが2010年(平成22年)の統計。
愛知県での生活保護に関する統計は

  • 生活保護相談件数 54,712

  • 生活保護申請件数 17,653

  • 生活保護開始件数 17,061

以上。計算すると

  • 生活保護申請率 32.3%

  • 生活保護開始率 96.6%

このような数値になります。

福祉事務所での生活保護相談から申請に移行する率が32%と非常に低いことが数字上ではっきりとわかります。6割以上の相談者が申請に至っていないのです。

福祉事務所で生活保護の相談をした結果、申請を諦める人も多い

最初に述べましたが、行政書士法人ひとみ綜合法務事務所への問合せの中で「福祉事務所に相談に行ったものの断られた」「生活保護の申請をさせてもらえなかった」という内容のものが数多くあります。

この場合は、生活保護の申請をした結果、審査により却下されたわけではなく、そもそも申請自体をさせてもらっていないケースがほとんど。

そしてその後正式依頼となり、行政書士法人ひとみ綜合法務事務所で申請書作成及び提出を行った結果、ほとんどの場合、一度福祉事務所で断られていても無事生活保護が開始決定しています。

すなわち本来ならば生活保護の審査に通るような人であっても、その前の段階で諦めてしまっている、諦めさせられているというのが現状なのす。なにしろ福祉事務所の相談者のうち6割以上の人が申請に進めていないわけですから。

よく言われる水際作戦とはこのあたりのことを指します。
実際に申請をする前の段階でいかにも無理そうな説明をし、生活保護の申請そのものを諦めてもらうという方法。

またそれだけでなく、単に説明不足な為に相談者にきちんと内容が伝わらず、申請者が自分には無理だと思い込んでしまっているケースも多々あります。

当たり前ですが、すべての福祉事務所がこういった対応をしているわけではありません。行政書士法人ひとみ綜合法務事務所では全国のあらゆる都道府県の福祉事務所と毎日のようにやりとりをしていますが、親身になって本当に申請者に寄り添ってくれるケースワーカーの方もたくさんいらっしゃいます。

もちろん本当に要件や基準を満たしていなくて生活保護申請に進めない場合もあるでしょう。
しかし、残念ながら申請率の数字を見るとわかりますが、それだけではあんなに低い数値になりません。

街に生活保護相談の窓口はたくさんある

福祉事務所以外にも、探せば生活保護の相談をしてくれそうなところは街中やネットのあちこちで目にします。

NPO法人

大阪の西成界隈を歩けば、「生活保護 相談」や「生活保護 支援」「福祉の方歓迎」などの看板がこれ見よがしに立ち並んでいます。
そして看板の隅に記載されているのがNPO法人○○といった名称。
更にもうひとつ多いのが不動産業者です。

一昔前はネットで生活保護について検索すると、債務整理の商材につなげるアフィリエイトサイトが多い印象でしたが、最近では不動産の斡旋(アパートやマンションの紹介)につなげるサイトも増えてきています。
そのサイトが紹介する物件に入居するなら生活保護申請代行費用に関しては無料になる、など、わりとつなげて行く先がわかりやすいのが特徴。

もちろん真っ当なNPO法人もあります。
ただ玉石混合であるのは確かで、NPOと名が付くものの(もちろん認定を受けていない団体が非営利活動法人を名乗ることは出来ませんので認定自体は受けているものと思われます)、その実態が不明なものも多数あります。

残念ながら時々事件として報道されているように、申請の時点から生活保護受給者を囲い込み自分たちの所有する物件に住まわせ、保護費の支給日にはそのほとんどを自分たちに納めさせて当人にはわずかな金額しか渡さない、といったことを行っている業者が存在するのも確かです。

いわゆる貧困ビジネス。
行政書士法人ひとみ綜合法務事務所にご依頼されたお客様の中にも、そういった業者の運営する施設から逃げるようにして大阪にやってきた方もおられました。

繰り返しますが、本当に生活困窮者のためにその支援を行っているNPO法人も存在しています。しかし、本当に困窮し差し迫った状態でその真贋を見極めるのは、なかなか困難なものです。

議員

本当に生活が困窮した状態で福祉事務所に行ったものの、結局申請することができず、議員さんに付き添って申請に行ったところあっさりと生活保護が通ったなんて話を時々耳にします。

行政書士が役所に対して何らかの申請を行ったところ、どうにも話が通じず、仕方なしに議員の口利きで個別に役所との協議の場を設け、交渉していくとどうにかなったという話は、実際によくあります。

ネット上の掲示板などでも、生活に困っている人の相談に対して「共産党の議員のところへ頼みに行って、生活保護を貰え」といった書き込みも目にします。
行政書士法人ひとみ綜合法務事務所に頼んだお客様でも先に共産党系の議員などに福祉事務所へ同席してもらっていた方もいらっしゃいました。

しかし議員というのは別に生活保護制度の専門家でもなければ、専門職より法に関する知識が豊富というわけではありません。たしかに口をきいてもらえれば役所との協議の場を持つことは可能ですが、必ずしも解決に結びつくとは限らないのです。

現実に生活保護に関する相談で議員に同席してもらって役所へ行ったものの、結局どうにもならず、最終的に行政書士法人ひとみ綜合法務事務所へ依頼されて無事解決した案件などもあります。
議員さんに同行してもらっても出せないと言われた引越費用が、依頼した結果びっくりする程出してもらえる事になりました

士業で生活保護を取り扱っているのは

福祉事務所やNPO法人などでの相談を除いた場合、では一体他にどこへ相談に行けばいいでしょうか?

生活保護に限らずですが、法的な手続きを代行する際は士業に頼むのが一般的な話。

生活保護申請の代理や代行などのキーワードで検索してみると弁護士、司法書士、行政書士などのそれぞれの士業のホームページがひっかかります。

弁護士会なども個人のサイトではなく、会のホームページで生活保護制度の解説を行っていたりします。

一般の人にとって弁護士・司法書士・行政書士と言われても、どの士業がどんな業務を扱えるのかわかりにくいでしょう。

かなり大まかに分類すると

  • 行政書士・・・市役所等の官公署に提出する書類の作成と提出代行

  • 司法書士・・・法務局や裁判所(特定の内容のみ)に提出する書類の作成と提出代行

  • 弁護士・・・法律的代理業務全般

上記のようになります。

行政書士は官公署に提出する書類を作成代行できますので、生活保護関係の申請書類作成を業として行えます。

第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

行政書士法 第1条の二

司法書士の場合は、生活保護関係の書類作成代行が出来る法的な根拠はありませんが、生活保護を取り扱っている司法書士のサイトを見ると、債務整理や遺産案件に絡んで生活困窮者の相談にのったり役所への同行(同行するだけなら代理や代行にはなりません、そのため委任状等も不要)を行っている事務所が多いようです。

弁護士は法律的な業務を全般に取り扱えますが、後述するように生活保護申請自体が代理業務にそぐわないとされていますので、申請の際の同行を業務として強調しているサイトが多く見受けられます。

では、最終的にどの士業に相談すればいいのかという話ですが、実はこれ、その士業の資格の内容で判断してもあまり意味はありません。

生活保護の代理申請は不可

まず根本的な話ですが、生活保護申請は本人申請が原則です。
本人以外が生活保護の申請(申請の代行)をするとき身内や親族の誰が代理で申請者になれるのか

代理申請にこだわるあまり生活保護申請以前にまずその件で役所と揉めはじめる士業もいますが、あまりそこにこだわっては本来の目的である、「生活保護申請を受理してもらう」「生活保護開始を決定させる」へ辿り着くまでに時間がかかりすぎます。

目的を見失ってはいけません。
生活に困窮した依頼者が一体何を求めているか、そこを見失わないのは大事なことです。あまり代理であることにこだわりすぎる事務所に依頼するのはお勧め出来ません。

話を戻します。
結局、どの資格を持っていても完全なる代理申請が不可である以上、あまり変わりはないのです(ただし官公署への書類作成を業務として行えるのは行政書士のみ)。

1点だけ注意。
少し勘違いして欲しくないのは、この場合の「変わりはない」という言葉は、どこに生活保護の相談に行っても一緒、という意味ではありません。
保有している資格を基準に相談先を判断してもそれは全く意味がない、そういう話です。

例えば、弁護士であっても全く生活保護に関する知識や経験がないところへ相談にいけば、もちろん法律に関しては詳細に調べてもらえるものの、そのあたりの近所の人へ聞くのと変わらないような回答しかもらえないような場合も多々あります。

まずは他士業の先生方のところへ相談に行ったものの満足いく対応をとってもらえず、困り果てて行政書士法人ひとみ綜合法務事務所に相談に来た結果、最終的に依頼となり生活保護申請が通った方は、何人もおられます。

今までに、弁護士、司法書士の先生方(すべて女性でした)に相談しては失望し、心も折れ、涙が枯れるほど泣き、絶望し、認知症の母を抱えて、もう死ぬしかない・・・とまで思っておりました

知人のツテで弁護士に代理申請を頼みましたが、生活保護を受けるには私の条件が逆に恵まれすぎていて、私では貴方の代理で申請することができないと言われました

より多く生活保護業務を扱っている事務所へ相談するべき

資格の内容で判断するべきでないとすれば、相談先を選択する際にまず見ておくべきなのは、その業務をどれだけ扱ってきているかという経験値と実績です。

通常の許認可業務であれば、未経験のままいきなり問合せがあったとして、マニュアルや手引きが充実していたり、申請先の役所へ問い合わせれば対応することが可能です。

しかし生活保護申請のように、上述した申請先である福祉事務所が相談からの申請率を極端に低く下げているようなところでは、何をどうすれば申請が通るのかなどという質問に対し明確に答えることはありません、というより答えることが出来ません。

ですから、相談があったとしてもその場ですぐに満足のいく回答を出せるのは、福祉事務所以外で業務として生活保護申請を相当数扱っている事務所、ということになります。

生活保護関係で士業のサイトを見て回っているところはいくつも探せばありますが、様々な取扱業務の中の一つに生活保護申請業務がぽつっと記載されているようなところでは、相談しても必要な情報を得ることは難しいでしょう。

実際にそういったところへ相談してから、何も解決しなかったのであらためて行政書士法人ひとみ綜合法務事務所へ有料相談に来られたお客さまも数多くいらっしゃいました。

昨年も、年間通じて生活保護に関する相談は数千件あり、日本全国の福祉事務所へ申請、また家庭訪問の同席などで日本中を飛び回りました。

今年に入ってからも正月三が日中から相談や問合せが途切れません。
この2019年も、蓄えたノウハウや知識を活用し、より多くの困窮した方々の手助けが出来ればと思います。