遺言・相続ブログ連載第五回目は、もっとも手軽に作成できる「自筆証書遺言」について、法的に有効な書き方となる基本をわかりやすく解説します。

自筆証書遺言の方式は、約120年ぶりの今回の民法大改正によって、緩和された部分があります。せっかくの機会なので、民法第七章遺言の条文と共にご紹介します。

行政書士試験や宅建民法の勉強をされている方にも、細かく書いているので読むだけで試験対策になりますよ。

形式を守らないと遺言が無効になる理由

第九百六十条(遺言の方式)
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

→この条文こそ、「遺言書はルールに従って書かないと、法的に無効になってしまう」と言われる根拠です。

余談ですが、法社会において、また行政書士として仕事をする上で、私は必ずどの法律のどの条文にどのような文表現で定められているか、遺言にかかわらず「法律で決まっている」というものについては必ずその根拠となる法律条文を自分の目で確認します。そして、判例も大事ですので、判例があればそれも確認します。
(役所窓口で、「法律で決まっていますから」という一辺倒の説明で納得できないときは、どの法律の何条に定められているのか、内部通達の場合も特定できる記号番号があるので、質問することができます。)

遺言ができる人

せっかくなので、少し長くなりますが、「遺言ができる人」についても法律でどのように規定されているか、ご紹介します。

第九百六十一条(遺言能力)
十五歳に達した者は、遺言をすることができる。

第九百六十二条
第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。

民法第5条には未成年者、9条には成年被後見人、13条には保佐人、17条には補助人について定められていて、いずれも重要な条文なので補足として、載せておきます。

第五条(未成年者の法律行為)
①未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
②前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
③第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産はその目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも同様とする。

第九条(成年被後見人の法律行為)
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

第十三条(保佐人の同意を要する行為等)
①被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申し込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること。
②家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは補助監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
③保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
④保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

第十七条(補助人の同意を要する旨の審判等)
①家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
②本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
③補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
④補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

第九百六十三条
遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

法律の条文だと難しく感じるかもしれませんが、要は遺言については、制限能力者と言われる方々であっても、基本的に15歳以上で遺言の意思があれば、誰でも遺言できるということです。

民法第七章遺言は、このあと964条で包括遺贈及び特定遺贈(遺留分に関する規定に違反することができないという内容が法改正で削除されました)、965条で相続人に関する規定の準用、966条で被後見人の遺言の制限がありますが、長くなるため条文と説明は割愛します。

遺言の方式

次の第二節、遺言の方式において第一款普通の方式(ということは、普通以外の遺言の方式もあるわけです。第二款は、特別の方式の条文が並びます。特別方式の遺言はあまりないのですが条文自体はとても長いので、条文を省略して下に簡単な解説だけ載せておきます。)

ここから、また豆知識。

款はカンと読みます。予算を区分するときに使う名称で、部→款→項→目→節の順に細分化されるので、款項目節かんこうもくせつ、とも呼ばれます。でも、民法第7章では、第二節の中で第一款「普通の方式」が出てくるので、法律の中に出てくる条項の一つとして使われています。

こうした法律の雑学のようなことが、行政書士試験に出題されたりするので一応ご紹介。行政書士法人ひとみ綜合法務事務所のブログを読んで下さっている方の中に、行政書士資格取得を目指して勉強されている方も多くいらっしゃるので、あえて法律の条文や判例も詳しく載せるようにしています。今後もこのスタンスで「法律を勉強中の人に役立つブログ」にしていくつもりです。

第九百六十七条(普通の方式による遺言の種類)
遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。

特別の方式の遺言というのは、次の2種類があり、それぞれ事情がある場合に認められます。
①危急時遺言(臨終遺言)
②隔絶地遺言

病気や事故などによって、死がもう間近に迫っているといったケース、感染症病棟や、航海中の船の中で隔離状態にあるなど、普通の遺言がどうがんばっても客観的に考えてもできないだろうというようなイレギュラーなケースにおいても、遺言が残せるようにという特別な法律の規定があるのです。

でも、この場合も立会人や証人が必要とされたり、署名や押印ができないときは理由を付記するなど、わりと細かく決められているのです。また、普通方式の遺言ができる状態になってから6か月以上生存していると、効力がなくなるという特別な遺言方式なのです。

自筆証書遺言に関する条文

そして、次の九百六十八条が重要な法改正があった部分で、今日のブログのテーマでもある【自筆証書遺言】に関する法律の条文です。

遺言の書き方について、テレビで専門家が解説したり、週刊誌で特集が組まれたり、セミナーが開催されたりしていますが、すべての根本でありプロの説明の根拠はすべて、この条文にあります!

改正民法第九百六十八条の条文が、こちら↓

第九百六十八条(自筆証書遺言)
①自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

②前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

③自筆証書遺言(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

自筆証書遺言の注意点と改正点

上記の民法条文をもとに、遺言についてテレビや書籍などで解説がなされているのです。たしかに、条文だけではさらっと通り過ぎていってしまうので、重要な点を判例や実務上の注意点を含めて、まとめておきます。

①全文、日付、氏名を自筆で書く。押印も必要。

→日付の書き方までは指定されていないので、元号でも西暦でも問題なし。ただし、日にちまで特定できないと無効。押印は実印でなく、認印でも可。拇印も一応有効とされる。実名でなくても、ペンネームや芸名などでも有効とされる。住所の記載も自由。ただし、どこの誰の遺言か特定できないと当然効力もない。

②法改正によって、財産目録については自筆でなくてもよくなった。

パソコンで作成したり、不動産登記事項証明書のコピーを添えたり、預貯金の通帳コピーを代わりにすることも可。
→自筆でない財産目録には、各ページに署名と捺印が必要。遺言書自体は複数枚におよんでも、全体としてのつながりから一通の遺言書とわかるような場合は割り印はなくてもよい。

③遺言に書き加えたり、一部削除する場合も署名捺印が必要。

→二重線で訂正部分を消して、右側に正しい内容を書き直して、押印。さらに何字削除して、何字加筆したかも付記。

④紙やインキの色、筆記具(ボールペンか鉛筆かなど)の指定はなし。

ただし、改ざんの疑いをもたれないよう、鉛筆は避けた方がよい。

この↓自筆証書遺言のサンプルは、改正された民法の規定に基づき有効とされる遺言書の例です。参考資料として、法務省の公式HPに掲載されているので、このサンプル遺言書であれば間違いない、というものです。

遺言書を訂正する場合のサンプル↓、こちらも法務省HPに掲載されている参考資料なので確実に有効な内容です。

☆専門家のアドバイスは重要☆

遺言書の作成や相続、贈与の方法を選ぶ段階で、一度、街の法律家である行政書士に相談して助言を受けることをおすすめします。

民法改正があったとはいえ、遺言書には法律で定められたルールが存在します。要件を満たしていなければ、せっかく作った遺言書が無効になってしまうこともあるのです。

また、実際に遺言書がなくご家族が亡くなり、相続人が複数いる場合は、遺産分割協議書というものが必要になります。行政書士には、この遺産分割協議書や相続関係説明図の作成だけでなく、その元となる相続人調査や相続財産調査から依頼することができます。

行政書士法人ひとみ綜合法務事務所においては、役所での戸籍謄本、金融機関での残高証明取得など、通常手間のかかる作業も複数スタッフのチームによって効率手際よく行っています。

自筆証書遺言、公正証書遺言の内容チェックだけでなく、ご希望を伺い、書類の取り寄せ、原案作成など、オーダーメイドで相続をサポートしています。また、提携弁護士、司法書士、税理士とも連携しているので、複雑な案件にも幅広く対応しています。

平成19年に信託法が改正されたことで、遺言、成年後見よりも柔軟な相続対策が、家族信託という制度によって可能となりました。遺言書作成よりも、より依頼者の方、ご家族様のメリットになる可能性もある家族信託についても、司法書士、税理士と連携して取り扱っています。

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